【短編小説】卒業式 第1話〜第15話(完結済)
古畑 時雄(Tokio Furuhata)
【短編小説】卒業式 第1話〜第15話(完結済)
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【短編小説】卒業式 第1話〜第15話 完結済(朗読劇)
https://nana-music.com/playlists/3113460
※小説を読んだり、朗読を聴いて頂ければと思います。
【短編小説】卒業式 第1話
https://nana-music.com/sounds/05432286
寒さが続くはずのこの季節、例年に無い暖冬により、北の大地は雪不足に見舞われている。
タケシの住む札幌もそれは例外ではない。何時もなら「雪まつり」で賑わう大通り公園であるが、雪像の数が少なく感じるのだ。
そんな風景や観光客を尻目に、僕は大学受験に備え学校へと足早に向かった。そうタケシは、札幌市内の高校に通う高校三年生だ。
全国的に行われる大学センター試験も今年が最後で、僕は何としても現役合格する必要があった。それは勿論、来年からの入試制度の変更もあるのだが、浪人するとひとつ下の妹と同じ受験生と言う事が大きい。
また僕の進みたい大学は、道内にある大学では無いと言う理由もあった。そんな僕が将来目指しているのが建築士である。
僕の両親は僕が進学するにあたり、何かと口を挟んでは、道内の大学や専門学校に進んで、将来は家業の農業を継ぐよう言いつけてくる。
しかし僕は自分の進路を両親の意向で決められるのに反発して、子供の頃から憧れていた建築士を目指し、そして温かい家庭と言う物を夢見ていたのかも知れない。
そんな僕は今年の受験が最初で最後になる。もし受験に失敗したら、親の指示に従い家業を継ぐ約束をしていたからだ。
つづく…
【短編小説】卒業式 第2話
https://nana-music.com/sounds/0543cdbd
大学センター試験を先月に終えたタケシは、自分の目指す第一志望の大学を千葉県にある千葉大学とした。勿論、学費の件もあり、両親からは進路先を国立の大学にするよう言われて居たのだ。
本来なら僕は、大学センター試験を受けた北海道大学に入学するよう両親から勧められて居たのだが、センター試験の結果から合格は厳しいと言う判断と、家を出て都会に住んでみたいと言う憧れもあった。
そして今日、僕は高校に登校し進路指導の先生と面談する事となっていた。僕が学校に到着すると、同じクラスメイトのケンジが話し掛けてきた。
「よっ、タケシ! お前は内地から出るかと?」
同じ道民としてこの言葉は、一番投げ掛けて欲しく無い言葉だった。しかしケンジを無視する訳にも行かず、僕はこう答えたのだ。
「ケンジ! お前は家の家業を継ぐんだったよなぁ?」
そう言うとケンジは僕に対してこう言った。
「仕方ないっしょ! 俺の代で豆腐屋の看板おろす訳にも行かないし… お前が羨ましいよ!」
こんな会話をケンジと交わし、同じ立場の僕だけが自分の夢を追い掛けるのに、同じ道民として罪悪感を覚えたのだった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第3話
https://nana-music.com/sounds/0545b746
学校の進路相談室の傍で、ケンジと会話を交わした僕は、ケンジから投げ掛けられた言葉を引きづりながら、進路指導の先生と面談をした。
この時、進路指導の先生からは、こんな言葉をタケシは投げかけられた。
「春山タケシ君。確か君は北海道大学が第一志望だった筈だが…」
そう進路指導の柏原先生が言うと、僕はこう説明したのだ。
「センター試験の結果が良くなかったからです。だから第一志望を千葉大学にしたんです」
このタケシの説明を聴いた柏原先生は、こう僕に質問してきた。
「君の両親は確か……北海道大学が第一志望と言ってた筈では、君のセンター試験の結果なら北海道大学もまだ狙えるけど?」
この時、タケシは柏原先生に自分の大学受験が、今年で最初で最後の受験となる事を伝え、浪人する事が出来ない事を話したのだ。
すると柏原先生からは、もう一度家族で良く話し合うよう言われ、タケシは進路相談室を後にしたのだった。そして美術室の方へとタケシは向かった。
