
羽化【箱アレンジ】【旅芸人一座の物語〜第19話】
大塚宗一郎 菅野よう子
旅芸人一座の物語、第19話。「全部箱」です! 伴奏作って、歌って、小説書きました。 企画は、エリス羽衣さんです。エリスさんと私のふたりで、物語をイメージした歌を歌い、1シーンを読み物としてキャプションに記載します。 歌は、大塚宗一郎さんの「羽化」です。エリスさん執筆の、第14話〜第15話で登場した歌です。物語も関連がありますので、合わせてお読み頂くと、一層楽しめるかと思います。 ✴︎第14話「フクロウ~フクロウが知らせる客が来たと~」 https://nana-music.com/sounds/062ce5c3 ✴︎第15話「羽化」 https://nana-music.com/sounds/062d266f 今回は、自分で伴奏を作りました。環境音(鳥の声)を背景に、ガイドメロディやコーラスを重ねてます。 伴奏音源もあります! エアハモ音源(このサウンドからリードボーカルを抜いた音源)もあります! 自分アレンジなので、コラボしにくいかもしれませんが、よろしければ、歌や楽器のコラボを頂けると喜びます! (楽曲についての想いも、伴奏・エアハモ音源のキャプションに記載してみました!) ✴︎「羽化【箱アレンジ】伴奏」 https://nana-music.com/sounds/065be2fc ✴︎「羽化【箱アレンジ】エアハモ(コラボ用)」 https://nana-music.com/sounds/065bf47b 以下、読み物を掲載します。【長文注意】 ※文章の無断転載はなさらないで下さいね。 ※小説にコラボをお考えの方は、ご相談下さい(キャプション表記でお願い事項あり)。 (絵師さんゆるく募集中!) ※登場人物は全て架空の存在です。nanaのフレンドさんからお名前を頂いているケースもありますが、性格その他、全て創作で、ご本人とは別の存在です。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 【旅芸人一座の物語】 企画:エリス羽衣 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) ★まとめ読みプレイリスト ① https://nana-music.com/playlists/3601402 ② https://nana-music.com/playlists/3730970 ★時系列順まとめページ https://nana-music.com/sounds/061cd18e ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ 第19話「羽化【箱アレンジ】」 書き手:清水はこべ(箱) DTM・ボーカル・コーラス:清水はこべ(箱) ★これまでのあらすじ 王宮に招かれた旅芸人一座。その実態は、王宮の秘密を探る諜報集団。 一座の歌姫エリージャの歌に魅了された、貴族の少女アコベールは、一座が王宮を去る日、こっそりエリージャについて行こうとするが、すぐに見つかり、王宮へ帰される事に。 一頭の馬に乗り、王宮を目指すエリージャとアコベールが見たものは、炎に包まれたアコベールの屋敷だった。 炎を逃れた二人は、老医師ミムルドの元を訪れる。ミムルドは、アコベールの後ろ盾になる事を約束し、エリージャは一座へ戻るべく、ミムルドの屋敷を立ち去る。 一座へ戻る道中、エリージャは、昔の体験を思い出す。 十年前、生家の火事から逃れたエリージャは、禁断の森へ踏み込んだところを、座長のジェイに助けられ、歌い手となったのだ。本名を捨てて……。 話は、エリージャの回想から、更に数年を遡る。 エリージャとアコベールの出会いよりも、十数年前の物語……。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 鳥の声が聴こえる。神官長は、ゆっくりと目を開けた。 神殿の窓は開け放たれ、風が通り抜けて行く。緑の香りと葉擦れの音。そして、鳥の声。 「この季節は格別だな。毎日をここで過ごせるのは羨ましい」 王が、磨き抜かれた木の床に座りこんでいる。 ナーナ国は、別名を「森の国」と言う。アルト山の麓に位置するナーナ神殿も、森の国らしく、木造だ。 