
Am roop|クールの誕生【旅芸人一座の物語〜第13話】
こと|ピチカート・ファイヴ Pizzicato Five【企画:エリス羽衣 書き手:清水はこべ(箱)】
旅芸人一座の物語、第13話。王弟と黒髪美女の一夜と、Pizzicato Fiveのクールな曲を、お洒落トラックに乗せて。 企画は、エリスさんです。エリスさんと私のふたりで、物語をイメージした歌を歌い、1シーンを読み物としてキャプションに記載します。 歌はピチカート・ファイヴの「クールの誕生」です。これまた大好きな歌ですが、例によって、nanaには伴奏がありません。 今回は、ことさんのお洒落なオリジナル曲「Am roop」に、チョモランマさんの超絶ベースと、なをさんと宵さんのセクシーなコーラスが載せられた、贅沢なトラックに、マッシュアップで載せました。ことさん、チョモランマさん、なをさん、宵さん、ありがとうございます!! ボーカルはエリスさんと私です。エリスさんはこの歌をご存知無かったのに、私の我儘なリクエストにお答え下さり、このコラボの為にわざわざ覚えて、交互歌唱で歌って下さいました。エリスさん、ありがとうございます!! 今回の物語は、エリスさんのお書きになった、第6話、第10〜12話(ミカ姐さんの所に忍ぼうとした、不届き者の話)と、同じ時間軸の話です。 エリスさんのお話に出てきた「文官室室長代理補佐」が呼びたがっていた「黒髪美女」目線のお話なので、第6話、第10〜12話も合わせてお読み頂くと、一層楽しめるかと思います。 ✴︎第6話「カサブランカ・ダンディ」 https://nana-music.com/sounds/060c837a ✴︎第10話「うっせえわ」 https://nana-music.com/sounds/0622b582 ✴︎第11話「真夏の夜の夢」 https://nana-music.com/sounds/0622f7f9 ✴︎第12話「口琴コンチェルト Another side」 https://nana-music.com/sounds/062336a4 密かに、絵師さんゆるく募集中です。画像コラボしてくださる方がいらしたら、ふたりとも、小躍りして喜びます!!! 以下、読み物を掲載します。長文ですので、ご興味無い方は、飛ばして下さいね。 ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:エリス羽衣 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402 ② https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ(エリスさん作成) https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 第13話「Am roop|クールの誕生」 書き手:清水はこべ(箱) ボーカル:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 王宮の文官室に勤める文官室室長代理補佐は、宴で踊っていた美女を褥に呼びたく、座長に申し入れるも断られる。 『彼女は王弟である軍司令官のお召しをいただきました』 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「間近で見ると、随分と年増だな」 顔を上げた途端、そんな言葉を掛けられ、シルバーナの頬は紅潮した。 「何だって? ……あ、いいえ、何ですって。おっしゃいます事ね」 「ほう、血の気も多いと見える」 王弟の視線には熱が無い。寝所に女を呼んだというのに。 シルバーナは、無意識にこめかみに手を当てた。近頃、自慢の黒髪に混じって、こめかみから何本か白髪が生える。丁寧に抜いてきた筈だが。 「お気に召さないなら、他の子をお召し下さいな」 紅を重ねた唇を歪ませたシルバーナに、王弟は、にやりとした。 「率直だな。面白い」 「は?」 「少し話がしたい。下々の話を直接聴ける機会は、なかなか無いのでな」 シルバーナは王弟を見つめた。鍛えあげられた体躯。体躯と不似合いに整った顔立ち。 「寝所にお召しになったのに、話がしたいなんて。貴方様は変わってらっしゃいますね」 「変わっている?」 王弟の笑顔が皮肉めいた。 「そうだな、私は、変わり種だ。聞こえない声を聴く事も、夢の中で自由に誰かと会う事も出来ぬからな」 「……出来ないのが、普通ですよね?」 「下々の者はそうであろう。王家は違う。王家の源流は『山の民』の祖先だ。彼らは魔法力が高い」 「『山の民』って、お伽話の?」 シルバーナは幼い頃を思い出して、顔をしかめた。よく、母親に怒鳴られたものだ。「悪い子には『山の民』の天罰が下るよ」と。 「……下々の間では、『山の民』は、既に伝説と化しているのだな。『山の民』は、アルト国の別名だ」 「アルト国?」 「アルト国は、アルト山の山頂に実在する。成程、国交が断絶して100年以上が経つと、かように忘れ去られてしまうのだな」 シルバーナは呆気に取られた。 アルト山は国境に位置する山だ。山頂は切り立った崖の上だ。人が登れるような場所では無い。まして、国があるなど、想像もつかない。 「じゃあ、王家の方々は、みんな魔法が使えるんですか?」 「『山の民』ほどでは無い。だが、妙に感の鋭い者や、正夢をよく見る者の割合が、下々の者よりは多い」 「貴方様も?」 「私は出来損ないだ。予知も夢見も出来ぬ。心の声を聴く事もない。……しかし」 王弟は薄く笑った。 「人間は言葉を使う。分からない事があれば尋ねれば良い。尋ねても答えが返って来ないなら、相手を観察すれば良い。そうは思わぬか?」 「まあ、そうですね」 「夢で人に会わずとも、自分の足で人に会いに行けば良い。