
レファヌキ共和国の物語【第17章】
音楽:aya.c 文:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ)
第17章、十三夜の月が傾く頃、店内では……。 このリレー小説は、架空の国のカフェと、月を巡る物語です。 まずはこちらを⬇️ ★まとめ読み用プレイリスト (第1章〜第15章) https://nana-music.com/playlists/3686144 (第16章〜 ) https://nana-music.com/playlists/3708915 ★第1章に、この物語が生まれるまでのエピソードも書かれています。ご一読頂けると嬉しいです。 https://nana-music.com/sounds/061f6d77 ★登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。 ★文章の無断転載は、ご遠慮くださいね。 ★朗読等のコラボの際は、下記のサウンドをご参考の上、キャプションの記載をお願いします(小説本文の転載はNGです) ↓ https://nana-music.com/sounds/065b1067 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 【第17章】 十三夜の店内 「ありがとうございました。またどうぞ」 アルバーラは3人連れの客の会計を済ませ、伸びをした。 十三夜の月が、西の空に傾いている。残っている客は、テラス席のふたりだけだ。 「どう? あのふたり?」 勢い良くドアを開けて入ってきたのは、ジュッティだ。 「いい雰囲気だよ」 アルバーラは笑顔で答えた。ゲンチアナの恋を応援したいと、ジュッティから相談があったのは、昨日の事だ。 「でしょ? 両想いに気づいていないのは、本人達だけなの」 「しかし、あのゲンチアナがねえ」 同じ養護施設で育ったゲンチアナは、アルバーラにとって、妹のような存在だ。常連客であると同時に、大切な友人だ。 「浮いた話が全然無いから、ずっと心配してたよ。うまくいって欲しいね」 「きっと大丈夫よ。ところで、テラス席に案内して、どのくらい経つの?」 「1時間半ってところかな」 「そろそろ店内に呼んだ方がいいんじゃない? ゲンチアナはともかく、ウェイは風邪を引くかも」 「ああ、じゃあ、呼んでもらえる? 熱い珈琲を淹れておくから」 ジュッティは、テラス席へ向かった。アルバーラは珈琲を淹れる準備を始めた。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「《国音》の写しの持ち主は、あなたですか?」 不意に、声を掛けられた。 カウンター席に、華奢な少年が座っている。ドアを開ける音はしなかった。いつ入ってきたのだろう。 「……いらっしゃいませ」 アルバーラは身構えた。《国音》の写し? 「僕は客ではありません。珈琲ではなく、《国音》の写しを頂きたいです」 「……お客様ではないなら、お引き取り下さいな」 アルバーラは、挽いた豆をフィルターに移し替えながら、懐の上から、貝殻をそっと3回叩いた。 「頂けないなら、少しお預かりするだけでもいいですよ」 少年は端正な顔に笑みを浮かべた。アルバーラは寒気がした。 「お預かりしたら、すぐにお返しします。……元の形のままお返しする事は、お約束できませんけど」 「釣り人さん、妙な取引を持ちかけないで頂戴」 入口から声がした。アルバーラも少年も、声の方に視線を送った。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ドアを背にして、シーラは腕組みをしている。 「狩人さん、今日は早い登場ですね。と言う事は、この子が写しの持ち主ですか?」 「あなたに答える必要は無いわね。さっさと出て行った方が身の為よ。この店からも、この国からも」 「そういう訳にいかないんです。仕事をさぼって釣りに精を出していたら、期限がぎりぎりになっちゃって」 少年は肩をすくめた。 「だから、また人質を取らせて頂きました」 突然、テラス席のランプが全て消えた。 「狩人さん、動かない方がいいですよ。あのふたりがどうなっても良ければ別ですけど」 その言葉に、シーラは動きを止めた。 「僕の睨んだところ、持ち主は、この子か、あのふたりのどちらか、ですね」 テラス席へ続くガラス扉が、音もなく開いた。 ジュッティが無表情で入ってきた。釣り竿のような物を手にしている。その後ろを、ゲンチアナと、ウェイが付いてくる。 ゲンチアナは、首に両手を当てて、もがいている。ウェイは片手でマフラーを抱きしめて、片手を首に当てている。 ふたりの首には、糸のようなものが巻き付いている。糸は、ジュッティが手にしている竿のような物から出ている。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「狩人さん、あなた、実体じゃないですね。あなたは影で、この3人に張り付いている」 少年は、アルバーラ、ゲンチアナ、ウェイを順番に指さした。 「つまり、この3人の誰かが、持ち主。そうですね?」 シーラは表情を変えない。だが、青ざめている。 「言っておきますが、弦を切ると、ジュッティさんは怪我をします。下手をすると死ぬかも。僕、ジュッティさんに怪我をさせたくないです。でもね」 少年は、溜息をついた。 「このふたりの首に絡まった弦は、切らずにいると、次第に締め付けが強くなります。僕、出来れば酷い事をしたくないです。写しを渡して下さい」 「何が酷い事をしたくない、だよ。あんた、充分酷い事をしてるじゃないか!」 アルバーラは怒鳴った。少年は目を見開いた。 「ごめんなさい。他に方法が無くて。渡してくれたら、誰も怪我をしません」 「よく恥ずかし気もなくそんな事が言えるね? あんた、最低だよ! 自分が何をしてるか、分かってる? ラヌキの人間は、みんなあんたみたいな奴なの?」 少年は一瞬黙った。そして微笑んだ。 「良く分かっています。僕は最低です。でも、こうするしか無いんです」 微笑みは悲し気に見えた。アルバーラは一瞬、虚を突かれた。少年は、微笑んだまま、アルバーラを見た。 