ARiA
エリオット&ルピナス
ARiA
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「一緒に星を見たいんだけど…どうかな…」
ある日の夜。
いつも通りの夕飯のテーブルで
ルピナスが作った温かいスープを
食べながらエリオットはぽつりと呟いた。
「星?」
「うん……駄目ならいいけど」
「エリオからのお誘いを断るわけないわ。
いつもなら夜ふかしはいけないけれど…
星を見るなんてとっても素敵なお誘いよ」
そうと決まれば、俄然準備に
やる気を出すのがルピナスの性分。
温かいホットチョコレートにクッキー。
手編みの帽子、マフラー、セーター。
さらに大きなブランケット。
すっかり防寒着で着膨れたエリオットは
よたよたと時計塔を最上階まで
登ることになった。
地上では汽車や車で汚れてしまう空気も
背の高い時計塔の一番上では
心なしか綺麗に感じる。
天鵞絨のような濃紺の空に星が瞬いていた。
エリオットは北の空の
明るく輝く小さな星を指さし、
線をたどるように星座の形をなぞる。
「あっちはこぐま座、こっちがおおぐま座。
しっぽが北極星になってるんだ」
「こぐまとおおぐまがいるのね」
「うん。元々おおぐまは人間だったけど、
神様を怒らせて熊にされたんだって」
「まぁ、大変」
「でも、子どもと離ればなれになるのは
可哀想だって同情した別の神様が
ずっと一緒にいられるように、子どもも
こぐまにして星座にしたんだって…」
「そう………」
少し表情を曇らせるエリオットを
傍らにそっと抱き寄せると、
肩に小さな温もりを感じた。
「……父さんが星に詳しかったんだ。
まだ母さんが元気な頃は、姉さんも一緒に
星を見たりしたこともあったけど」
「いい思い出ね」
「ねぇ、ルピィ。また皆で星を見られるかな」
「きっと見られるわ!
大丈夫よ、お姉さんを信じて。
上手くいくって信じれば、
不思議と全てのことが上手くいくものよ」
「……うん。ルピィが言うと
本当にそうなりそうな気がしてくる…あっ!」
星空にすっと一筋の光が走る。
それに続けて一つ二つと流れていく星々。
「流れ星だ!」
「まぁ!エリオ、お願い事をしなくちゃ!」
「え、えっと…」
エリオットは慌てて目を瞑って、
空を見上げて手をぎゅっと握りしめた。
「願い事はできた?」
「う、うん、突然だったから、
さっきの皆で星をみたいって願い事しか
咄嗟に出てこなかったけど…」
「じゅうぶん良い願い事よ」
「うん……そうだね。いつか皆で星を見よう。
父さんと母さんと姉さんと…ルピィも。
だって……きみも僕の家族だから」
そう言ってはにかむように俯くエリオットを
ルピナスは驚いたように見つめて、
そして微笑んで、手袋に包まれた手の上に
そっと自分の手を重ねた。
流れ星の降る夜。
二人はいつまでも星空を見上げていた──。
#EQCENTRIEQUE #エリオット #ルピナス
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子供の頃に いつも見ていた
窓に映った 光の行方
遥か遠くの遥か未来の
昔話で彩る天体(せかい)
無数の星のトンネル抜けて
走り続けるレールの音は
どこで出会うの どこへ向かうの
ふと見上げたら君のぬくもり
星空またたく 思い出奏でた宙(そら)
君と出会い 言葉さえ色あせた
星くずが紡ぎ出す アリア
届けて このメロディーを
君と描いてた 想いを繋いで
溢れ出すこの気持ち 刹那
瞬く流星のように
抱いて貫いて あなたの胸につつまれて
つつまれて つつまれて
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