「景色はこの通りですが、夢の外は、娘がその辺を走り回るので騒々しいですよ」 神官長は困った様に笑い、そして、表情を引き締めた。 「何があったのです?」 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ ここは、神官長の夢の中だ。 昨日、王から極秘で「夢」という短い便りが届いた。 夢見での会談は、能力の高い者が行わないと、二度と目覚めなくなる危険性がある。余程の話があるのだろう。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「王宮に魔法の気配を感じた。王家の者ではない」 「王家ではない? お召しになった者の中に、『山の民』の末裔が居るのでしょうか?」 「末裔でもない。神職よりも、王家よりも、格段に強い力だ」 「……つまり、下山した『山の民』が、王宮に?」 神官長は青ざめた。想像していたよりも、由々しき事態だ。 「誰も気づいておらぬ。気配は一瞬で消えた。王宮の何処に潜んでいるか、私にも見当がつかぬ」 「しかし、結界が開いた様子はございません。むしろ、近年はフクロウの力が増し、結界は以前よりも強固に閉じています。本当に、下山した民が居るのでしょうか?」 「思い過ごしと思いたい。だが、感じるのだ。『山の民』を引き入れた者が、この王宮に居る、と」 「何と……」 王は直感が鋭い。わずか1歳の時に、翌年の大冷害を予知した。その後も、その直感で国難を救ってきた。 王が感じるからには、本当に居るのだろう。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ アルト山の麓には、ナーナ国、ノーティア国、ヨトゥーブ国の三国があり、それぞれに、森の神、泉の神、岩の神の神殿がある。 三柱の神を全て祀った大神殿が、アルト山の山頂にある。 大神殿を守るアルト国は、別名を「山の民」という。山の厳しい暮らしの中で、魔法を身につけた者達が、自給自足で密やかに暮らしている。 127年前の大戦で、アルト国は、自治と自由を勝ち取り、三国と不可侵条約を結び、鎖国した。 三国からアルト国へ通じる道には結界が張られている。結界は、魔力を持つフクロウに護られ、近づく事は困難だ。国交は完全に断絶している。 終戦までに下山した「山の民」の末裔が、三国で暮らしている事は、稀にある。三国の王家も神職も、源流を辿れば、祖先は「山の民」だ。 だが、一国の王宮に、末裔ではない「山の民」が潜んでいるというのは、ナーナ国だけの問題では無くなる可能性がある。 四国を巻き込んだ大戦は、実質、「山の民」とその魔法を手中に収めたい三国の戦争だった。 下手をすれば、王宮の「山の民」が火種となり、100年以上続いた平和が破られ、再び大戦が起こりかねない。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「事態は、すぐには動かぬ。10年以上は時間がある」 王は静かに言った。 「そうお感じになるのですか?」 「無論、未来は常に不確定だ。だが、この予感は強い。相手は、用意周到で手強い」 「私に出来る事は?」 王はしばらくの沈黙の後、ゆっくりと言葉を発した。 「アルト国の動向を調べ、王宮に引き入れられた気配の正体を突き止めたいが……」 王は再び沈黙し、そして口を開いた。 「……そなたに頼みたくはない」 「何をおっしゃいますか」 「命を落とすのが見える。そなただけに留まらないかもしれぬ」 神官長は息を呑んだ。 「そなたは、私のたったひとりの友人だ。この先、友人と呼べる存在は、私の人生には現れない。だが、他に頼める者が居ないのだ……」 王の声は震えていた。 その様子は、神官長に、王と初めて会った日の事を思い出させた。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 夢見の能力を見込まれ、初めて王宮に呼ばれた日、神官長は9歳、王は1歳の誕生日を迎えたばかりだった。 ——だぁ? 乳母の腕の中で、ちいさな王子が回らない口で何かを尋ねた。目に沢山の涙を溜めて。 ——私は、あなた様の友達です。 神官の少年が咄嗟に口にした言葉に、王子は微笑み、そのまま瞼を閉じて、寝息を立て始めた。 ——まあ! 誰が何をしても、泣き止まず、眠らなかったのに! 