授業も終わり放課後の時間だったので、タケシは三年生の夏まで所属していた美術部に、久しぶりに顔を出す事にしたからであった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第4話
https://nana-music.com/sounds/05464546
タケシは三年生の夏まで所属していた美術部に顔を出す為、美術室に向かい美術室の扉を恐るおそる開けたのだ。すると、ひとりの女性がダビデ像をモチーフとした石像に向かい、真剣な眼差しでキャンパスに筆を走らせていた。
彼女の名前はコユキ、僕よりひとつ下の高校二年生だ。彼女は現在の美術部の部長でもあり、他の部員よりも先に部室である美術室に来ていたのだった。
そんな彼女に僕は声を掛けるのが悪いと思い、暫く彼女のデッサンを眺めていた。すると彼女は僕の存在に気付き、こう言って来たのだ。
「タケシ先輩、お久しぶりです。今日は学校だったんですね」
コユキがそう言うと、僕は彼女に向かってこう言ったのだ。
「進路指導の件でさぁ。それにしても相変わらず、芸術のセンスあるよなぁ! コユキはさぁ」
するとコユキは僕に対して、こう聞いてきた。
「先輩って第一志望の大学、どこなんですか?」
僕は迷う事なく、彼女にこう言ったのだ。
「千葉大学だけど… コユキには関係ないしょ!」
この言葉を聴いたコユキは、僕に向かってこう告げた。
「そしたら、わたし東京の芸大を目指そっかなぁ!」
こんなやり取りを僕はコユキと交わし、彼女の言った「東京の芸大を目指す」と言う意味が、どう言った意味なのかとても気になったのであった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第5話
https://nana-music.com/sounds/05472276
美術部の後輩であるコユキと会話を交わした僕は、彼女の口にした「東京の芸大を目指す」と言う意味がとても気になった。
それは僕が千葉大学を第一志望として居る為なのか、それとも前から東京の芸大を目指して居たのか、僕には分からなかったからだ。
そこで僕は彼女に、こんな質問をぶつけてみた。
「僕が北大を第一志望にしたら、コユキはどうする?」
するとコユキは少し考え、こう答えたのだ。
「先輩は千葉大に決めたんでしょ! それより、このスケッチの線のラインどうでしょうか?」
そうコユキが言うと、僕は彼女の右手を優しく包むかのように握り、二人の右手が重なり合って、鉛筆から一筋の弧が描かれ、キャンパスの中に溶け込まれていった。
この時、彼女の背後で僕は、彼女から女性特有の甘いフローラルな香りを感じ、心臓の鼓動が速くなっていったのだ。
そして、この心臓の鼓動を見透かされないよう、僕は気が気では無かった。するとコユキは、僕にこう言ったのだ。
「先輩、2月14日の日に会えますか?」
突然の彼女からの申し出に、僕は驚きながらこう答えた。
「まあぁ、大丈夫だけど…」
その時だった。美術室の扉がガラッと開いたのだ。
つづく…
【短編小説】卒業式 第6話
https://nana-music.com/sounds/05483fc8
部室である美術室で、僕はコユキと会話を交わし、手を取り合ってキャンパスにデッサンをしていた。
すると突然、美術室のドアの扉がガラッと開いたのだ。中に入って来たのはユウコであった。彼女と僕は同級生で、ユウコは去年まで美術部の部長を務めていた。
ユウコは美術室に入ると僕とコユキを見つけ、こんな言葉を投げ掛けたのだ。
「タケシ君。やっぱり美術室に来てたんだ!」
僕に対してユウコはこう言い、僕の顔を見て嬉しそうな表情を見せた。僕は慌てて握っていたコユキの右手を離し弁解するよう、こうユウコに言ったのだ。
「何で、俺が美術室に居ること知ってるんだよ!」
この言葉を聞いたユウコは、こう言った。
「さっきケンジ君に会ったら……タケシ君、今日は学校に来てるって……だから、美術室に居るんじゃないかと?」
僕はさっきまで、コユキの手を握って居たのを見られたのではないかと気になった。しかし確かめる術もなく、話を逸らすのに受験の話をしたのだ。
「ユウコはさぁ 第一志望の大学はどこ?」
するとユウコはこう答えた。
「わたし北大だよー! タケシ君は?」
この質問に僕が答えようとした瞬間、コユキがこう言ったのだ。
