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夜明けの足跡【旅芸人一座の物語〜第23話】
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——旅芸人一座の物語、第23話。座長のジェイの物語を、架空映画の主題歌に載せて。  こんばんは。清水はこべ(箱)です。  久しぶりの小説コラボ。架空の王国を舞台にした、旅芸人一座の物語です。コーラスでも参加しています。  ★・「旅芸人一座の物語」とは・★  エリス羽衣さん企画のリレー小説。書き手はエリスさんと私のふたりです。歌と物語を合わせて、nanaに不定期連載しています。  今回の物語は、時系列的には、第16話の続きになります。エリスさんの前回投稿、第21話、第22話とは、ほぼ時間軸は一緒です。  第16話「はちあわせのメッカ|Despacito」  https://nana-music.com/sounds/0631f1ed  第21話「白日」  https://nana-music.com/sounds/06c17b4b  第22話「残響散歌」【静かめ】  https://nana-music.com/sounds/06c18dc1  ★・・・音楽について・・・★  今回の音楽は、この小説のオリジナル主題歌です!  コラボの先頭は、たかえよしやさんのオリジナル曲「幽玄の夜」のインスト版。作詞と歌パートの作曲とボーカルはエリスさん。ファンタジックなフルートは橙さん。私はコーラスで参加しています。  この小説の「架空映画」の主題歌をイメージして制作された楽曲で、たけねこさんのイラストによる動画もあります。動画編集は私が担当しました。  歌詞の情景は、今回の物語とリンクしています。歌詞はエリスさんのサウンドにあります。履歴からは辿れませんので、下記リンクからどうぞ。  改めて、ご一緒させて頂いた素晴らしいクリエイターの皆様に感謝です。ありがとうございます。  ★「夜明けの足跡」オリジナルMV  (架空映画「旅芸人一座の物語」主題歌)  ✴︎nana(エリス羽衣さん)  https://nana-music.com/sounds/0654ab2b  (歌詞はこちらにあります)  ✴︎YouTube(清水はこべ(箱))  https://youtu.be/MnLi_6_yc_M  ★・・・お詫びと御礼・・・★  腱鞘炎のご心配を下さった皆さん、ありがとうございます。完治はしていませんが、回復傾向です。  今回の初稿は2年前に出来ていました。加筆修正は、先月より開始しましたが、無理せず、時間をかけておりますので、ご安心ください。  コメント返信は、最近再開しましたが、半年ほど遅れています。創作・投稿を優先で、無理ない範囲でお返事します。ご容赦頂けると幸いです。  ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★  以下、読み物を掲載します。【長文注意】 ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※小説にコラボをお考えの方は、ご相談下さい(キャプション表記でお願い事項あり)。(絵師さんゆるく募集中!) ※登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。  ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★  【旅芸人一座の物語】  企画:エリス羽衣  書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱)  ★まとめ読みプレイリスト  ① https://nana-music.com/playlists/3601402  ② https://nana-music.com/playlists/3730970  ★時系列順まとめページ  https://nana-music.com/sounds/061cd18e  ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★  第23話「夜明けの足跡」  書き手:清水はこべ(箱)  ボーカル:エリス羽衣  コーラス:エリス羽衣・清水はこべ(箱)  ★これまでのあらすじ  王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。  何も知らない、貴族の少女アコベールは、一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、エリージャもまた、アコベールの無邪気さに癒される。  一座が王宮を去る日、馬車の荷台に隠れて、こっそりエリージャについて行こうとしたアコベールだったが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。  一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。  炎を逃れた二人は、老医師ミムルドの元を訪れる。 ミムルドは、アコベールの後ろ盾になる事を約束。  一座に戻ったエリージャは、ミムルドから託された伝言を座長のジェイに告げた。それを聞いたジェイはさっそくミムルドを訪ねることにしたのだった。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  馬の背の上で、ジェイはうめいた。みぞおちが激しく痛む。脂汗が止まらない。  「こんな時に……冗談じゃねえ」  脂汗が目に入り、ジェイは目をしばたいた。夜の森の木陰が、二重にだぶって見える。  一座を出発してから、急いで馬を走らせて来た。ミムルドの屋敷は、この森を抜けた先だ。更に馬の足を早めようとして、突如、痛みに襲われた。  こんな風にみぞおちが痛むのは、初めてだ。  だが、この痛みがどんなものか、ジェイはよく知っている。小一時間もすれば、嘘のように痛みが引く事も。  ジェイは馬の歩みを止めようとした。なのに、あっ、と思った時には、手綱は手から離れていて、そのまま、ジェイは空中に投げ出された。  自分から馬の背が遠ざかっていくのも、地面が近づいてくるのも、妙にゆっくり感じられる。現実感があるのは、みぞおちの激しい痛みと、脂汗だけだ。  そのまま、ジェイの意識は遠のいていった。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  ——大丈夫よ、しばらくすれば治まるから……。  