
レファヌキ共和国の物語【第16章】
音楽:aya.c 文:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ)
第16章、十三夜の始まりは、テラス席で。 このリレー小説は、架空の国のカフェと、月を巡る物語です。 まずはこちらを⬇️ ★まとめ読み用プレイリスト (第1章〜第15章) https://nana-music.com/playlists/3686144 (第16章〜 ) https://nana-music.com/playlists/3708915 ★第1章に、この物語が生まれるまでのエピソードも書かれています。ご一読頂けると嬉しいです。 https://nana-music.com/sounds/061f6d77 ★登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。 ★文章の無断転載は、ご遠慮くださいね。 ★朗読等のコラボの際は、下記のサウンドをご参考の上、キャプションの記載をお願いします(小説本文の転載はNGです) ↓ https://nana-music.com/sounds/065b1067 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 【第16章】 十三夜のテラス席 「ゲンチアナ、ごめん、この席は予約があってね」 いつもの席に座ろうとしたゲンチアナを、アルバーラは笑顔で押し留めた。 「悪いけど、テラス席しか空いてないの。いいかな?」 ゲンチアナは戸惑った。 十三夜の今日、カフェ・エイブは、夕方から明け方の営業だ。深夜零時をとっくに過ぎた店内には、空席も目立つ。 「……いいわ。熱い珈琲をお願いね」 「ありがとう。席に案内するから、足元に気をつけて」 アルバーラはテラス席へ続くガラス扉を開けた。ゲンチアナはアルバーラの背中に続いた。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ カフェ・エイブのテラス席は、タークネク湖に面している。ガラス扉を開け放てば、店内のステージを、ライブの無い日は、湖の景観を楽しめる。 席には全てランプが灯り、テラス席全体が幻想的なムードを醸し出していた。 だが、十月の深夜は流石に風が冷たい。テラス席の客はゲンチアナの他には、ひとりしか居ないようだ。 「悪いけど、相席でお願い。他の席は空いてないの」 「……いいわ」 アルバーラの言葉に、ゲンチアナは、釈然としないながらも頷いた。 アルバーラは、客が座っている席へとゲンチアナを案内した。タークネク湖に映るランプの灯りが、いちばん綺麗に見える席だ。 「すみませんが、相席でお願いします。あいにく他の席はふさがっておりまして」 「相席ですか?」 戸惑いながら顔を上げた客を見て、ゲンチアナは驚いた。 「……ウェイ?」 「……ゲンチアナ?」 ウェイも少なからず驚いた顔をしている。 「どうして、ここに?」 「僕は、ジュッティに言われて。ゲンチアナの事で相談があるから、この時間に、カフェ・エイブに来てくれって。来たら、この席に通されて」 「私は、仕事帰りには、ここで珈琲を飲む事にしているから……。でも、そういえば、ジュッティに聞かれたわ。『今日もカフェ・エイブに行くんでしょう?』って」 「……ジュッティに、図られた、って、事かな?」 「……そう、みたい、ね」 ランプの灯りがもう少し暗ければいいのに、と、ゲンチアナは思った。多分、自分が赤面しているのが、ウェイには分かってしまっただろう。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「お待たせしました。特製の珈琲です」 アルバーラがトレイを持ってやって来た。とびきりの笑顔だ。 「こちらのポットはサービスです。カップもポットも、特注の二層構造だから、ちょっとやそっとじゃ冷めませんよ。懐炉とブランケットもお使いくださいね。どうぞ、ごゆっくり」 二人の前にトレイを置くと、アルバーラはあっという間に去っていった。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ウェイは黙って珈琲を飲んだ。ゲンチアナも無言でカップを手にしている。 ランプの灯りが照らす俯いた顔に、ウェイは見惚れた。話したい事は沢山あるのに、何も言葉が出てこない。 どれくらい時間が経っただろう。ゲンチアナが思い詰めた顔で、ウェイを見つめた。瞳の美しさに、ウェイの鼓動が速くなった。 「あのね……」 「はーーっくしょん!」 ゲンチアナが何かを言いかけたその時、ウェイは、盛大にくしゃみをしてしまった。何て事だろう。慌ててハンカチを取り出す。 ゲンチアナは目を丸くした。そして笑い出した。 鼻を拭いながら、ウェイも次第におかしくなってきて、大きな声で笑い出した。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「私ね、ウェイに渡したいものがあるの」 ひとしきり笑った後、ゲンチアナは鞄から包みを取り出した。 「多分、ウェイはあまり服装に興味が無いんだと思うけど……、もう十月なのに、ずいぶん寒そうにしているから……」 ゲンチアナは、また、思い詰めた顔になった。 「要らなかったら、無理に受け取らなくていいから。でも、もし、よかったら……」 そう言いながら差し出された包みを、ウェイは受け取った。 「開けてもいい?」 「どうぞ」 包みに入っていたのは、マフラーだった。網目がとても凝っている。 「これ、もしかして、ゲンチアナが編んだの?」 「……ええ」 ウェイはマフラーを首に巻いた。暖かい。 「ありがとう。……似合う、かな?」 「ええ、とても」 ゲンチアナは微笑んだ。笑顔が花のようだな、と思った次の瞬間には、ウェイは勢いこんで話していた。 「あのね、僕も、ゲンチアナに贈りたいものがあるんだ。こんな素敵なものじゃないし、何の役にも立たないんだけど……、良かったら、満月のライブの時に持って来るから、あの……見てもらっても、いい……ですか?」 