ねがい
ディアドラ&カサブランカ
ねがい
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「雨があがったみたいね」
その声に刺繍から顔を上げると
窓の外に抜けるように青い空が広がっていた。
思わず歩み寄り窓の扉を開ける。
雨に洗い流された街は、艶やかに雨に濡れ、
光を反射してちらちらと煌めいていた。
街路樹や花壇の花たちは生き生きと輝き、
頬を撫でる風は清々しく澄んでいる。
長雨に飽き飽きした子供たちが
嬉しそうな笑い声を残しながら
何処かへと走っていくのが見えた。
「なんて……綺麗なのかしら」
知らなかった。
いや、気付こうとしていなかった。
雨上がりの世界がこんなに綺麗だったなんて。
呆然と空を見上げていると、
不思議に思ったのかカサブランカも
窓際へとやってきて空を見上げる。
「あら……ディア、見て」
「あ……」
雲間から差し込む光の梯子のたもとには、
いつの間にか七色の橋がかかっていた。
今にも消えてしまいそうな、
それでも確かに青い空に鮮やかな七色。
「本当に…雨上がりには虹が見えるのね…
そう、そうね、あの人…
正直者で嘘をつかない人だったもの」
「……ディア、泣いているの?」
「いいえ、大丈夫よ。これは嬉しいのよ」
涙を拭い、カサブランカに寄り添う。
高貴なドールは少しためらったものの、
寄り添うディアドラにそっと体を寄せ、
窓枠に置いた手に優しく
その白百合のように美しい手を重ねた。
「ありがとう、カサブランカ……
貴女とこの景色を一緒に見られて
本当に良かったわ。
貴女に出会えて、本当に良かった」
「これから……いくらでも見れるわ。
わたくしと一緒にいて、色々な景色を
見せてくれるのでしょう?私のマスター」
「ふふ、そうね。これからもずっと一緒よ」
二人の重ねられた手。
カサブランカの指に光る指輪は光を反射し、 いつまでもきらきらと光っていた───。
#EQCENTRIEQUE #ディアドラ #カサブランカ
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歩むべき道がある事
誇らしく思うよ
あの日途切れた未来は
あなたが照らしてくれたね
出逢わなければこの夢も
ひび割れたままビー玉のようで
叶うならこの歌が
この空を越え君のもとへ
遠い日の僕らを今包み込んでく
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