母の声だ。みぞおちを押さえて、搾り出す声。  ——母さん、本当に大丈夫?  少年の声は、子供の頃のジェイ自身の声だ。  ああ、いつもの夢だな、と、ジェイは思う。母が亡くなる時の夢。  ——ジェイ、いつものおまじないをしてくれる?  母は、ジェイに右手を伸ばす。ジェイは母の手を握りしめて、おまじないの言葉を繰り返す。  ——痛いの、痛いの、飛んでいけ。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  大冷害による不景気で、父が一座を失い、酒に溺れて亡くなった後、母は無理に無理を重ねていた。  父の借金を返済し、親子ふたりの生計を立てる為に、母がその身を売っている事も、時折、声を殺して泣いている事も、子供ながら、ジェイは知っていた。  どうにかして、少しでも母の助けになりたいと、ジェイは情報屋の仕事に手を染めた。  最初はいいように使われるばかりで、危険な目に遭う事も少なくなかった。母には言えないような、汚い仕事をさせられた事も多々あった。  それでも、ジェイは情報屋としての駆け引きの仕方を少しずつ覚えていった。  いつか再び一座を興して、舞台の中心で母が踊るのを、もう一度観たかった。その為なら、どんな事でもやると決意していた。  それなのに。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  亡くなる一年くらい前から、母は度々、みぞおちを押さえて、脂汗を流す様になった。  心配して声をかけると、「しばらくすれば治まるから」と、絞り出す様な声で言うのが常だった。  実際、小一時間すると、痛みはあっさり治まるようで、先程までの苦しみが嘘の様な笑顔で「もう大丈夫よ」と言うのも常だった。  だから、その病で母が命を落とすとは、ジェイは思いもしなかった。  ある日、母は、苦しみながら、いつものように脂汗を流してうずくまり、そのまま二度と動かなくなった。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  ——痛いの、痛いの、飛んでいけ。  少年の手を、強く握りしめていた母の手から、力が抜ける。  ——母さん?  少年はおまじないを唱えるのをやめて、母を呼ぶ。  ——母さん! 母さん!  声変わり前の少年の叫びは、夢を見ているジェイ本人を苛む。  何の力もなく、母の助けになれなかった自分。動かなくなった母に縋る事しか出来なかった自分。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  「母さん」  ジェイは、自分の声で目を覚ました。  朝日が眩しい。落馬したジェイは、草の茂みに落ちて倒れ込み、そのまま一晩、意識を失っていたらしい。  みぞおちの痛みは治まっている。このまま死ぬのでは無いかと思うくらいに、激しい痛みだったのに。  ——しばらくすれば治まるから……。  なるほど、と、ジェイは思う。母も、同じ痛みを感じ、同じようにおさまったのだろう。  もしかしたら、そう遠くない未来に、自分は死ぬのかもしれない。母と同じように。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  ジェイは体を起こし、辺りを見回した。馬の姿はどこにも無い。  立ちあがろうとして、右足に痛みを感じた。どうやら、落馬した際に、足を捻ったらしい。右足を庇いながら、ゆっくりと立ち上がる。  「やれやれ」  歩くとなると、ミムルドの家までは、かなりの距離だ。怪我をした足では、どのくらいかかるだろう。  「行くしかねえな」  ジェイは右足を引きずりながら、歩き始めた。  ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★  ★続きの章の投稿は、コメント一斉通知や、リポスト等でお知らせします(通知をご希望の方は、コメント頂けると嬉しいです)。  ★投稿順続き  第24話「レンズ|M氏の幸福」  https://nana-music.com/sounds/06c3f96a  ★時系列続き(2024/9/15時点)  第17話「僕のこと」  https://nana-music.com/sounds/063402dd  ★・・・あとがき・・・★  エリスさんに続いて、2年振りの投稿です。  今回の話は、2年前に初稿は出来ていたのですが、それからまもなく父を亡くし、しばらくは何かを書くどころではなくなりました。  書く事に復帰してからも、今回の話に向かい合う為には、沢山のエネルギーが必要で、ずっと、読み返す事すら出来ずにいました。  でも、恐らく、時が来たのでしょう。様々なきっかけが訪れて、執筆を再開する運びとなりました。  この続きは、私のターンで、連続した時間軸の物語が、もう5話続く予定です。2年前に書いていた分が2話、今年書き進めている分が3話の予定。腱鞘炎と付き合いながら、少しずつ出していきます。  あとがきまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。よろしければ、またお目にかかれます様に。  ✴︎ーーー★ーーー✴︎  「夜明けの足跡」  【旅芸人一座の物語〜第23話】  ★音楽  「夜明けの足跡」  https://nana-music.com/sounds/0654ab2b  作曲 たかえよしや  作詞・ボーカルメロディ エリス羽衣  DTM たかえよしや     (オリジナル曲「幽玄の夜」inst ver.)  ボーカル エリス羽衣  コーラス エリス羽衣・清水はこべ(箱)  フルート 橙  Special Thanks たけねこ  (MV キャラクターデザイン・イラスト)  https://nana-music.com/sounds/0654aa58  ★読み物  「旅芸人一座の物語」  企画:エリス羽衣  https://nana-music.com/sounds/05fd857f  書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱)  (第23話書き手:清水はこべ(箱)) #旅芸人一座の物語 #夜明けの足跡 #オリジナル #橙 #フルート伴奏 #たかえよしやさんに感謝の箱 #エリスさんに感謝の箱 #橙さんに感謝の箱 #たけねこさんに感謝の箱 #箱のこーらす #箱のよみもの

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