俺ら東京さ行ぐだ
吉幾三/キャプション:あいまいえいみぃ
俺ら東京さ行ぐだ
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#七色連歌 #ぼくらのイシ
マサ・ホンダ:榎戸世虎
僕はマサ・ホンダ。
突然だけど……
「都会に行ってみようと思う」
今の暮らしが嫌になったとは言わないけれど、都会の街並みには少しだけ憧れる。
それにだ。
ハイカラな機械なんかは殆どなく、交通網もバスが一日に一本程度で未発達。これから先のことを考えれば、このままでは、この村は衰退の一途を辿ることになるだろう。
それは困る、僕はこの村が好きだから。
大した娯楽はないし、何か特筆して自慢できるものがある訳でもない。むしろ、不便で、時代遅れで、いつ終わってもおかしくない。
だけど、毎日のんびりとパトロールするお巡りさんと駄弁ったり、牛と散歩ついでに回ってきた回覧板と作りすぎたおかずを交換したり、そんな平和な村が好きだ。
住めば都なのか、郷愁かは分からない。でも、確かなこと。
「マサ、本当に行っちまうだ?」
「もしかしたら、この村がもっと住みやすくなる何かが見つかるかも知れないからね」
「すぐに帰ぇって来るよな?」
「勿論。大豆の世話もあるし、僕がいなくなったら手が回らなくなることもあるしさ」
「マサ、気ぃつけんだぞ?都会は怖ぇとこだって言うべ、盗っ人に遭って帰ぇって来れねとが……」
「そこまで警戒しなくても、僕を見て何か盗れるもんがあるとは思わなんだろうし……」
「マサ、これ電車の中で食べな。遠いとこさ行ぐってんだ、長旅なんて慣れねぇごとすんだがら、すぐ腹減っちまうべよ」
「あ、ありがとう。落ち着いたら食べるよ」
もっと若い頃は、こんな村なんてって飛び出そうともしたけれど、やっぱり離れられない故郷。
あの時は金もないしで自転車に乗って、ここから一番近い学校がある一番近い街まで行った……は、いいものの、多少はハイカラな機械があったくらいで、村と大差なかったなぁ。
都会に行ったら、どれくらい違うのだろう。
「それじゃあ、行ってくっから。大豆をよろしく」
いい感じに育ってきた大豆を任せて、僕は都会へと旅立った。
キュオーン ε≡≡⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋧
都会は凄かった。話には聞いていたけど、実際には見たことのないものが沢山あった。あったら生活がグッと楽になるだろう道具も。
だけど、それを利用するには文化の基盤がいることも分かった。生憎と村には最も足りてないところだろう。更に言えば、その基盤をどう作り上げるかというと、まずは何にしても金だろう。自給自足ができるからこそ、やはり足りてないところだ。
「まずは稼ぐとこからかな……」
何か村の外でも稼げそうなものはないかと見回してみるものの、いまいちピンとこない。ぶらぶらと散歩しては想像してみる。
すると、目に止まったのは豆腐店。美味しそうな豆腐、油揚げ、厚揚げ、湯葉、それから豆乳。確か、街のテレビで美容液にもイソフラボンとか言ってたような……?
「はっ、大豆!!!!!!!!!!!!!!!!」
結論、やっぱり大豆だな!
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