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レファヌキ共和国の物語【第21章】
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第21章、長い十三夜の果てに。 このリレー小説は、架空の国のカフェと、月を巡る物語です。 まずはこちらを⬇️ ★まとめ読み用プレイリスト (第1章〜第15章) https://nana-music.com/playlists/3686144 (第16章〜 ) https://nana-music.com/playlists/3708915 ★第1章に、この物語が生まれるまでのエピソードも書かれています。ご一読頂けると嬉しいです。 https://nana-music.com/sounds/061f6d77 【登場人物の紹介】(第20章時点) https://nana-music.com/sounds/063132f0 ✴︎20章までのネタバレを含みます。 【地名・用語等の紹介】(第20章時点) https://nana-music.com/sounds/0631332b ✴︎20章までのネタバレを含みます。 ★登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。 ★文章の無断転載は、ご遠慮くださいね。 ★朗読等のコラボの際は、下記のサウンドをご参考の上、キャプションの記載をお願いします(小説本文の転載はNGです)  ↓ https://nana-music.com/sounds/065b1067 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 【第21章】十三夜の雷 「痛むのか?」 王座に座る少女は尋ねた。口調は高圧的だが、心なしか青ざめて見える。 カークユウは首を横に振った。 「いいえ。少し痺れただけです。大した事はありません」 「痛まないなら良い。……しかし、《地上の雷》を手にする者が、今のレファヌキに居るとは。30年も前に、《レ塔》と共に《電灯》を塵へと返したというのに」 コー・ギア・ユーは、唇を噛み締めた。 「もう同じ手は食いませんよ」 「侮るな。《地上の雷》は、世界を滅ぼす。お前は僅かな《雷》で、獲物を逃したではないか」 「陛下、お言葉ですが、僕は、ご命令には従いましたよ。満月の前に、写しを破壊しましたからね」 少女はカークユウを睨みつけた。カークユウは肩をすくめた。 「まあ、一度釣り上げたと思った魚の針が外れるのは、確かに、釣り人にとっては、歓迎すべき出来事とは言えないでしょうね」 ジュッティの背中をマフラーで叩いた男を、カークユウは思い出していた。 男が手にしたマフラーは、背中を叩くと同時に、僅かな《雷》を放った。その微量な《雷》を浴びた途端、ジュッティと一体化していたロッドハープの弦が、彼女から分離した。 「でも、逃した魚に用はありません。次の機会には、もっと大きな魚を釣り上げるつもりですから」 少女は黙った。そして尋ねた。 「……痛まないのだな?」 「ええ、大丈夫ですよ」 カークユウは微笑んだ。 「では、一曲披露せよ」 「畏まりました。コー・ギア・ユー陛下」 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「図書の紛失手続きが、どれだけ煩雑な作業なのか、母さん、分かってる?」 ウェイの声は静かだったが、怒りに満ちていた。 「ごめんなさい。正規の手続きで借りる事はできなかったから」 しょんぼりとしているシーラを見るのは初めてで、アルバーラは少しおかしくなった。 カフェ・エイブのテーブルに並べられたのは、ミーシャクの小説だった。4冊全てに、国立図書館の印がある。 「『水鏡の伝説』『失われた音』『偽王の野望』。これは、紛失の届け出があった3冊ですね」 ゲンチアナが溜息混じりに言った。 「でも『狩猟月の来襲』も、シーラさんが持っていたなんて……。ミーシャクの著作で、ここに無いのは、『地上の雷』だけね」 「『地上の雷』は、僕が持っている」 ウェイが、鞄から1冊の本を取り出した。 「この間、借りたんだよ。正規の手続きでね」 シーラはますますしょんぼりとして見えた。アルバーラは、取りなすように声をかけた。 「で、この小説が、ラヌキの大統領からのメッセージなんですか?」 シーラは頷いた。 「私がレファヌキに影を送る直前に、突然、ラヌキの大統領とコンタクトが取れたの。彼はミーシャクの小説を読む様にと言っていた。そこにメッセージがあると」 「ミーシャクは覆面作家だよ。正体を誰も知らない。著作はこの5冊だけで、全て絶版になってる。……母さん、つまり、ミーシャクの正体って……」 「ええ。ラヌキの大統領、ラ・ニクラブカよ。30年前、ラヌキの襲撃の少し前から、彼も監獄に囚われていたらしいわ。でも、アルバーラが裂け目を作ったお陰で、密かにレファヌキにメッセージを送る事が出来たそうよ。それが小説という形で図書館に収められていた」 「……僕がさっき、マフラーでジュッティを叩いたのは、ミーシャクの小説の真似をしたんだ」 ウェイの言葉に、ゲンチアナも頷いた。 「『地上の雷』のエピソードね」 「そう。魔女に囚われた主人公が、羊飼いに助けられる場面。羊飼いは羊毛を擦り合わせ、小さな雷を起こして、魔女の杖を叩き、主人公の戒めを解くんだ」 シーラは微笑んだ。 「それは《電気》を利用して《音》へ干渉する、初歩的な手法ね。大統領は、父さんが昔書いた論文に、とても興味を持ってくれていたの。こんな形であなたに伝わるなんてね」 ウェイは一瞬、複雑な顔をしたが、静かに言った。 「満月の前までに、ミーシャクの著作を読み返してみるよ。何かヒントになる事がありそうだ」 「私も。手分けしてやりましょう」 ゲンチアナの言葉に、シーラは慌てた様子を見せた。 「陛下は満月が過ぎるまで、大人しくなさって下さい。失礼ながら、私は結界の中に、陛下をお隠しするつもりです」 「シーラさん、ごめんなさい。それはお断りします」 ゲンチアナはきっぱりと言った。 「一応、私、この国の国王なんですよね? 何もせずに、隠れて震えているのは嫌です。私も出来る事をしたいです」 「シーラさん、ゲンチアナは、言い出したらききませんよ」 アルバーラは、横から口を出した。 「この子は、大抵の事には、ノーと言いません。