「ラヌキをご存知という事は、持ち主は、あなたですね」 アルバーラは息を呑んだ。 次の瞬間、事態は動いた。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 少年がアルバーラへ手を伸ばした、その刹那。 ウェイがマフラーで、ジュッティの背中を叩いた。 背中を叩かれたジュッティの手から、釣り竿のようなものが離れ、ジュッティは膝から崩れ落ちた。 次の瞬間、シーラが竿のようなものを真っ二つに切断し、ジュッティを抱き止めた。 途端に、ゲンチアナとウェイの首に巻きついた糸は、バラバラになって、床に落ちた。 「……痺れますね。これが《地上の雷》ですか」 少年は微笑んでいるが、汗で額を濡らしている。 「今日は失礼します。仕事は終わりましたから。出来れば次は、実体で伺いたいですね。レファヌキは景色がとても綺麗だ。実体の瞳で見たいです」 そのまま、少年の姿は消えた。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 懐に違和感を感じて、アルバーラは貝殻を取り出した。 貝殻は、粉々になっていた。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「母さん、どういう事なんだ?」 全員が、ウェイを見た。ウェイの声は震えている。瞳はシーラを睨んでいる。 「……母さんって、呼んでくれるのね」 シーラの声は、呟くようだ。 「待って、何が、どうなってるの?」 ジュッティが頭を抱えた。 (第18章に続く) 第18章 十三夜の親子(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062c15dc 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 リレー小説に参加したい方は、第16章以降、枝分かれでお願いします。私は私で、第16章以降、結末まで書かせて頂きます。 詳細は、第15章のキャプションをご覧下さい。 ↓ https://nana-music.com/sounds/06276784 ★コミュニティあります! 「レファヌキ共和国 国立よろず相談所」 https://nana-music.com/communities/1196360 リレー小説用につくりましたが、小説以外のレファヌキサウンドや、外部リンクも、確認できる限り、こちらに格納しています。雑談や感想も大歓迎! よろしければ覗いて下さると嬉しいです! ーーーーーーー 🌖 ーーーーーーー 「レファヌキ共和国の物語」 企画:あーばー https://nana-music.com/users/6071144 https://twitter.com/__a__ba__lalala/status/1443880160004952067?s=21 音楽:aya.c「レファヌキ共和国の曲」 DTM:c https://nana-music.com/sounds/061ed505 フルート:aya(ふえふき) https://nana-music.com/sounds/061f301a リレー小説「レファヌキ共和国の物語」 書き手:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ) https://nana-music.com/playlists/3686144 https://nana-music.com/playlists/3708915 リレー小説企画:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 https://twitter.com/shimizu_hakobe/status/1444445773312057347?s=21 第1章 プロローグ(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 第2章 狩猟月(書き手:ゑ。) https://nana-music.com/sounds/061f769a 第3章 祭り日(書き手:jU''') https://nana-music.com/sounds/061f7f32 第4章 新月前日のカフェ(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f44 https://nana-music.com/users/10478635 第5章 二日月の宵(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/062051a0 第6章 静寂(書き手:(ゆぅ)) https://nana-music.com/sounds/0620ee31 第7章 隠された歴史(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f73 https://nana-music.com/users/10478635 第8章 三日月の夜(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621807c 第9章 半月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621f763 第10章 半月の病院(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06227be6 第11章 半月の劇場・前編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06251e3b 第12章 半月の劇場・後編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06255a5a 第13章 十日夜の王宮(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06259ae8 第14章 