光を喪って
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光を喪って
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#雪嶺より
самоубийство05/光を喪って
死ぬ前に、あなたに会いたいと思った。
それと同時に、冬が私を呼んでいるのが分かった。
人を殺す凍てつきと抱擁したい。だから私達は、旅に出た。
肺が凍り付く。
息を吐く前に、喉の奥で氷が生まれる。体はこんなに痛いのに、心はひどく穏やかだった。
それはいつか見た陽光のように、眼前を照らす灯りのように、腰まで積もった新雪のように、仲間の温もりのように。
ランタンの灯火は吹雪をもろともせず、煌々と、堂々と、一寸先を照らしている。どれだけ強い風が吹こうとも、それに負けじと燃え上がる。
それも今日で終わり。
私達は終わりの果てに、ついぞ辿り着いた。
「ここが、私達の大地。本当の大地だ」
吹雪を潜り抜け、やがて拓けた視界の先。風一つない静寂の園が、私達を待っていた。
白く覆われた世界には、仲間の形骸一つ存在しない。だけれどこの地の、私達の足元に、たしかに眠っている。
いつか雪解けが訪れたなら春の新芽の土壌となり、新たないのちがここから生まれていくのだ。
「着いたんだね、私達」
「ここが……俺の故郷……」
「長い旅だったけど、満足だよ」
四人の杖が天に向かって突き上げられる。
全ての眷属が眠る、安らかな楽園が照らされる。この灯りで、最後の一人が辿り着いたのだと仲間に伝えるのだ。
「冬が、呼んでいる」
「冬を、求めている」
「冬に、抱かれたい」
「冬へ、会いにいく」
そして私達は冬となる。
終点。私達はここで最期を共にする。
「還れる。仲間が、私達を待っている」
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イーニ🤍霜村
スーリカ🖤🦐
エーリ🤎07
ニェーク💙かたたたき
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