でも、一度こうと決めたら、誰が何と言おうと曲げないんです。諦めた方がいいですよ」 ウェイも頷いた。シーラは遠い目をした。 「そうですね。お小さい時も、陛下はそんな姫君でしたね」 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 十三夜の月が沈んだ。 その直後には、ラヌキの空に、小望月の姿があった。 「カークユウ、敬語をやめよ、ギアと呼べ」 「どうしたの、ギア?」 カークユウはいつもと同じように、微笑んで少女を見つめた。少女はいつもと同じように、うつむいている。 「今日も私が嫌いか?」 「嫌いだよ」 カークユウは、次に続く言葉を待った。しかし沈黙が続いた。しばらくの沈黙の後、少女はいつもと違う言葉を口にした。 「もう一度答えよ」 「嫌いだよ」 「もう一度」 「嫌いだ」 また、沈黙が続く。カークユウは呟くように言葉を発した。 「ねえ、ギア、何故僕が、君を嫌いなのか、知ってる?」 「……知っている」 「そうだね。君は、僕よりも大義の方が大事だもんね」 少女は、うつむいたまま命じた。 「……言葉遣いを改めよ、カークユウ。陛下と呼べ」 「はい、陛下」 「もう一曲、披露せよ」 「畏まりました。コー・ギア・ユー陛下」 ロッドハープの音色が美しく響いた。少女はそれを、うつむいたまま聴いていた。 曲の終わりに、少女は指を鳴らした。 途端に、カークユウの姿は、指先から粒子となって解けていった。弾き手の手を離れたロッドハープも、同様に粒子へと姿を変えた。 「そう、お前は私が嫌いだ」 少女はぽつりと言った。 「《地上の雷》を侮る訳にはいかない。他に手は無い。私には大義がある」 カークユウとロッドハープだった粒子は、少女の周りを渦巻いた。 「だから、私はお前を愛さない」 粒子に取り巻かれた少女は、終始、うつむいたままだった。 (第22章へ続く) 第22章 満月前の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0635136c 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 リレー小説に参加したい方は、第16章以降、枝分かれでお願いします。私は私で、第16章以降、結末まで書かせて頂きます。 詳細は、第15章のキャプションをご覧下さい。  ↓ https://nana-music.com/sounds/06276784 ★コミュニティあります! 「レファヌキ共和国 国立よろず相談所」 https://nana-music.com/communities/1196360 リレー小説用につくりましたが、小説以外のレファヌキサウンドや、外部リンクも、確認できる限り、こちらに格納しています。雑談や感想も大歓迎! よろしければ覗いて下さると嬉しいです! ーーーーーーー 🌖 ーーーーーーー 「レファヌキ共和国の物語」 企画:あーばー https://nana-music.com/users/6071144 https://twitter.com/__a__ba__lalala/status/1443880160004952067?s=21 音楽:aya.c「レファヌキ共和国の曲」 DTM:c https://nana-music.com/sounds/061ed505 フルート:aya(ふえふき) https://nana-music.com/sounds/061f301a リレー小説「レファヌキ共和国の物語」 書き手:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ) https://nana-music.com/playlists/3686144 https://nana-music.com/playlists/3708915 リレー小説企画:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 https://twitter.com/shimizu_hakobe/status/1444445773312057347?s=21 第1章 プロローグ(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 第2章 狩猟月(書き手:ゑ。) https://nana-music.com/sounds/061f769a 第3章 祭り日(書き手:jU''') https://nana-music.com/sounds/061f7f32 第4章 新月前日のカフェ(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f44 https://nana-music.com/users/10478635 第5章 二日月の宵(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/062051a0 第6章 静寂(書き手:(ゆぅ)) https://nana-music.com/sounds/0620ee31 第7章 隠された歴史(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f73 https://nana-music.com/users/10478635 第8章 三日月の夜(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621807c 第9章 半月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621f763 第10章 半月の病院(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06227be6 第11章 半月の劇場・前編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06251e3b 第12章 半月の劇場・後編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06255a5a 第13章 十日夜の王宮(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06259ae8 第14章 