十日夜の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0625e153 第15章 十日夜の夢(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06276784 第16章 十三夜のテラス席(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06292959 第17章 十三夜の店内(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062b0a2b 第18章 十三夜の親子(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062c15dc 第19章 十三夜の昔話(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062de89b 第20章 十三夜の歌い手(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062fd07f 第21章 十三夜の雷(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06316bdd 第22章 満月前の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0635136c 第23章 満月前の海岸(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06378303 第24章 満月のライブ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063acfed 第25章 満月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063e3f4f 第26章 満月の広場(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06419ade 第27章 満月の虹(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06445583 第28章 エピローグ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06492327 Special thanks プロローグ設定協力:岬 https://twitter.com/misaki_u_e?s=21 イラスト:たけねこ(第7章設定協力) (朝)https://nana-music.com/sounds/061fd48d (夜)https://nana-music.com/sounds/0620aecf ガイドブック(地理・歴史):蟹蟹クラブ(第8章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0620ce61 「月の子守唄」:(ゆぅ)(第15章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0624ae40 参考サイト アクラネカレンダー「満月カレンダー 2021年10月」 https://www.arachne.jp/onlinecalendar/mangetsu/ 暦生活「月の呼び名」 https://www.543life.com/moonname/ ーーーーーーー 🌘 ーーーーーーー はい。十三夜のお話の続きです。 ……ここで終わると、ジュッティ同様、頭を抱える人が続出しそうな気がするので、更なる続きは、あまり時間を置かずに投稿したいです。 が、「歌なら聴きたいけど、小説はちょっと……」という方々もいらっしゃるようなのですよね。逆に「歌はいいから、小説の続きを早く!」という方々もいらっしゃるようで、この辺、投稿の仕方を迷うところです(アカウント分ければ良いのかもしれませんが……複数アカウントを管理できる自信が無い……)。 歌も多重コーラスも書き物も声劇や朗読も絵も動画も(あと、ネタも笑)、どれも好きなので、バランスを考えつつ、無理のない範囲で、この続きを早めに出します! どうぞお楽しみに!(して頂けると嬉しい) ちなみに、現在、第24章執筆中です。何故か、第25章の方が、先に執筆が終わっている……(笑)。はい、この物語、25章では終わらない事が確定しました(笑)。でも、これ以上プレイリストを分けたくないので、30章以内に収めます!(目標は27章で完結……!) レファヌキ共和国、この物語以外にも、色んなコラボがあります! オリジナル曲や、絵や、ナレーション、ガイドブックに、国旗のコラボもあるんですよ! 是非、皆さんも、この素晴らしい国を探索して、楽しんでくださいね! ★プレイリスト「レファヌキ共和国の音楽と絵画」 https://nana-music.com/playlists/3684932 https://nana-music.com/playlists/3689849 https://nana-music.com/playlists/3744935 ーーー★ーーー ちなみに、私は、この物語以外にも、リレー小説をやっています。ご興味ある方は、のぞいて頂けると嬉しいです。 ★「旅芸人一座の物語」 https://nana-music.com/playlists/3601402 https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★「影のないボクと灰色の猫」 https://note.com/smzhkb/n/n55d4322010ac https://nana-music.com/sounds/05d87982 #cオリジナル #謎設定 #あーばーさんに感謝の箱 #cさんに感謝の箱 #あやさんに感謝の箱 #岬さんに感謝の箱 #ゑさんに感謝の箱 #じゅーさんに感謝の箱 #あゆちゃんに感謝の箱 #かっこゆさんに感謝の箱 #箱のよみもの #レファヌキ共和国 #レファヌキ共和国の物語