危機を予知出来ずとも、常に備えれば良い。どうしても魔法が必要ならば、使える者を配下に置けば良い」 王弟の声が奇妙な熱を帯びる。 「魔法に拘り、古い慣習に縛られるのと、魔法など使わずとも、自らの手で新しい道を開くのと、どちらが国の為になるだろうか」 「魔法ねえ……。あれば便利かもしれませんけど」 シルバーナの口調は、若干投げやりだ。 「王家の皆さんは、親に売られた事も無いでしょうし、自分を売った親の面倒を見る為に、体を売る必要だって無いでしょう。魔法が使えなくたって、困りゃしないでしょ」 シルバーナの言葉に、王弟は大きく目を開き、そして、にやりと笑った。 「成程。お前は面白い」 「……そりゃどうも。貴方様も、相当面白いですけどね」 シルバーナの声は尖る。 「私が?」 「面白いって言うか、やっぱり変わってらっしゃいますよ。そもそも、何故、あたしをお召しになったんですか?」 「お前が二番手だからだ」 「……二番手だから、ですって?」 シルバーナは真っ赤になった。声が震える。 「お前は一番手の拍手の大きさに、一瞬、悔しそうな顔を見せた。だから私は、お前を呼ぶ事にした」 「……そりゃ、若い時に比べたら、高くは跳べませんよ。脚だって少しずつ上がらなくなってきてます」 シルバーナの瞳が昏く光った。 「でもね、体が動く内は、あたしは一番拍手を貰う事を、諦めませんよ」 「その様だな」 不意に抱きすくめられ、シルバーナは混乱した。王弟はシルバーナの耳元で囁いた。 「私は野心のある人間が好きだ。率直な女も好みだ」 シルバーナは混乱したまま、王弟に身を委ねた。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 空が白んできた。 シルバーナは疲れ果てて眠っている。 ——ある程度は目を瞑る。だが、風紀の乱れは、程々に頼む。音楽と踊りは、王妃の楽しみだ。嫌な話を耳にさせて、彼女の楽しみを奪う事の無い様に。 王の言葉が、王弟の耳に蘇る。 「風紀の乱れか。笑わせる」 独り言に、シルバーナは目を覚ました。 「いけない、夜が明ける……お暇しますよ」 「下がるが良い。もうお前を呼ぶ事は無いだろう」 シルバーナは、咄嗟に言葉を返せなかった。 「私は、一番手には興味が無い。そして、一番手を目指しながら、いつまでも二番手に甘んじる者は嫌いだ」 一瞬の沈黙の後、シルバーナは胸を張って答えた。 「……ええ、一番手になってみせますとも。呼ばれたって、お断りしますとも」 この夜を、一生忘れないだろうと思いながら。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ ★この物語を気に入って下さる方がいらっしゃいましたら、コメント頂ければ、続きを投稿次第、一斉通知をお出しします。 次回第14話も、多分、書き手は私が担当します。物語は執筆済み。最近歌う時間がなかなか取れずにいるのですが、どうにか頑張ります……! エリスさんも続きを鋭意執筆中の模様! ふたりで打ち合わせをしながら、続きの展開を、かなり先の方まで詰めています。サウンドもあれこれ相談しながら進めてます。お楽しみに! ✴︎投稿順続き(諸事情あり、エリスさんのターンです) 第14話「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」 https://nana-music.com/sounds/062ce5c3 ✴︎時系列続き 第3話「天体観測」 https://nana-music.com/sounds/05fd857f ★最近、別の物語のリレー小説も始めてしまいました! よろしければ、こちらも覗いて下さると嬉しいです! 「レファヌキ共和国の物語」 ✴︎まとめ読みプレイリスト https://nana-music.com/playlists/3686144 ✴︎コミュニティ 「レファヌキ共和国 国立よろず相談所」 https://nana-music.com/communities/1196360 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「Am roop|クールの誕生」 【旅芸人一座の物語〜第13話】 ★音楽 ことのね「Am roop」 作曲:ことのね DTM:ことのね https://nana-music.com/sounds/04cdc5fa ベース:チョモランマ名古屋 https://nana-music.com/sounds/04cde655 コーラス・コーラス歌詞:縞猫nawo(なを) https://nana-music.com/sounds/04ce64a9 コーラス:宵 https://nana-music.com/sounds/04ce6f03 ピチカート・ファイヴ「クールの誕生」 作詞・作曲:小西康陽 原曲歌唱:野宮真貴 ボーカル・コラボパート分け:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/06287b01 ボーカル:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/06285784 ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) https://nana-music.com/playlists/3601402 https://nana-music.com/sounds/061cd18e (第13話書き手:清水はこべ(箱) #旅芸人一座の物語 #ことさんに感謝の箱 #チョモランマさんに感謝の箱 #なをさんに感謝の箱 #宵さんに感謝の箱 #エリスさんに感謝の箱 #箱のよみもの #箱のまっしゅあっぷ #箱の中のピチカートファイヴ
