夢町コントラスト
電ポルP
夢町コントラスト
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09
-Straw flower-
再会のための後押しを
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私は、幼いときに異世界に行った経験がある。…こんなことを言ったら、頭がおかしいと思われるだろう。だけど、あれは私の身に確かに起こった真実だった。
あの日は、雨が降っていた。私はサッカー選手になることを夢見ていて、雨だろうが練習する、と親の制止を振り切って公園に向かった。びしょ濡れになりながらひたすらにボールを蹴っていた私は、淡く光っている水たまりを見つけた。好奇心のままに近づいて手を触れると、確かに水たまりのなかに引き込まれたのだ。
「うわっ」
「え?」
目を開けると、泥だらけだったはずの服がなぜか綺麗になっていて、目の前には男の子がいた。
「君、どこから来たの…?」
「えっとね…なんか、水たまりに吸い込まれて」
「水たまりに…!?」
彼は嬉しそうな表情をすると、ここは君にとっての異世界だと教えてくれた。当時はよく分からなかったから、勢いで頷いていた気がする。それから彼___リアムと遊んだり話したりして、楽しい時間を過ごした。きっとお互いに、この時間が終わってほしくないと思っていた。
「ねぇ、アカネ。僕の夢を聞いてくれないか?」
遊び疲れて野原に寝転がると、ふとリアムは自分の夢を語り出した。…彼はこの異世界にある国の次期王で、生まれたときから将来が決められているのだと明かした。
「でもね、たとえ決められているからといって掟に縛られたり、誰かの言う通りにしたりはしないつもり。…僕は、僕らしい王になるのが夢なんだ」
キラキラした瞳でそう語ったリアムを見て、私も嬉々として夢を語った。
「私はね、サッカー選手になるのが夢なの!…私は、自分で叶えないといけないんだけど」
「そっか!きっとアカネなら叶えられるよ!…っ!?」
彼がそう言って笑ったとき、ふいに私の身体が宙に浮き上がった。
「な、なに!?怖いよ…!」
「大丈夫、元の世界に帰るだけだよ!…お互い夢を叶えたら、また逢おう!!」
彼のその約束の言葉を最後に、私の身体は謎の力によって引っ張り上げられた。
そのあと普通に帰宅した私は、親に泣きながら抱きしめられた。驚いたことに、あの雨の日から既に1週間が経っていた。私は正直にあったことを話したが、親にはさらに心配され、周りの子からは変な子扱いを受けるようになってしまった。それでもまた彼に逢いたくて、雨の日は決まってあの水たまりを探した。それを知った親はひどく私を心配して、過保護になってしまった。外で遊ぶことは禁止され、危ないからとサッカーボールも処分された。外に行くなら家にいてほしい、こういう職に就いてほしい…。親が敷いたレールの先に、私が目指していた夢はなかった。はじめは抵抗していたが、やがて成長して親の気持ちが分かるようになってからは、おとなしく親の敷いたレールを歩いた。夢を、諦めてしまったのだ。…私はまだリアムに逢いたいと思っているけど、あのときの約束は叶えられていない。だから…。
「逢えないな……」
私はため息をつくと、勉強道具の上に突っ伏した。少しくらい寝たって許されるはずだ。
🥀
どこか懐かしいような感覚がして、目を覚ます。周囲を見回してみたが、古くて凝った造りの建物以外は全てモヤに覆われていて見えなかった。
「…あのときの異世界…じゃなさそう」
少しだけ期待をしてしまっていた自分にモヤモヤしながら、建物の扉を叩く。するとすぐに中から女性の声がして、扉が開かれた。
「お客様、お待ちしておりました!中へお入りください!」
「は、はい…」
何かを頼んだ覚えはないのだが、とりあえず中に入ってみると一気に花のよい香りに包まれた。女性は多種多様な花のなかから1輪の花を取り出し、私に手渡した。
「こちら、私と"王子"からのプレゼントです!」
「王子…もしかしてリアムですか!?」
目を見開いたまま訊くと、女性はにこりと笑って肯定した。
「本当なら、異世界に行ったときの記憶は消えてしまうはずなのですが…、よほどあなたと王子の逢いたい思いが強かったのでしょうね」
女性から告げられる真実にキャパオーバーしそうになっていると、女性が急に焦ったように言葉を紡ぎはじめた。
「お客様、そのお花のこと、大事にしてあげてくださいね!」
そう言い終わるや否や、女性は軽く私の肩を押した。途端に身体が傾き、私は意識を飛ばした。
🥀
雨が窓を打ちつける音がして、目が覚めた。手に持ったままになっている花を見て、私は確信した。異世界は存在していて、リアムと遊んだあの記憶にも、嘘はないのだと。…ずっとそう思っていたつもりだったけど、どうやら記憶や異世界の存在を信じきれていない自分がいたみたいだ。
「…行かなきゃ!」
私は女性とリアムにもらった花を手に、あの公園へと走った。夢は叶えられていないけど、どうしてかリアムに逢えるような、そんな気がするのだ。
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きっと君は違う空を
いつでも誰かと見ている気がするんだ
その日私の手が描いた願いも消えてく
きっと幻じゃなくて
確かにあの時二人で遊んだこと
幼い私の記憶に残った君の手 君の声を
逢いたいな 逢いたいな
逢えないな 逢いたいな
逢えないな 逢えないな
逢いたいな
逢えないな
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🧡ヘリクリサム cv.海咲
https://nana-music.com/users/579307
💐本家様
『夢街コントラスト』
Music 電ポルP様
https://youtu.be/fD1rGbvi-OI
※伴奏を公式様からお借りしているためギフト等は御遠慮頂けますと幸いです。
https://piapro.jp/t/qujx
イラスト︰ゆん様
SS︰琉伊
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