nana

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「わたしを殺さないで」 というインパクトのあるタイトルの曲です。 前回の「海の時間」もそうですが、 にわとりのとさかさんの演奏がガイド入りなので、 メロディを少なめにコーラスメインにしました。 今日も今日とて、つづきです。 もう金曜日! 行動制限解除になりました🙌 脱濃厚接触者✨ PCRもずっと陰性でしたので、 ありがたいことに感染せずに済みました。 今日は、内容上ふたつに分けずに 1章にしてあります。 なので、少し文量が多いですが 会話文なので多少読みやすいかも…。 お読みくださりお聴きくださり ほんとにありがとうございます🙇‍♀️ いただいたコメント全て 励みにさせていただいております。 過去作の返信遅れててすみません🙇‍♀️💦 もう早く脱稿してしまいたいのに 推敲と最終話に命削ってます。 読んでいただいた方の心に残る物語に なりますように🙏✩.*˚ 貴重なお時間を ほんとうにありがとうございます🙇‍♀️ それでは、本編参ります。 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼ 🐟さかなの言葉7    それからしばらくして、事もあろうに別れた恋人がアパートに押し掛けてきた。  どうやって住所を知ったかとか、そんなことにはまるで答えず、ただ自分の気持ちを押し付けるだけで、それでも私が首肯しないと下手に出て懇願した。 “うをお” は静かに窓際に座って有り様を傍観していた。  彼はさんざんゴネて、それでも私の気持ちが変わらないと、こんな奴と幸せになれるもんか、と捨て台詞を残して帰っていった。 「ごめんね、“うをお”」  さぞ嫌な気分だったろうと思うと、申し訳なく切なかった。  部屋の空気が重過ぎて、私は“うをお” を海岸へ散歩に誘った。 「あの人と行かなくてよかったの?」  いいの、と私は波を足先で散らした。 「僕よりずっと、みめを愛してるって、ちゃんと言葉にしてたよ」 「取られたオモチャを、欲しくないのに取り返そうとしてる子どもと同じよ。あの人は言葉を力まかせに振り回すの。取り返したら、その言葉はみるみる錆びた鉄のように崩れていくの」  海辺の“うをお” は晴れ晴れとしていた。  初夏の日差しに熱された砂は熱く、私たちは靴を脱ぎ、波を足で蹴ってふざけた。 「海はいいね。 “うをお” と一緒なら海の底に住んだっていい。鯨のお腹の中だって天国だよ」  その言葉を、“うをお” は軽く笑って去なした。 「それは嘘だ。みめは海の底では息ができないし、鯨の腹の中は臭くて住めたもんじゃないな」 「これは比喩だもの。そのくらい思ってるってことよ」 「だとしても、僕は鯨の腹はごめんだよ」 「どこだったらいい?」 と訊ねると、また黙り込む。  しばらく置いて、“うをお” は口を開いた。 「言葉って何だろう。言葉は生き物だと書いてある本もあった。でも、言葉は言葉だけでは生きられない。 本当という言葉があるけど、本当のことを言って物事がだめになることもあれば、嘘でもいい言葉を、みめは欲しがる。  ハリセンボンって知ってるだろ。でも、本当はだいたい350本くらいしかないんだ。多くても針500本くらいさ。  陸の生き物でも、ハリネズミはネズミじゃなくてモグラの仲間だし、ハリモグラはカモノハシで、カモシカはシカじゃなくてウシの仲間だって。いったい何が正しいんだろう?  それに、海の底には名前のない生き物がたくさん生きてる。でも、この世界では名前がなければ存在していないのと同じになってしまう。言葉によってしか存在はできないの?  言葉が、こんなにややこしいものだなんて……」 “うをお” が、こんなに長く自分の気持ちを言葉にしたのは初めてだったので、私は驚いた。 「“うをお” の言いたいこと、わかるよ。  それに、私だって本当に言いたいことが、なかなか言葉に表せないと思うことは、たくさんあるし、厳密に言おうとすればするほど、本当に言いたかったことから離れていく時もあるわ。それも言葉の性質だと、私は思っているけど……」 「言葉なんて邪魔なだけだ。言葉があるから、誤魔化されてしまう」 「でも言葉を尽くせば、本当のことにたどり着けるかもしれない。言葉にしないと伝わらないものだって、あるのよ」 “うをお” は、少し考えて言った。 「言葉より大切なものが、あるとしたら……」 首を傾げて答えを待つ私に、“うをお” は微笑んだ。 「記憶……思い出。  お・も・い・で、という言葉じゃなく、記憶そのもの。ニンゲンは記憶と食べ物からできているって言うだろ」  “うをお”は、まるで人間ではないような物言いをする。 「みめに、こうやって僕と一緒にいる記憶が、ちゃんと残れば、それで良くない?」  その正論に、私は黙り込んだ。  私は“うをお”のことを何ひとつ知らない。一緒にいて、どんな人かは言い表せるけれど、生い立ちや、具体的なことは何も教えてもらっていない。訊ねたかったけれど、それを口にすれば、“うをお”は途端に消えてしまいそうだ。  それを望むのは私の我儘?という言葉を飲み込んで、私はやるかたなく、寄せてきた波の上にしゃがみ込んで濡れた砂を掬った。 #うか小説 #うか谷山浩子 2022.10.22 デイリーランキング45位 ありがとうございます🙇‍♀️💕 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼ 【INDEX】 第1話 https://nana-music.com/sounds/0670fa42 第2話 https://nana-music.com/sounds/0670fa51 第3話 https://nana-music.com/sounds/067126f1 第4話 https://nana-music.com/sounds/06712707 第5話 https://nana-music.com/sounds/067152ed 第6話 https://nana-music.com/sounds/06715306 第7話 https://nana-music.com/sounds/06717f11 第8話 https://nana-music.com/sounds/0671ad81 第9話 https://nana-music.com/sounds/0671ad94 第10話 https://nana-music.com/sounds/0671dd93 最終話 https://nana-music.com/sounds/0671dda3 #うか小説 #うか谷山浩子

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