「タケシ先輩は千葉大ですよねー。わたしは来年、東京の芸大目指しますよー」
こんな事をコユキは二人に言い、美術室の空気が張り詰めたのだった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第7話
https://nana-music.com/sounds/054ba570
美術室で僕がコユキの手を取ってデッサンして居ると、同じ美術部の同級生だったユウコが部室の中に入って来たのだ。
そして其処で、僕はユウコに大学受験の話をしたのだが、後輩であるコユキが僕より先に、僕の進路の話をユウコにしたのだった。
その時、ユウコは少し戸惑った表情を見せ、僕とコユキにこう言ったのだ。
「タケシ君。もしかして……わたし、お邪魔だったかしら?」
この言葉を聴いた僕は弁解するよう、こうユウコに言った。
「そんな事ないよ! ユウコ…」
するとコユキが僕とユウコに向かって、こんな事を言ったのである。
「わたし2月14日に、先輩と会う約束したんです」
僕はコユキのこの言葉を聴いて、ユウコがどう思って居るのか凄く気になった。そして恐るおそるユウコにこう聞いたのだ。
「ユウコさぁー。別にコユキと会うだけだし…」
この時、僕は自分でも何の弁解にもなって居ないと思った。しかし取り敢えずこの場を凌ぎたいと言う思いで、こんな言葉が口から出たのだ。
するとユウコは僕に向かって、こんな風に言ったのだった。
「タケシ君。バレンタインデー、楽しみだねー」
この言葉に対し僕は何も言わなかったが、コユキがこう返事をしたのだった。
「そだねー」
つづく…
【短編小説】卒業式 第8話
https://nana-music.com/sounds/054c0c40
僕とひとつ下の後輩のコユキが美術室に居ると、同級生のユウコが部室である美術室に入ってきた。
そしてその時、コユキはユウコに僕の進路と自分の進学について話し、2月14日のバレンタインデーに僕と会う約束をして居る事を告げたのだ。
この時、ユウコが僕の事をどう思って居るかとても気になったが、僕はこう言って部室である美術室を後にした。
「ユウコ! お互い受験頑張ろう… それと2月14日のバレンタインデー、ユウコも楽しみだよねー」
僕は取って付けたかのようユウコに、2月14日のバレンタインデーの事を言い、慌ててその場から立ち去ったのだ。
その後、コユキとユウコがどんな会話を美術室で交わしたのかは分からないが、僕は二人の居る美術室から逃げ、学校から家へと向かった。
その時、僕は自分でも卑怯で、二人に対しどんな顔をして2月14日に会ったら良いか、情けない気持ちが込み上げたのだ。
そんな気持ちを引きづりながら、僕は札幌の大通り公園のライトアップされた「雪まつり」の雪像の傍を歩いて居たのだった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第9話
https://nana-music.com/sounds/054c5c5f
学校から家へと帰った僕は、再び志望校である千葉大の受験に向け勉強をしていた。
しかし部室である美術室で、僕がコユキやユウコとやり取りした出来事や、2月14日のバレンタインデーの事がとても気になったのだ。
そして数日後、コユキから僕の元に一本の「LINE」のメッセージが届いた。僕は恐るおそる内容を確認したのだ。
すると、こんなメーセージが書かれてあった。
「タケシ先輩、バレンタインデーの約束覚えてますか? 14日の約束、『さっぽろ雪まつり』の最終日に変更しても大丈夫ですか?」
こんなメーセージが書かれてあった。僕はカレンダーを観て、こうコユキにメーセージを返したのだ。
「大丈夫だけど… 時間と場所はどこ?」
するとコユキから再び、僕の元にメーセージが届いた。
「それじゃあ、『さっぽろテレビ塔』の下に17時でお願いします♡」
僕はこの内容を観て、コユキにこうメーセージを送ったのだった。
「わかった! じゃあ11日の日に行くよ…」
こう僕とコユキは約束し、僕はコユキの最後に送った「LINE」のメッセージに、ハートマークが付いていたのがとても気になったのであった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第10話