乳母の驚く声を聞きながら、少年は、ちいさな王子の寝顔を見つめた。 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「……お引き受けします。戦になれば、私や家族の命だけでは済まなくなります」 神官長は笑ってみせた。 「陛下は常々おっしゃっているではありませんか。未来は常に不確定、ひとつの事で、容易に流れは変わると」 神官長は、幼い王の夢見で見た予知を覚えている。大冷害にともなう飢饉で、人々が次々に死んでいく光景。しかし、王のその予知により、国は辛うじて飢饉を免れた。 「そうだな。その通りだ」 王の微笑みは悲しげだ。 未来は不確定だ。だが、変えられない要素がある事を、王は知っている。飢饉を免れる事は出来たが、大冷害そのものを防げなかったように。 「良い方に流れを変えてみせます。この夢見も、いつか笑い話になりますよ」 「……そうだな」 「念の為、信頼できる者に、協力を仰いでおきます」 神官長は『自分が斃れた時の為に』とは口にしない。それでも王には伝わっただろう。 「名を何と申す?」 「ミムルドという男です。昔から懇意にしている人物で、『山の民』の末裔です」 「『奇跡のミムルド』と呼ばれているのは、その者か?」 「はい。『泉の国』の出身で、腕の良い医師です」 「名を聞いて感じた。その者は信頼できる。私からも頼むと伝えて欲しい」 「仰せの通りに」 ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「静かになさい。お父様はお仕事中よ」 「ごめんなさい。おとなしくしてるつもりだったの。でも、緑がきれいで、気がついたら歌ってたの」 「言い訳しないの」 目を覚ました神官長の耳に、扉の向こうから、妻と娘の声が飛び込んできた。 「ウィーラ、また歌ってたのか?」 声をかけると、扉が開き、娘が駆け込んできた。 「お父様! お仕事終わったの? 本を読んでくれる? 『エリージャひめのぼうけん』の続きを知りたいの」 「いいとも。ミムルド師に手紙を書くので、もう少しだけ待っておくれ」 「はあい!」 娘は元気に返事をすると、外へと飛び出して行った。 「ウィーラ! 待ちなさい! 靴も履かずに!」 妻が娘を追いかけて行く。 「ひとつの事で、容易に流れは変わる。何としても、ウィーラだけは……」 やがて、風に乗って、娘の歌声が聞こえてきた。 ★ーーー✴︎ーーー★ーーー✴︎ーーー★ ★続きの章の投稿は、コメント一斉通知や、リポスト等でお知らせします。 ★直接の続きではありませんが、この章を読んだ後に、第13話、第16話を読んで頂くと、色々と発見があるかもしれません。 ✴︎第13話「Am roop|クールの誕生」 https://nana-music.com/sounds/06287b01 ✴︎第16話「はちあわせのメッカ|Despacito」 https://nana-music.com/sounds/0631f1ed ★「旅芸人一座の物語」に、オリジナルの主題歌とMVが出来ました! 「架空映画化」をイメージに、素晴らしいクリエイターの皆様にご参加頂いて、数ヶ月の濃密なやり取りを経て生まれた作品です。 「夜明けの足跡」オリジナルMV (架空映画「旅芸人一座の物語」主題歌) ✴︎nana https://nana-music.com/sounds/0654ab2b ✴︎YouTube https://youtu.be/MnLi_6_yc_M ✴︎ーーー★ーーー✴︎ 「羽化【箱アレンジ】」 【旅芸人一座の物語〜第19話】 ★音楽 大塚宗一郎「羽化」 (JASRAC:070-4956-1) 作詞:岩里祐穂 作曲:菅野よう子 原曲歌唱:大塚宗一郎 DTM・コーラス:清水はこべ(箱) https://nana-music.com/sounds/065bf47b 歌唱:清水はこべ(箱) ★読み物 「旅芸人一座の物語」 企画:エリス羽衣 https://nana-music.com/sounds/05fd857f 書き手:エリス羽衣・清水はこべ(箱) (第19話書き手:清水はこべ(箱)) #エリスさんに感謝の箱 #箱のいんすと #箱のこーらす #箱のまっしゅあっぷ #箱の中の菅野よう子さん #箱のよみもの #旅芸人一座の物語 #カットされた歌詞も強引に歌うシリーズ #ぜんぶ箱
