
M氏の幸福〈vo. elith〉【旅芸人一座の物語〜第5話】
遊佐未森【企画:elith 書き手:清水はこべ(箱)】
はい。リレー小説のお時間です! 待っていて下さった方、お待たせしました!!! 「……え? 小説?」って方は、エリスさんの美しい歌をお楽しみ下さい。私もコーラスを頑張りましたので、聴いて頂けたら嬉しい! 企画はelithさんです。elithさんと私のふたりで、物語をイメージした歌を歌い、1シーンを読み物としてキャプションに記載します。 このサウンドに掲載しているのは、第5話です。第1話から第4話は、下の方にリンクを貼りますので、ご興味ある方は是非!!(各サウンドのコメント欄も読んで頂くとより楽しめるかも!) 物語は、王宮に招かれた旅芸人一座のお話です。スリルとサスペンスに彩られた活劇長編……です、多分。 物語の展開が予測出来ないのは、リレー小説ならでは! ふたりそれぞれ、書きたいところから書きたいように進めているので、どんなお話になるのか、我々も楽しみです! 今回の歌は、遊佐未森さんの隠れた名曲「M氏の幸福」。美しいボーカルは、elithさんです。 elithさんが歌っているのは1番歌詞です。そこに私が2番歌詞を、マッシュアップのコーラスで載せました。強引なコラボですが「腕に銀猫 肩に黒猫」で始まる2番は、この物語とリンクしていると思いますので、ご容赦を……! 素晴らしい伴奏は、なおはっぷさん。実はこの伴奏、elithさんのリクエストで、なおはっぷさんが作って下さったんですよね! 私も大好きな歌で、nana開始当初から後コラボに入れているのですが……難曲すぎて、まだ歌えていません。未森さんのお歌って、高音が注目されがちですが……Aメロ、どうしてこんなに低いんですか……。リズムも難しすぎる……! 実は、文章はずいぶん前に書いてましたが、コーラスに難航して、投稿が遅くなってしまって……。まだまだ課題は多いのですが、第4話の投稿からひと月以上空いてしまったので、いい加減に投稿します。リベンジは……いつか、ボーカルコラボで……。 密かに、絵師さんゆるく募集中です。画像コラボしてくださる方がいらしたら、ふたりとも、小躍りして喜びます!!! 以下、読み物を掲載します。長文ですので、ご興味無い方は、飛ばして下さいね。 ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:elith 書き手:elith・清水はこべ(箱) 第1話「Lemon【王宮風】」書き手・歌唱:elith https://nana-music.com/sounds/05f4a4a0 第2話「Lemon【-2】」書き手・歌唱:elith https://nana-music.com/sounds/05fbd904 第3話「天体観測」書き手・歌唱:elith https://nana-music.com/sounds/05fd857f 第4話「Rapturous Blue【王宮風】」書き手・歌唱:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/06006270 ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402 ② https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ(elithさん作成) https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 旅芸人一座の物語 第5話「M氏の幸福」 歌唱:elith 書き手・コーラス:清水はこべ(箱) ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 何も知らない、貴族の少女アコベールは、一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、エリージャもまた、アコベールの無邪気さに癒される。 一座が王宮を去る日、馬車の荷台に隠れて、こっそりエリージャについて行こうとしたアコベールだったが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。 一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。 炎をかいくぐり、屋敷の蔵に潜入した2人は、アコベールの父の書棚に、一通の封書を見つける。 エリージャが長年探していた印の刻まれた封書を……。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「しばらくは目を覚まさぬよ」 かつて「奇跡のミムルド」という名で、国中の評判を集めた医師は、ソファで眠る少女に目を向けた。 「先ほど飲ませた薬草茶には、安眠の効果がある。過酷な一日だったろう。この子には眠りが必要だ」 ミムルドの髪にも口髭にも、白いものが増えているが、眼光は、昔と変わらず鋭い。 「ええ」 エリージャは短く答えた。