https://nana-music.com/sounds/054cd631
コユキと約束した2月11日が近づくに連れ、僕は落ち着かない毎日を送っていた。
そしてその間に、僕は大学受験の第一志望を、最初の予定通り千葉大学にするか北海道大学にするか悩んで居たのだ。
それは僕の家族の件や、また同じクラスメイトのケンジと話した事に関係する。僕だけ内地を出て、都心の大学に進学する事に罪悪感を覚えて居たからだ。
そんな事を考えて居るうちに、コユキと約束した11日を迎えたのだった。僕がコユキと約束した「さっぽろテレビ塔」の下まで行くと、コユキは厚手のコートにマフラーをして待っていたのだ。
僕はコユキに、こう声を掛けたのである。
「コユキ、待たせちゃた? ごめん…」
するとコユキは嬉しそうな微笑みを浮かべ、こう言ったのだ。
「タケシ先輩! 遅刻はダメですよ…」
僕は申し訳なく、こうコユキに答えた。
「そう言えば今日が、『さっぽろ雪まつり』の最終日だったよなぁ…」
こうコユキに僕が言うと、コユキは僕にこう言い返したのだ。
「それじゃタケシ先輩! 遅刻のお詫びに、今日はふたりだけのデートです…」
突然のコユキからの提案に僕の心臓の鼓動は高まり、コユキの右手が僕の左手に重なり合ったのだった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第11話
https://nana-music.com/sounds/054d6267
「さっぽろテレビ塔」の下で、僕とコユキは17時に落ち合い、そして其処でコユキが僕の左手を握り締めて来た。
この時、僕の心臓の鼓動は高まりドキドキして居たのだ。しかしコユキが、僕の事をどう思って居るのか、僕は確認する事が出来た。
それは先日、コユキから送られた「LINE」のメッセージにハートマークが付いて居たからだ。
そんな事を僕が考えて居ると、コユキは僕にこう告げたのだった。
「タケシ先輩と一緒に、『雪まつり』を観るの楽しみにしてたんです…」
この言葉に対し、僕はコユキにこう言ったのだ。
「僕は今年、千葉大学を受験するから… しばらくは、『さっぽろ雪まつり』を観る事も出来なくなると思う…」
こう僕がコユキに言うと、コユキは僕を勇気づけるよう、こう言ったのだった。
「タケシ先輩! わたし来年、東京の芸大目指します……だから、先輩も頑張ってください」
こうして二人は、会場である大通り公園に向かい、手を繋ぎながらライトアップされた「さっぽろ雪まつり」の雪像を観て居たのだった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第12話
https://nana-music.com/sounds/054d9912
僕とコユキは手を繋ぎ歩きながら、ライトアップされた「さっぽろ雪まつり」の雪像を眺めていた。
そしてコユキが来年、東京の芸大を目指すと言う理由が、僕の受験に関係するのかとても気になったのだ。
しかし僕はコユキに、この事について聞くのに悪い気がした。だから僕はコユキにこう言ったのだ。
「僕の夢は『建築士』になるのが夢なんだ! だからお互い、自分の夢に向かって頑張ろう…」
こんな風に僕がコユキに声を掛けると、コユキは頷いたのだった。そして二人はライトアップされた雪像を観た後、近くのレストランへと入ったのである。
レストランでメニューを注文し、食事が運ばれて来る迄の間、僕とコユキは学校ではなかなか話せない将来の夢なども語り合ったのだ。
そして食事も終える頃、コユキはカバンからラッピングされた小さな包みを丁寧に取り出し、僕にこう言って差し出した。
「タケシ先輩! 少し早いですが……わたしからの、バレンタインデーのチョコです。受け取って貰えますか?」
僕はある程度予想はして居たが、コユキが僕に対し、どの程度の恋心を抱いて居るのか迄は計り知れなかったのだった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第13話
https://nana-music.com/sounds/054e1781
僕とコユキで「さっぽろ雪まつり」の雪像を観た後、コユキが僕にバレンタインデーのチョコを差し出した。
僕は断るのも悪いと思い受け取ったのだ。そして、こうコユキに聞いたのだ。
「このチョコ、僕で良かったのかなぁ?」