ゲンチアナは、目を大きく開いて、それから、ゆっくり微笑んだ。 「ええ、喜んで」 その後は、沈黙が続いた。だけど、その沈黙がウェイには心地良かった。ゲンチアナも、沈黙が嫌ではないようだった。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「ふたりとも、ちゃんと話は出来た?」 突然、声を掛けられ、ふたりは顔を上げた。ジュッティが、二人を覗き込んでいる。 「ジュッティ、君、相談があるって言ってたのは、方便だったんだね?」 「ジュッティ、わざわざ、『カフェ・エイブに行くの?』って聞いたのは、こういう事だったのね?」 ウェイとゲンチアナの声が重なった。 「まあまあ、ふたりとも、話は後で。流石にそろそろ中に入らないと、風邪を引くわよ。行きましょう」 ジュッティは、そう言うと、手にしていた小箱の蓋を開けた。 途端に、テラス席のランプの灯りが、全て消えた。 (第17章に続く) 第17章 十三夜の店内(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062b0a2b 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 リレー小説に参加したい方は、第16章以降、枝分かれでお願いします。私は私で、第16章以降、結末まで書かせて頂きます。 詳細は、第15章のキャプションをご覧下さい。 ↓ https://nana-music.com/sounds/06276784 ★コミュニティあります! 「レファヌキ共和国 国立よろず相談所」 https://nana-music.com/communities/1196360 リレー小説用につくりましたが、小説以外のレファヌキサウンドや、外部リンクも、確認できる限り、こちらに格納しています。雑談や感想も大歓迎! よろしければ覗いて下さると嬉しいです! ーーーーーーー 🌖 ーーーーーーー 「レファヌキ共和国の物語」 企画:あーばー https://nana-music.com/users/6071144 https://twitter.com/__a__ba__lalala/status/1443880160004952067?s=21 音楽:aya.c「レファヌキ共和国の曲」 DTM:c https://nana-music.com/sounds/061ed505 フルート:aya(ふえふき) https://nana-music.com/sounds/061f301a リレー小説「レファヌキ共和国の物語」 書き手:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ) https://nana-music.com/playlists/3686144 https://nana-music.com/playlists/3708915 リレー小説企画:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 https://twitter.com/shimizu_hakobe/status/1444445773312057347?s=21 第1章 プロローグ(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 第2章 狩猟月(書き手:ゑ。) https://nana-music.com/sounds/061f769a 第3章 祭り日(書き手:jU''') https://nana-music.com/sounds/061f7f32 第4章 新月前日のカフェ(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f44 https://nana-music.com/users/10478635 第5章 二日月の宵(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/062051a0 第6章 静寂(書き手:(ゆぅ)) https://nana-music.com/sounds/0620ee31 第7章 隠された歴史(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f73 https://nana-music.com/users/10478635 第8章 三日月の夜(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621807c 第9章 半月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621f763 第10章 半月の病院(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06227be6 第11章 半月の劇場・前編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06251e3b 第12章 半月の劇場・後編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06255a5a 第13章 十日夜の王宮(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06259ae8 第14章 十日夜の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0625e153 第15章 十日夜の夢(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06276784 第16章 十三夜のテラス席(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06292959 