
フクロウ 〜フクロウが知らせる客が来たと〜【旅芸人一座の物語〜第14話】
KOKIA
リレー小説【旅芸人一座の物語】第14話です。 物語の時系列としては 第5話「M氏の幸福」の続きになります。 https://nana-music.com/sounds/060c0969 以下、過去作品の紹介からあらすじ紹介まで、 はこべさんのキャプションを転載します。 その後、物語になりますのでお楽しみください♪ ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※作中の登場人物は全て架空の存在です。 nana上のフレンドさんからお名前はお借りしている部分もありますが、性格その他全くの創作です。 ご了承ください。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:エリス羽衣 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402 ② https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 旅芸人一座の物語 第14話「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」 書き手:エリス羽衣 ボーカル:エリス羽衣 ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 何も知らない、貴族の少女アコベールは、一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、エリージャもまた、アコベールの無邪気さに癒される。 一座が王宮を去る日、馬車の荷台に隠れて、こっそりエリージャについて行こうとしたアコベールだったが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。 一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。 炎を逃れた二人は、老医師ミムルドの元を訪れる。 二匹の愛猫がアコベールに懐く様を見たミムルドは、アコベールの後ろ盾になる事を約束し、エリージャは一座へ戻るべく、ミムルドの屋敷を立ち去ろうとしていた。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 夜の森は苦手だ。 どうしても、昔のことを思い出してしまうから。 ミムルド師に礼を言い、 エリージャはもと来た道を戻っていた。 先ほどの薬草茶のおかげで体は辛くないが、 心のほうは安定しているとは言い難かった。 アコベールの屋敷の火事のせいだ。 まるで、10年前の自分の身に起きたことを なぞっているかのような。 ホー ホー フクロウの声にギクリとして暗闇の中、目を凝らす。 (違う。あれは、ただのフクロウだ… ここは禁断の森じゃない。しっかり、落ち着いて…) ゆっくりと慎重に馬を御しながら、 エリージャの心は過去に彷徨い出していった。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 熱かった。 刺すように熱い空気が渦巻いていて、目も喉も痛い。 「お母様!お母様!」 炎の間を走り抜け外へ飛び出す。 (あっ) 燃えていたのは、母屋だけではなかった。 神殿のほうも、赤々と火柱が上がっている。 「ウィーラ!」 母の声が聞こえた。 大慌てで走って来た母に抱きしめられた――かと 思いきや背中を何度も叩かれる。 「燃えてるじゃないの!」 どうやら寝間着と髪の毛に火が付いていたらしい。 母の手で火は消し止められ、 髪の毛が焼けるイヤな匂いが残った。 「お母様、何があったの?」 「ウィーラ。いいこと、今すぐ神殿の向こうの森へ 逃げなさい。森の奥へ入るのよ。行けるところまで」 驚くウィーラに、厳しい顔で母は続けた。 「神殿の火事は不始末ではあり得ない。 何者かに攻撃されているの。 何が狙いなのか分らない。あなたは逃げなさい」 「でも」 異を唱えようとしたとき、 ゴオッという音と共に黒煙が渦巻いてきた。 「いそいで。…大丈夫、あとからお母様も行きます。 今すぐ行きなさい!」 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ (森の奥へ入るのよ。行けるところまで) ウィーラは無我夢中で森の奥へと入っていった。 裸足なので足が痛い。背中も痛い。 どうやら火傷をしているようだ。 くたびれていたが、足を止めるのが怖かった。 ホー ホー (あっ!) 白いフクロウの顔が、 月明かりの中にボウッと浮かんで見えた。 (しまった、禁断の森に入っちゃってる!) 白いフクロウは禁断の森の番人だ。 みつかってしまったら、とらわれて戻れない、 と言われている。 バサバサバサ。 羽音と共に、新たに一羽フクロウがやってきた。 恐怖のあまり走り出しそうになったウィーラの脳裏に、 父の声がよみがえる。 『禁断の森に入ってしまったときには、 決して走って逃げてはいけないよ』 『歌を歌うのだよ。お前の声には、光がある。 フクロウは、光には近づけない』 『歌いながら、ゆっくり禁域から出るのだ。 出口が分らないときは、朝の光が差すまで 歌い続けるのだよ』 歌うことは好きだった。 けれども、こんな恐ろしいときに声が出るだろうか。 バサバサバサ。 最初のフクロウが木から木へ移動した。 少し近寄ってきたのだ。 震えながら、ウィーラは息を吸い込んだ。 ♪~ か細いながらも、なんとか声が出た。 そろりそろりと後じさりながら歌い続ける。 フクロウは動かない。 このまま逃げられるかも、と思ったそのとき。 「きゃああーっ!?」 木の根っこにつまづいて背中から転んだ。 さらに悪いことに倒れ込んだ先が斜面になっていて、 そのまま滑り落ちる。 「あああーーっ!」 背中が燃えるように熱い。 火傷していた皮膚に、 まるで香辛料でも刷り込まれたようだ。 (痛い!熱い!お母様、助けてお母様!) 背中だけでなく、左の足首も痛い。 転んだときに捻ったようだ。 わっと泣き出しそうになったウィーラの耳に、 バサバサバサ、という羽音が届いた。 (う、歌わなきゃ…) ♪~ 涙がポロポロこぼれてくる。 けれどもウィーラは歌い続けた。 何度も何度も、同じ歌を。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ お読みいただきありがとうございました! 後半に続きます🙇♀️ 「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」の演奏は りいちゃさん 橙さん Miecoさん ありがとうございました! Miecoさん橙さんのフクロウでは以前にも歌わせていただいてるのですが、りいちゃさんの音が入ることでより一層森の奥感、フクロウ感があってとっても妖しくて素敵✨✨🦉🌲🦉🌲✨✨ 「フクロウ」の歌で禁断の森とフクロウを、そして最後にウィーラの歌声をイメージして「羽化」をマッシュアップしました。 「羽化」はガンダムの歌だそうで、ガンダムファンの方からすれば、はあ!?って感じなのかもしれませんが、 私はnanaで初めてこの曲に出会って惚れてしまったのです。お許しくださいね🙏💦 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」 【旅芸人一座の物語〜第14話】 ★音楽 KOKIA 「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」 作詞:KOKIA 作曲:KOKIA 大塚宗一郎「羽化」 作詞:岩里祐穂 作曲:菅野よう子 オーボエ、コントラバス、ホイッスル:りいちゃ https://nana-music.com/users/831399 フルート:橙 https://nana-music.com/users/8820654 ピアノ:Mieco https://nana-music.com/users/4636770 歌唱「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」エリス羽衣 歌唱「羽化」エリス羽衣 マッシュアップアレンジ:エリス羽衣 ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) (第14話書き手:エリス羽衣) #旅芸人一座の物語 #短調三拍子愛好会 #橙 #フルート伴奏 #コラボ歓迎 #フクロウが知らせる客が来たと #KOKIA #ピアノ #BGM #季節を感じる曲 #りいちゃインストコラボ #橙さんとエリス #Miecoさんとエリス #りいちゃさんとエリス #エリス2021の11 #エリスKOKIA
