深淵の月
時村雪人
深淵の月
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#雪嶺より
самоубийство04/深淵の月
「ゴホ、ゴホッ……!」
「もうすぐだよ。頑張れ、イーニ」
俺達は皆一人であり、仲間である。誰がどうとか、そういう拘りや括りは存在しない。
でもなんとなく序列というか、この人はこういう人だなっていう、漠然としたイメージがある。エーリがお姉ちゃんで、スーリカがお母さん、イーニがお父さん、みたいな。
俺は末っ子、みんなの弟だ。
最近吹雪が強くなった。
あの日以来太陽の光を見ていない気がする。黒い雪雲は俺達に付きまとい、どんどん寒冷を持ち込んだ。だから南下して慣れた軟弱な俺達の体も、正直かなりボロが出ていた。
顕著なのはイーニだ。時々咳に血が混じっていて、歩調も前より少し遅くなった。
でも先頭を歩くのはいつだってイーニだ。俺達の誰も先頭に立つべき存在じゃないってことは、俺達が一番理解していた。
「ただの風邪だよ」
「そうだね、ただの風邪だ。でも休んでいられない」
ランタンは命の灯火。俺達の魂。掲げることで俺達はこの体に宿る仲間と、自身の生を堅持している。
歩いて、歩いて、一面の白銀を照らし続ける。
灯りは消えない。まだ消えてはいけない。
風雪が一層強くなり、体を押し返そうと吹き荒れる。
視界が奪われるほど俺達は目を見開いた。少し前で命の灯火が揺れる。
「君と僕、あなたとわたし」
「灯りをともそう」
「君と僕、あなたとわたし!」
「灯りをともそう!」
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ㅤ ㅤ Voice actor
イーニ🤍霜村
スーリカ🖤🦐
エーリ🤎07
ニェーク💙かたたたき
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