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レファヌキ共和国の物語【第19章】
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第19章、十三夜、30年前の物語に、そっと耳を傾けて。 このリレー小説は、架空の国のカフェと、月を巡る物語です。 まずはこちらを⬇️ ★まとめ読み用プレイリスト (第1章〜第15章) https://nana-music.com/playlists/3686144 (第16章〜 ) https://nana-music.com/playlists/3708915 ★第1章に、この物語が生まれるまでのエピソードも書かれています。ご一読頂けると嬉しいです。 https://nana-music.com/sounds/061f6d77 【登場人物の紹介】(第18章時点) https://nana-music.com/sounds/062c346f ✴︎18章までのネタバレを含みます。 【地名・用語等の紹介】(第18章時点) https://nana-music.com/sounds/062c347f ✴︎18章までのネタバレを含みます。 ★登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。 ★文章の無断転載は、ご遠慮くださいね。 ★朗読等のコラボの際は、下記のサウンドをご参考の上、キャプションの記載をお願いします(小説本文の転載はNGです)  ↓ https://nana-music.com/sounds/065b1067 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 【第19章】十三夜の昔話 「あなた様は、本のお好きな姫君でした。まだ4歳でしたのに、既にひと通りの文字をお読みになる事が出来ました」 ゲンチアナに語りかけるシーラの声に、アルバーラとウェイも、耳を傾けている。 「先の国王陛下は、長い事、お子様に恵まれなかったのです。待望の姫君が、本をお好きだと分かった途端、国立図書館の《ラ塔》を、終日開館とする様に、ご命令を出されたのですよ」 「将来、娘がそこで働くとは、思わなかったんでしょうね」 ゲンチアナは、泣きそうな顔で微笑んだ。 「あの日、私は、先の国王陛下の命で、あなた様を、《ラ塔》にお連れしました。幼かったウェイと一緒に」 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ウェイもまた、本の好きな子どもでした。年齢も近かったからでしょうか。人見知りの強かったあなた様が、ウェイには懐いて下さいました。 あなた様とウェイが、それぞれ大人しく本を読んでいる側で、私は研究資料を探していました。つい、夢中になりすぎて、気が付くと日が沈むところでした。 その日は、ちょうど新月で、日没後に、《レ塔》、つまり、国立科学館で、ハンターの会合があり、大規模な実験が行われる事になっていました。《電灯》という、新しい街灯の試作に、初めて灯りを灯す事になっていたのです。 《電灯》は、夫の夢でした。同時に、私の夢でもありました。夫の研究の専門は《電気》だったのです。《電気》とは、《音》に干渉する方法のひとつで、《地上の雷》と呼ばれているものです。 私は、本に夢中のあなた様とウェイに、声を掛けて、図書館を出ようとしました。 その途端、大きな音と共に、塔全体に振動が走りました。 立っている事が出来ないくらいの振動でした。灯されていた灯りは全て消え、ありとあらゆる書棚から本が落ちて散乱しました。私は慌てて、あなた様とウェイに覆い被さりました。 振動が収まった途端、目の前に、エイブが影を飛ばしてきました。 「《ファ塔》と《レ塔》が失われた。国王陛下も王妃殿下も、お亡くなりになった。ハンターの生き残りは、シーラ、お前と私だけだ」 私は、事態が呑み込めませんでした。だけど、返事をする時間も惜しい事はわかりました。 すぐに結界を張り、あなた様とウェイをその中に隠し、私はエイブの元へ向かいました。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「僕がいつも見る夢だ……」 ウェイが、呆然と呟いた。 「どこか狭い所で、僕は女の子とふたりで震えてる。外では恐ろしい事が起きている。すごく怖い。だけど女の子は大切な友達で、僕より小さい。僕はその子を護らなくちゃって思う」 ゲンチアナは、涙の溜まった瞳で、ウェイを見つめた。ウェイも、ゲンチアナを見つめ、呟いた。 「その子は、僕の空想上の友達だと、ずっと思っていたよ……」 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 《レ塔》と《ファ塔》は、土台を残して、跡形も無くなっていました。 エイブはタークネク広場の中央で、湖を睨んでいました。湖の上には巨大な蛇のような物が、とぐろを巻いていました。それは、微細な《音》の集合体でした。 「『あれ』が、竜巻となって、《レ塔》と《ファ塔》を呑み込んだ」 エイブは、額から出血し、肩で息をしていました。 「だが、《レ塔》が飲み込まれる瞬間、コベニアが……妻が、《電灯』を点灯させた。《電灯》に照らされた途端、《ラ塔》へ向かう『あれ』の勢いが弱まった。次の瞬間、妻は《電灯》で俺を照らし、そのまま、他のハンターたちと共に、塵となり、跡形も無く、消えた」 私は何も言えずに、集合体に目を凝らしました。 「《電灯》は失われた。《音》には《音》で対抗するしかない。出来るな?」 「はい。私の専門ですから」 私は、《国音》を使って、竜巻を中和しました。でも、その代償は大きかったのです。 ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ 「後から分かった事ですが、竜巻の中心には、ラヌキの偽王が居ました。