僕はコユキからチョコを受け取っておきながら、コユキを傷つける様な言葉を投げ掛けてしまったのである。
するとコユキは悲しそうな表情をして、僕にこう言った。
「タケシ先輩! やっぱりユウコ先輩のこと、好きなんですか?」
こうコユキは僕に告げ、一人お店を後にしたのだ。僕は弁解するため、慌ててお店の会計を済ませコユキを追い掛けた。
札幌駅の方へと向かうコユキを、僕は必死になって追い掛けた。すると「札幌時計台」の前を通過した所で、偶然にもユウコに出会したのだ。
ユウコは僕に気づき、こう声を掛けて来たのである。
「タケシ君! 久しぶり、どうしたの?」
僕はユウコのこの問い掛けに、どう答えたら良いか迷った。そしてこう答えたのだった。
「ユウコ! 久しぶり……何でここに居るかと?」
そう僕がユウコに言っている間にも、コユキは僕の視界から遠ざかり、見失ってしまったのであった。
つづく…
【短編小説】卒業式 第14話
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コユキからバレンタインデーのチョコを貰った僕は、コユキに対し傷つける様な言葉を投げ掛けてしまった。
するとコユキは悲しい顔を僕に見せ、お店の外へと出て行ったのだ。僕はコユキの後を必死に追い掛けた。
しかしその途中で僕はユウコに遭遇し、ユウコから声を掛けられたのだ。その時、僕はユウコに、こんな風に答えた。
「ユウコ! 久しぶり……何でここに居るかと?」
この言葉に対しユウコは、こう言ったのである。
「タケシ君! 今日が『さっぽろ雪まつり』の最終日だったから…」
ユウコは僕にこう言い、僕が手に持っていたチョコを見て、こう尋ねたのだ。
「もしかして、タケシ君! さっきまで、コユキと一緒だったの?」
この質問に、僕はユウコにどう説明したら良いか迷った。そして暫く僕が考えて居ると、ユウコは僕に向かって、こう言ったのだ。
「タケシ君! コユキのこと好きなら、早く追い掛けないと!」
僕はユウコにこう言われ、必死になってコユキを追い掛けた。しかしその途中で不思議と、本当にコユキの事が好きなのかと言う感情が湧き起こったのであった。
つづく…
【短編小説】卒業式第15話「最終回」
https://nana-music.com/sounds/054f61c6
僕はユウコからコユキを追い掛けるよう言われ、コユキを追い掛けた。しかしその途中で、追い掛けるのを止めたのだ。
それは僕の心の中に、本当はユウコの事が好きだと言う感情が芽生えたからであった。
だから僕は二人と別れた後、大学受験の第一志望を千葉大学ではなく、ユウコと同じ北海道大学としたのだった。
勿論、両親からの意向も有り、後期日程で試験を受け、僕は合格を勝ち取る事が出来たのだ。この時、既に卒業式も終わって居り、僕は美術部の仲間で高校に集まる事となったのである。
僕はユウコと同じ北海道大学に入学出来る嬉しい気持ちと、コユキに対し悪いと言う罪悪感が入り混じり、学校へと向かったのであった。
学校が近づくに連れ、僕は二人にどんな顔をして会えば良いか不安が込み上げた。
そんな気持ちを引きずり、僕が部室である美術室へと入って行くと、僕はユウコを見つけ、こう言ったのだ。
「ユウコ! 俺、北大に行く事に決まったよ…」
するとユウコは僕に対し、こう答えた。
「わたし、北大じゃなくて……東京の大学に決まったの…」
この言葉を聴かされた僕は、愕然としたのだ。そして、そこにコユキが現れ、こう言ったのである。
「わたし、来年……東京の芸大目指します… だって先輩、自分の夢に向かって頑張るって……言ったじゃないですか…」
おわり
【短編小説】卒業式①〜⑮ 完結済(朗読劇)
https://nana-music.com/playlists/3113460
【短編小説】夏祭り①〜⑮完結済(朗読劇)
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【短編小説】ハロウィンパーティー①〜⑮完結済(朗読劇)
https://nana-music.com/playlists/2444969/
【作家】
小説・物語・童話・絵本・詩・和歌・俳句・絵・唄(音楽)
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