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残響散歌【静かめ】【旅芸人一座の物語〜第22話】
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リレー小説【旅芸人一座の物語】第22話です。 物語の時系列としては 第21話「白日」の後半です。 未読の方は先に「白日」をお読みください。 第21話「白日」 https://nana-music.com/sounds/06c17b4b 以下、過去作品の紹介からあらすじ紹介まで、 はこべさんのキャプションを転載します。 その後、物語になりますのでお楽しみください♪ ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※作中の登場人物は全て架空の存在です。 nana上のフレンドさんからお名前はお借りしている部分もありますが、性格その他全くの創作です。 ご了承ください。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:エリス羽衣 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 旅芸人一座の物語 第22話「残響散歌」 書き手:エリス羽衣 ボーカル:エリス羽衣 コーラス:清水はこべ(箱) ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。 その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 何も知らない、貴族の少女アコベールは、 一座の歌姫エリージャの歌に魅了され、 エリージャもまた、アコベールの無邪気さに癒される。 一座が王宮を去る日、馬車の荷台に隠れて、 こっそりエリージャについて行こうとしたアコベール だったが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。 一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。 炎を逃れた二人は、老医師ミムルドの元を訪れる。 ミムルドは、アコベールの後ろ盾になる事を約束。 一座に戻ったエリージャは、ミムルドからの伝言を ジェイに伝えた。ジェイはミカに座長代理を頼んで、 慌ただしく出立していった。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「座長」 天幕に入ると、座長は机で書き物をしていた。 「ミカ、どうした」 「あたしに、あの子の世話賃を払ってください」 「世話賃?」 「あの子の世話をしているせいで、あたしは 買い物にも行けなかったし町で情報収集する機会も なかった。対価がないと不公平です」 「ふうむ…そうだな。いくらほしいんだ?」 「えっ?」 こんなにあっさりと要求が通るとは思っていなかった ミカは面食らった。 「えっと…一日につき銀貨1枚」 「わかった。毎日だと面倒だから週払いでいいか? 今週の分、渡しておく」 「…確かに。ありがとうございます」 手の中でチャリ、と硬い音を立てる銀貨を持って ミカは座長の天幕を出た。 (嘘みたい。なんでも言ってみるもんだね~!こないだの 薬といい、最近の座長、ケチをやめたのかしら) 銀貨を隠しに仕舞いこんでから、 ミカは自分の天幕へと足を向けた。 天幕ではエリージャがやっと 目を覚ましたところだった。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 座長がケチを止めたのではないと判明したのは、 次に世話賃を貰いに行ったときだった。 「エリージャの様子はどうだ?」 「やっと熱が下がりました。足首は包帯で固定して なんとか歩けそう。背中は毎日化膿止め塗ってますけど 一回医者に診てもらったらどうです? あのままじゃ火傷痕が大きく残りますよ」 「薬もひと壺使い切っちまったようだし、移動前に 町へ買い足しに行くか。服も買わねえとな。 医者は高いから…まあ本人が希望するなら、かな。 ちと背負うもんが大きくなりすぎるかもしれんし」 「背負うもん?火傷痕のことですか?」 受け取った銀貨7枚を確かめながらミカは聞き返した。 「あ?なに言ってんだ、あいつの借金のことだ」 「……借金?あの子森で拾ったって言いませんでした? なんの借金ですか?」 座長は手元の帳面を開いてゆっくりと読み上げた。 「化膿止めひと壺金貨3枚。血止めひと壺金貨5枚。 お前に払う世話賃銀貨14枚。新たに化膿止めひと壺 買うからまた金貨3枚だな」 ミカの顔がさっとこわばったのを見て座長は言った。 「ああ…そうか、お前は売られてきたわけじゃない、 自ら志願して一座に入ったんだったな。楽器も 自前だったし。知らなかったんだな、大抵の奴は俺に 借金があるぞ。…ま、元気になったら稼いでもらうさ。 なんせあいつの声は“光の声”だ」 自分の天幕へ戻る間中、 ミカの頭の中にはずっと同じ言葉が響いていた。 (お前に払う世話賃銀貨14枚)(銀貨14枚)(世話賃) (銀貨14枚…) 半ば呆然としたまま天幕に入ると、 すぐそばでまだ少し掠れた声がした。 「おかえりなさい、ミカ姐さま」 細くて小さくてやつれた顔をした子どもが、 まっすぐに自分を見上げていた。 「…っ、ただいま…エリージャ」 ―――こんなか細い子どもに、銀貨14枚分もの 借金を負わせていたのか、あたしは!!! ✴︎ーーー★ーーー✴︎ ろうそくの炎がふと揺らめいて、 ミカは物思いから覚めた。 (あんたは親切のつもりかもしれないけどねえ、 こいつらはあんたを利用してるだけ! いいように付けこんでるの! あんたの育ちの良さにね!) 「あたしだって同じことをしたくせに… ずいぶんとえらっそーなこと言ってる…」 あのときは、言わずにはいられなかったのだ。 他人の買い物の代金を気づかずに背負い、 借金を増やされていくエリージャを 見ていられなかった。 いいようにたかろうとする連中にも、仕組みを 教えてやらない座長にも、彼らと同じことを してしまった自分にも、腹が立って仕方がなかった。 「…ま、あの子もしたたかになってきたようだけどね」 気づくと、ろうそくが短くなっていた。 新しいろうそくに取り替えなくては。 気分転換に今夜は酒でも飲もう。 王宮から持ち出してきた果実酒を開けてもいい。 エリージャを誘ってもいいかな。 だったら新しいろうそくは、先日手に入れた 『岩の国』製の変わり種にしよう。 玻璃硝子細工がろうそくそのものに施してあって、 炎がより大きく煌めいて幻想的に見えるらしい。 頭を軽く振り苦い思い出を振り払ってから、 ミカは立ち上がった。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 21、22話ともにお読みいただき ありがとうございました😊 久しぶりの一座の物語です。 なんと2年ぶり!!!! 自分でも細かいことを忘れてしまっていて、 過去作を読み返しながら書きました笑 🔹「旅芸人一座の物語」に、オリジナルの主題歌とMVが出来ました! 「架空映画化」をイメージして、素晴らしいクリエイターの皆様にご参加頂いて、数ヶ月の濃密なやり取りを経て生まれた作品です。 「夜明けの足跡」オリジナルMV (架空映画「旅芸人一座の物語」主題歌) ✴︎nana  https://nana-music.com/sounds/0654ab2b ✴︎YouTube  https://youtu.be/MnLi_6_yc_M ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「残響散歌」【静かめ】 【旅芸人一座の物語〜第22話】 ★音楽 原曲 Aimer「残響散歌」 作詞:aimerrhythm 作曲:飛内将太 「残響散歌」【静かめ】演奏 ギター:jU''' https://nana-music.com/sounds/064a0b0e ピアノ:アリ https://nana-music.com/sounds/06a9e508 ストリングス:tera https://nana-music.com/sounds/06a9f584 コーラス:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/06aa0ada ボーカル:エリス羽衣 
 ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) (第22話書き手:エリス羽衣) #JU伴奏 #せーので引っぱって #Aimer #残響散歌 #鬼滅の刃 #じゅーさんに感謝の箱 #アリさんに感謝の箱 #てらさんに感謝の箱 #箱の中のものがたりうた #箱のこーらす  #旅芸人一座の物語 #JUさんとエリス #アリさんとエリス #teraさんとエリス #はこべさんとエリス #エリスエメ #エリス2024の08

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