十日夜の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0625e153 第15章 十日夜の夢(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06276784 第16章 十三夜のテラス席(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06292959 第17章 十三夜の店内(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062b0a2b 第18章 十三夜の親子(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062c15dc 第19章 十三夜の昔話(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062de89b 第20章 十三夜の歌い手(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062fd07f 第21章 十三夜の雷(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06316bdd 第22章 満月前の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0635136c 第23章 満月前の海岸(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06378303 第24章 満月のライブ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063acfed 第25章 満月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063e3f4f 第26章 満月の広場(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06419ade 第27章 満月の虹(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06445583 第28章 エピローグ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06492327 Special thanks プロローグ設定協力:岬 https://twitter.com/misaki_u_e?s=21 イラスト:たけねこ(第7章設定協力) (朝)https://nana-music.com/sounds/061fd48d (夜)https://nana-music.com/sounds/0620aecf ガイドブック(地理・歴史):蟹蟹クラブ(第8章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0620ce61 「月の子守唄」:(ゆぅ)(第15章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0624ae40 参考サイト アクラネカレンダー「満月カレンダー 2021年10月」 https://www.arachne.jp/onlinecalendar/mangetsu/ 暦生活「月の呼び名」 https://www.543life.com/moonname/ ーーーーーーー 🌘 ーーーーーーー 本日12/19は満月。私の町は雪模様で月は見えませんが、コールドムーンのこの日に、レファヌキでは、ようやく10月の十三夜が明けましたー。 いや、長かった……。十三夜は、第16章から第21章の6章構成。これを「1章じゃ終わらないよなー、2章か、もしかしたら3章くらいはかかるかなあ?」と、のんびり考えていた、過去の自分に、心から突っ込みを入れたい……。 (この十三夜が、書いても書いても終わらない現象を、私は「食べている内に麺が汁を吸って増えていくラーメン現象」と密かに呼んでます……) ちなみに、1章ごとの本文長さが、2000字前後なので(本当は1500字程度に収めたいところなんですが……)、えーと、……十三夜だけで12000字くらい……? 音楽アプリのキャプションに書く量じゃないよね……(今更)。 いや、ほんと、この物語に付き合ってくださる皆様には、感謝しかありません。いつもありがとうございます!!! 年内、もう1章くらい出せるかなー? リアルや他の作品との兼ね合いですが、できるだけ出せるように頑張りますー! レファヌキ共和国、この物語以外にも、色んなコラボがあります! オリジナル曲や、絵や、ナレーション、ガイドブックに、国旗のコラボもあるんですよ! 是非、皆さんも、この素晴らしい国を探索して、楽しんでくださいね! ★プレイリスト「レファヌキ共和国の音楽と絵画」 https://nana-music.com/playlists/3684932 https://nana-music.com/playlists/3689849 https://nana-music.com/playlists/3744935 ーーー★ーーー ちなみに、私は、この物語以外にも、リレー小説をやっています。ご興味ある方は、のぞいて頂けると嬉しいです。 ★「旅芸人一座の物語」  https://nana-music.com/playlists/3601402  https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★「影のないボクと灰色の猫」  https://note.com/smzhkb/n/n55d4322010ac  https://nana-music.com/sounds/05d87982 #cオリジナル #謎設定 #あーばーさんに感謝の箱 #cさんに感謝の箱 #あやさんに感謝の箱 #岬さんに感謝の箱 #ゑさんに感謝の箱 #じゅーさんに感謝の箱 #あゆちゃんに感謝の箱 #かっこゆさんに感謝の箱 #箱のよみもの #レファヌキ共和国 #レファヌキ共和国の物語

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