偽王を囲んでいた《音》の粒子は、偽王に抵抗し、姿を変えられたフィッシャーマン達の、成れの果てでした。私が使った《国音》は、フィッシャーマン達を消滅させ、偽王は《国音》を吸収して、ラヌキへ逃れました」 全員が固唾を飲んだ。 「結果的に、私のした事で、レファヌキから《国音》が失われました。国の空気を構成する物質が変質し、レファヌキは崩壊の危機にありました」 シーラは俯いたまま、言葉を続けた。 「私とエイブは崩壊を食い止めるために、国全体に結界を張り、国中の人間を眠りにつかせ、3年をかけて、空気を作り替えました。3年後、国民は目を覚まし、何事もなく生活を始めました。誰も、ラヌキの襲撃の事も、国王陛下の事も、覚えていませんでした」 そこで、シーラは一度言葉を切り、ウェイを見た。その後に続く言葉は、呟くようだった。 「3年ぶりに家に戻ったら、夫は眠ったまま亡くなっていました。彼が発案した《電灯》が、国を救った事を、知らないまま」 ウェイは、強く両手で握り拳を作った。その拳を、ゲンチアナが両手で包んだ。 (第20章に続く) 第20章 十三夜の歌い手(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062fd07f 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 ~~ ✴︎ ~~ 🌙 リレー小説に参加したい方は、第16章以降、枝分かれでお願いします。私は私で、第16章以降、結末まで書かせて頂きます。 詳細は、第15章のキャプションをご覧下さい。  ↓ https://nana-music.com/sounds/06276784 ★コミュニティあります! 「レファヌキ共和国 国立よろず相談所」 https://nana-music.com/communities/1196360 リレー小説用につくりましたが、小説以外のレファヌキサウンドや、外部リンクも、確認できる限り、こちらに格納しています。雑談や感想も大歓迎! よろしければ覗いて下さると嬉しいです! ーーーーーーー 🌖 ーーーーーーー 「レファヌキ共和国の物語」 企画:あーばー https://nana-music.com/users/6071144 https://twitter.com/__a__ba__lalala/status/1443880160004952067?s=21 音楽:aya.c「レファヌキ共和国の曲」 DTM:c https://nana-music.com/sounds/061ed505 フルート:aya(ふえふき) https://nana-music.com/sounds/061f301a リレー小説「レファヌキ共和国の物語」 書き手:清水はこべ・岬・ゑ・jU'''・香魚・(ゆぅ) https://nana-music.com/playlists/3686144 https://nana-music.com/playlists/3708915 リレー小説企画:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 https://twitter.com/shimizu_hakobe/status/1444445773312057347?s=21 第1章 プロローグ(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/061f6d77 第2章 狩猟月(書き手:ゑ。) https://nana-music.com/sounds/061f769a 第3章 祭り日(書き手:jU''') https://nana-music.com/sounds/061f7f32 第4章 新月前日のカフェ(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f44 https://nana-music.com/users/10478635 第5章 二日月の宵(書き手:清水はこべ・岬) https://nana-music.com/sounds/062051a0 第6章 静寂(書き手:(ゆぅ)) https://nana-music.com/sounds/0620ee31 第7章 隠された歴史(書き手:香魚) https://nana-music.com/sounds/06495f73 https://nana-music.com/users/10478635 第8章 三日月の夜(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621807c 第9章 半月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0621f763 第10章 半月の病院(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06227be6 第11章 半月の劇場・前編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06251e3b 第12章 半月の劇場・後編(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06255a5a 第13章 十日夜の王宮(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06259ae8 第14章 十日夜の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0625e153 第15章 十日夜の夢(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06276784 第16章 