she
keeno feat.初音ミク
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-Black berry-
嫉妬をしてもなお、
優しいあなたの心に
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私には、初恋の人がいる。…否、いた。ついさっきまでは、この気持ちをいつ本人に伝えようかなと考えていた。完全に浮かれた気分だった。だけどそれはいま、目の前で木っ端微塵に砕かれてしまった。
想い人であったソラとは、部活と帰る方向が同じで、知り合ってからは毎日のように一緒に帰っていた。最初は友人としか見ていなかったが、悩み相談を真剣に聞いてくれたり、ときには喝を入れてくれたりするソラを、いつの間にか好きになっていた。いつか告白したいな…と思っていた矢先、ソラとクラスで人気な女の子の春音ちゃんが抱き合ってキスをしているところを見てしまった。いつも通り一緒に帰ろう、と言いに来た私はそのまま踵を返し、涙を流しながらひたすらに帰路を走った。
それから、私はソラと春音ちゃんから距離を置くようになった。距離を置いていないと、自分がどうにかなってしまって、ソラと春音ちゃんを傷つけてしまいそうだったから。…あの子のほうがソラにお似合いなのは分かってる。だけど、私だってソラを好きだった。ううん、いまも好きでいる。本当は、春音ちゃんからソラを奪いたい。私が春音ちゃんになって、彼の隣に立ちたい。彼には、私だけを見ていて欲しかったのに…。そんな思いを抱える度に、春音ちゃんを羨む気持ちが、憎む気持ちに変わりそうになる。でも、そうならないのは、春音ちゃんはひとつも悪いことをしていないから。そして…、こんな自分が醜くて、大っ嫌いだからだ。
「っ…うう」
私は今日も涙を流しながら布団に潜り込み、現実から逃げるように目を固く瞑った。
🥀
「起きて、起きて」
誰かの声が聞こえた気がして目を開けると、綺麗な女性の心配そうな顔が視界に飛び込んできた。
「えっ…?」
自分がいまどういう状況に置かれているのかが分からずぽかんとしていると、女性はふっと微笑んで、優しく私を立ち上がらせた。
「おはよう、お客様。いつまでも来店されないから、心配で迎えにきてしまったよ。…さあ、行こうか」
女性に促されるまま古風な建物のなかに入ると、甘くて優しい花の香りが鼻をくすぐった。どうやら彼女の言うお店というのは、花屋のことを指していたらしい。
「さあ、ここに座って。少し待っていてね、お花を持ってくるから」
「あの、私頼んだ覚えは…」
「うん、分かっているよ」
女性のはぐらかすような返答に少しモヤモヤしながらも椅子に座ると、すぐに女性は戻ってきた。
「あ、はい、どうぞ」
「ありがとう、ございます…」
花瓶ごとお花を受け取って眺めていると、ふいに視線の先に影が落ちた。疑問に思いながら顔を上げると、女性の綺麗な双眸が私を射抜いていた。
「…あなたはいま、好きな人に恋人ができてしまって、苦しい思いをしているんだよね」
女性の言葉に、思わず瞠目する。どうして知っているの、と聞きたい気持ちはあるが、きっとこの人は答えてくれないのだろう。
「あなたは確かに、あの子に嫉妬をしている。だけどね、きちんと現実も見て、あの子のことを思いやってもいるんだ。それはあまりできないことなんだよ」
「あまり、できないこと…」
女性は深く頷くと、ぎゅっと私の両手を握った。
「嫉妬にかられてしまうと、人を傷つけてしまうこともあるんだ。でもあなたは、それをしていないどころか、そんな自分を傷つけてしまっている。…あのね、これだけは覚えておいて。あなたは、醜くなんてない。だからこれ以上、自分を下げるようなことを思うのはやめてほしい」
…自然と、涙がこぼれ落ちていた。初めての恋で、初めての恋愛に関する嫉妬をして。嫉妬にかられる自分は醜くて汚いのだと思っていた。でも、そう思わなくてもいいの?
「あの…、ありがとうございます」
涙を拭いながら女性にお礼を言ったそのとき。急激に女性の周りをモヤが囲み始めた。
「え、な、にこのモヤ…!?」
「大丈夫、安心して」
女性は冷静にそう言うと、私の目を手で覆った。
「そのまま、目を閉じて」
その言葉に従って目を閉じると、急激に意識が飛ばされていった。
🥀
「…夢、か」
夢なんてここ最近見られていなかったのに、なぜだか今日は優しい夢を見ることができた。気分が上がったまま、いつも通りベッドデスクに置いてある携帯を取ろうとして、そこにあるものに気がついた。
「あれ、これって…」
夢でもらったはずの花と花瓶が、ベッドデスクに置かれていた。
「なんで…って聞いても、何回もはぐらかされたからなぁ」
不思議な力がはたらいたのだろう、ということにしておこう。深く考えても答えは出ないのだから、きっと無駄だ。
「…ありがとう、お姉さん。少し立ち直ることができたよ」
そう言ってから花を見つめると、窓を一切開けていないというのに、まるで私の言葉に応えるように小さく花が揺れた。
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君の隣で笑っている
あの人にはなれないや
どうしたらいい?
わかんないよ
ただ痛いの
だからこれ以上
君に惹かれないように
ぎゅっと目を閉じて
耳を塞いで蹲っていた
私の身体中 流れる赤い熱は
脈をまだ止めないまま
今にも張り裂けてしまいそうなほど
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🖤ブラックベリー cv.おと*°
https://nana-music.com/users/8312441
伴奏︰まっくすくん様
イラスト︰ゆん様
SS︰琉伊
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