第17章 十三夜の店内(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062b0a2b 第18章 十三夜の親子(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062c15dc 第19章 十三夜の昔話(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062de89b 第20章 十三夜の歌い手(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062fd07f 第21章 十三夜の雷(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06316bdd 第22章 満月前の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0635136c 第23章 満月前の海岸(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06378303 第24章 満月のライブ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063acfed 第25章 満月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063e3f4f 第26章 満月の広場(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06419ade 第27章 満月の虹(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06445583 第28章 エピローグ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06492327 Special thanks プロローグ設定協力:岬 https://twitter.com/misaki_u_e?s=21 イラスト:たけねこ(第7章設定協力) (朝)https://nana-music.com/sounds/061fd48d (夜)https://nana-music.com/sounds/0620aecf ガイドブック(地理・歴史):蟹蟹クラブ(第8章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0620ce61 「月の子守唄」:(ゆぅ)(第15章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0624ae40 参考サイト アクラネカレンダー「満月カレンダー 2021年10月」 https://www.arachne.jp/onlinecalendar/mangetsu/ 暦生活「月の呼び名」 https://www.543life.com/moonname/ ーーーーーーー 🌘 ーーーーーーー 十三夜の物語が始まりました! いや、この十三夜がね……書いても書いても終わらないんですよ……。エピソードを分割し続けた結果、16章から21章まで十三夜です……。 昨日ようやく、21章の初稿が上がりました……長かった……。これから少しずつ校正を進めて、終わった所から少しずつ出していきます。 ここから、密度濃く行きますよ!今後の展開をどうぞお楽しみに!!!(して下さると嬉しい) 多分、この物語、25章くらいで完結します。延びても30章以内に収めたいですね(プレイリストを分けたくない……笑) ちなみに、私がやっている、もうひとつのリレー小説も、先日、新作を出したのですが……。 ……レファヌキよりも先に始めたのに、レファヌキに章数を追い抜かれてしまいました(汗)。 そちらは、小説だけではなく、シーンをイメージした歌も歌っています。よろしければ覗いて下さると嬉しいです。 「Am roop|クールの誕生」 【旅芸人一座の物語〜第13話】 書き手:清水はこべ(箱) ボーカル:エリス羽衣・清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/06287b01 (王弟と黒髪美女の一夜の物語を、ピチカート・ファイヴのマッシュアップに載せています) レファヌキ共和国、この物語以外にも、色んなコラボがあります! オリジナル曲や、絵や、ナレーション、ガイドブックに、国旗のコラボもあるんですよ! 是非、皆さんも、この素晴らしい国を探索して、楽しんでくださいね! ★プレイリスト「レファヌキ共和国の音楽と絵画」 https://nana-music.com/playlists/3684932 https://nana-music.com/playlists/3689849 https://nana-music.com/playlists/3744935 ーーー★ーーー ちなみに、私は、この物語以外にも、リレー小説をやっています。ご興味ある方は、のぞいて頂けると嬉しいです。 ★「旅芸人一座の物語」 https://nana-music.com/playlists/3601402 https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★「影のないボクと灰色の猫」 https://note.com/smzhkb/n/n55d4322010ac https://nana-music.com/sounds/05d87982 #cオリジナル #謎設定 #あーばーさんに感謝の箱 #cさんに感謝の箱 #あやさんに感謝の箱 #岬さんに感謝の箱 #ゑさんに感謝の箱 #じゅーさんに感謝の箱 #あゆちゃんに感謝の箱 #かっこゆさんに感謝の箱 #箱のよみもの #レファヌキ共和国 #レファヌキ共和国の物語