歌い手とは思えないほど、声が弱々しい。 炎に包まれたアコベールの屋敷から、山間のミムルドの家にたどり着くまでに、力を使い過ぎた。消耗が激しい。 アコベールは深く眠っている。その足元では、二匹の猫が丸くなっている。 数時間前の事が嘘のような、平和な情景。 「そなた、私に話があるのではないか?」 「……はい」 エリージャは、懐から、封書を取り出した。 「これは?」 「この子の父、ステラリア伯爵の書棚にあった書き付けです。しばらく、預かっては頂けませんか?」 「中を確かめたか?」 「いいえ、その時間はありませんでした」 「何故、一座へ持ち帰らない?」 「……封書のその印は、十年前、私の屋敷の廃墟で見つかった、馬の鎧に刻まれた印と、同じ物です」 「何だと」 普段、動揺を表す事の少ないミムルドが、目を見張った。 「もしかしたら、この子の父は、私の仇かもしれません……。いえ、ここに書かれている事を確かめない限りは、分かりません」 エリージャの声が震えた。 「確かめる時間が無かったのは本当です。でも、それ以上に、確かめたくなかったのです。私は、……この子を憎みたくない」 ミムルドは黙り、しばらくの沈黙の後、口を開いた。 「静かに余生を送りたい。私の望みはそれだけなのだよ、エリージャ。もう、王宮とも一座とも、その他の厄介事とも、一切関わりを持ちたくない。それは、知っておろう?」 「ええ、存じております」 「では、何故この子を私の元に連れてきた?」 「ウーカとネオアルプが味方する者を、貴方はお見捨てになりません」 ミムルドはもう一度黙り、ソファに視線を移した。深く眠るアコベールの足元には、銀猫のウーカと、黒猫のネオアルプ。 今まで、二匹の愛猫が、ミムルド以外の者に懐く事は無かった。エリージャを除いては。 「短い時間ですが、私はこの子と過ごし、確信していました。ウーカとネオアルプは、必ずこの子に味方するだろうと。この子は、そういう子です」 老医師は、歌い手に視線を戻した。 「いかにも。ウーカとネオアルプが味方するならば、私がこの子の後ろ盾になろう。だが、エリージャ、そなたはそれで良いのだな?」 「はい」 「この子の父が、そなたの仇であっても、同じ事が言えるな?」 エリージャは目を閉じた。 自分の髪を撫でる、父の大きな掌。自分の名を呼ぶ、母の笑顔。 少しの沈黙の後、エリージャは、目を開けて、ミムルドを真正面から見つめた。 「はい。この子を憎む事は、私自身を憎む事に他なりません」 「よかろう」 ミムルドは微かに笑った。 「封書は預かる。一座に戻るが良い。そなたが飲んだ薬草茶も、そろそろ効き目が出て来る頃だ」 エリージャは、はっとした。体力が戻っている。先程まで、話をするのも大儀なくらい疲労が激しかったのに。 「そなたがここに立ち寄った事は、早晩、一座には伝わるだろう。座長に伝えよ。『賢者の力が必要であれば、一度だけ手を貸す』と」 「ありがとうございます」 「礼は良い。急いで行くが良い」 エリージャは、立ち上がり、眠るアコベールの傍に立った。 少女は目を覚ます気配がない。 「さようなら」 ちいさく呟き、エリージャは踵を返した。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ ★続きはこちらです。 ✴︎投稿順続き(時間軸、少し巻き戻ります) 第6話「カサブランカ・ダンディ」 書き手:elith 歌唱:ボーカルelith コーラス清水はこべ(箱)・elith https://nana-music.com/sounds/060c837a ✴︎時系列の続き 第14話「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」 書き手:エリス羽衣 ボーカル:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/062ce5c3 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ M氏の幸福〈vo. elith〉 【旅芸人一座の物語〜第5話】 ★音楽 遊佐未森「M氏の幸福」 作詞:工藤順子 作曲:外間隆史 原曲歌唱:遊佐未森 伴奏:なおはっぷ https://nana-music.com/sounds/049d595d 歌唱:elith https://nana-music.com/sounds/049dec71 コーラス:清水はこべ(箱) ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:elith https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:elith・清水はこべ(箱) (第5話書き手:清水はこべ(箱)) #旅芸人一座の物語 #箱のよみもの #箱のまっしゅあっぷ #箱の中の遊佐未森さん #エリスさんに感謝の箱 #なおはっぷさんに感謝の箱 (自分メモ:エフェクトなどの記録) https://nana-music.com/sounds/060bfdf1