十三夜のテラス席(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06292959 第17章 十三夜の店内(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062b0a2b 第18章 十三夜の親子(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062c15dc 第19章 十三夜の昔話(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062de89b 第20章 十三夜の歌い手(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/062fd07f 第21章 十三夜の雷(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06316bdd 第22章 満月前の監獄(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/0635136c 第23章 満月前の海岸(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06378303 第24章 満月のライブ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063acfed 第25章 満月の図書館(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/063e3f4f 第26章 満月の広場(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06419ade 第27章 満月の虹(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06445583 第28章 エピローグ(書き手:清水はこべ) https://nana-music.com/sounds/06492327 Special thanks プロローグ設定協力:岬 https://twitter.com/misaki_u_e?s=21 イラスト:たけねこ(第7章設定協力) (朝)https://nana-music.com/sounds/061fd48d (夜)https://nana-music.com/sounds/0620aecf ガイドブック(地理・歴史):蟹蟹クラブ(第8章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0620ce61 「月の子守唄」:(ゆぅ)(第15章設定協力) https://nana-music.com/sounds/0624ae40 参考サイト アクラネカレンダー「満月カレンダー 2021年10月」 https://www.arachne.jp/onlinecalendar/mangetsu/ 暦生活「月の呼び名」 https://www.543life.com/moonname/ ーーーーーーー 🌘 ーーーーーーー この第19章は、ずっと書きたかったシーンのひとつです。ようやく投稿できました……。長かった……。 実は、第9章を書いていた時には、既に、第16章から続く十三夜の話が、密かに出来ていたのですが、何せ、リレー小説として始まった物語。このシーンを書けるかどうかは、その時点では、全く予想ができず。 枝分かれを宣言させて頂くまで、全て没にする事も、覚悟していましたが、こうして読んで頂く事が出来て、すごく嬉しいです。 対して、次回、第20章は、一番、苦戦した章です。今も校正中ですが、頑張って出しますので、読んで頂けると嬉しいです。 今の所、この物語は、第27章で完結を予定しています。途中、長くて分割を迷う章もあるのですが、基本、分割せずに行こうと思ってます(その代わり、無駄な所は削れるだけ削って、密度濃くいきます)。 しかし、全章、初稿は上がっているのですが、校正とキャプション書きに、結構時間がかかるので、なかなか早いペースでは出せないです……。無理のない頻度で出していきますね。 レファヌキ共和国、この物語以外にも、色んなコラボがあります! オリジナル曲や、絵や、ナレーション、ガイドブックに、国旗のコラボもあるんですよ! 是非、皆さんも、この素晴らしい国を探索して、楽しんでくださいね! ★プレイリスト「レファヌキ共和国の音楽と絵画」 https://nana-music.com/playlists/3684932 https://nana-music.com/playlists/3689849 https://nana-music.com/playlists/3744935 ーーー★ーーー ちなみに、私は、この物語以外にも、リレー小説をやっています。ご興味ある方は、のぞいて頂けると嬉しいです。 ★「旅芸人一座の物語」  https://nana-music.com/playlists/3601402  https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★「影のないボクと灰色の猫」  https://note.com/smzhkb/n/n55d4322010ac  https://nana-music.com/sounds/05d87982 #cオリジナル #謎設定 #あーばーさんに感謝の箱 #cさんに感謝の箱 #あやさんに感謝の箱 #岬さんに感謝の箱 #ゑさんに感謝の箱 #じゅーさんに感謝の箱 #あゆちゃんに感謝の箱 #かっこゆさんに感謝の箱 #箱のよみもの #レファヌキ共和国 #レファヌキ共和国の物語

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