§幻想舞踏会§ 第二十八話~島の水質調査~
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第二十八話~島の水質調査~
光姫が七色ノ宝石を調査した翌日の正午。
広場では青風八咫烏隊のさきが噴水をジッと見る姿があった。
赤炎鳳凰隊の暁月が通りがかり、難しい顔のさきに気が付く。
「さきさんどしたの?噴水と睨めっこなんかして…」
「あ、ううん。ちょっとそうまから水質調査を頼まれてね。
全く…そうまパパである理事長も人使いが荒い。
私はスポーツ特待生なんだからレポートとか苦手なのよね…。」
そう言いながら大きなため息をひとつつく。
定位置のベンチに座って日向ぼっこをしていた光姫も2人の様子に気が付き近づく。
「噴水の水質調査ですか…。
水から何かわかりますかね?」
光姫は不思議そうに水面を覗きこむ。
「姫様っ。水は全ての命あるものを生かす源。
何かヒントがあるかもしれないです!
さーて…、始めますか。」
さきは片手で水をすくい上げ、歌を奏で始めた。
(水よ…ちょっと協力してね…。)
歌にあわせ水は水面を震わせる。
さきのすくい上げた水はさきの歌声に応えるように、さきの周囲を漂い出した。
「とても綺麗…美しいわ…。
凄い、魔力が絶えない…。
…なるほどね、ありがとう。愛してる。」
まるで水と対話をするかのような仕草に、周囲の隊士は見惚れる。
さきが水の玉に軽くキスをすると、水は瞬く間に元へと戻っていった。
「なるほどおお!わかっちゃったあああい!」
先ほどまでの優雅な仕草とは正反対の元気な声に、そばにいた暁月と光姫は驚き目を白黒させる。
「さきさん、何がわかったの?」
耳鳴りの残る耳を抑えながら、暁月が様子をうかがう。
さきは濡れた手をパッパッと払いながら暁月へ笑顔を見せた。
「えーっと
まず、ここの水の水質は非常に清められてる。
そしてね、魔力を保有する事に長けているね。すごく珍しい水だね。」
「この水…清められてるってことは飲めたりするのかな…」
暁月が目を輝かせ、噴水に顔を近づける。
さきは慌てて後ろから引っ張り上げた。
「飲んじゃだめ!!!体がもたなくなるよ!
自分の身体に合わない魔力は毒になる。」
「え、そうなの?」
「血液と一緒。普通は自分の魔力以外を無理やり取り込むと拒絶反応が起きるんだ。」
「そうなんだ…。」
暁月は残念そうに肩を落とす。
光姫はそんな会話を終始、静かに黙って聞いていた。
「てことで光姫様っ。ちょっとこのまま水脈を辿ってみたいと思います!」
「水脈…? …なるほど。ぜひお願いします。」
光姫はさきの提案に何か考え付いたのか、笑顔で賛同する。
暁月はさきの邪魔にならないよう、光姫のそばへと駆け寄った。
「ではでは!
水よ…もう一度教えて。ここの水はどこからきてるの?」
今度は舗装された道の下を流れる水にさきは意識を集中させる。
目を閉じ、水脈をなぞるように感じ取って行く。
「………?
…なるほど、ありがとう。」
さきは不思議そうに、首を傾げた。
「…水脈は途中で途切れちゃってる…。
でも、この水は各拠点に行ってるみたい。
…もしかして、転送されてるということでいいんですかね…?」
さきの言葉に光姫がいち早く反応する。
「…転送?
他の島に???
全ての拠点ですか?
石しかない黄ノ拠点や
たいまつの燃えさかる赤ノ拠点にも?」
「そのようです。」
さきの回答に光姫は思考を巡らせる。
魔力の水…
清められた…
水脈…
全ての拠点…
………今までだって
意味の無い事なんて一つも無かった。
さきの言葉を反芻する。
水は全ての命あるものを生かす源。
光姫はパズルのピースをひとつひとつ確かめるように言葉を紡いでいく。
「………。
…つまり全ての島への魔力の循環。
防衛システムや環境維持のためのエネルギー循環は
全て水によって行われている…?
だから全ての島へ行き渡っているのかしら…」
可能性から一番濃厚である説を導きだした。
さきは光姫の言葉を聞いて、違和感を覚える。
(…?水によるエネルギー循環…?どこかで…)
「あっ!!!!」
さきが大きな声を上げる。
「思い出した…そうだ!!
この水による魔力循環のシステム…
青ノ国の古い水質学の論文に記述がありました!」
「論文!?青ノ国に存在したシステムなのですか?」
「誰だったっけなその学者…。
論文を書いた人……書いた人…
確か、大昔に
【初代光姫に認められた国一番の智嚢と謳われた学者の論文】だったかと。」
「…つまり初代光姫が御存命の時代に作られたシステム……?
まさか水の調査でこんなことがわかるとは…。」
まさかここで【初代光姫】という言葉を聞くと思わなかった面々はどよめきを隠せずにいる。
「言ったでしょう!
水は全ての命あるものを生かす源!絶対ヒントをくれると信じてました!」
さきは嬉しそうに胸をはり、笑顔を見せた。
…つづく。
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