🩵Angee Recital🏛

フォロー

🩵 If Hell is forever, then Heaven must be a lie 🏛 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第10部〖正義の天秤と7番目の天使〗 Ⅱ. ぼくには見せなかった笑顔 　カーリの古い記憶の中で、サフィはいつも泣いていたような気がする。何も無いところで転んでは泣き、物を取り落としては泣き、自分は天使なのに何も出来ない、何の役にも立たないと泣いていた。カーリはたった一人の弟を哀れに思い、どうしても笑顔にしてあげたいと、純粋に思っていた。 　ある時、カーリは空を駆けるユニコーンの夫婦が、互いに寄り添って美しい旋律を奏でているところに遭遇した。二匹はとても幸せそうで、これならば、カーリもサフィのことを笑顔にできるのではないかと考えた。試行錯誤の末、カーリは木の枝と植物の蔓を使って音の鳴る楽器を拵えると、それを持ってサフィの元へと向かった。サフィは大木の下で顔を覆って肩を震わせていたが、カーリの足音に気がつくと、ぱっと顔を上げた。その頬に、流れ落ちた雫が光っている。 「また泣いていたのか」 「……カーリや他の兄さんたちには分からないよ。おれはどうして、こんなに何も出来ないんだろう」 「それはおまえがまだ小さいからだろう。一番最後に生まれたんだから、出来ないことが多くても不思議じゃない。悲観することはない。それより、これを見てくれ」 　カーリはサフィの隣に腰掛けると、拙い指使いで蔦を鳴らして音色を奏でた。その音に合わせるようにして、カーリの口からはぎこちない歌声が漏れる。 「すごい……植物で作ったの？ そんな綺麗な音が出るんだね。それに、カーリの歌声も素敵！」 「まだ試作段階なんだがな。もしかすると、音楽ならおまえにも出来るかもしれない。一緒に曲を作らないか」 「いいの？」 　閃光のような速さで身を乗り出すサフィからは、音楽に興味を持っていることが十二分に伝わってきた。それでも、表情はまだ曇っている。カーリはそんな彼を後押しするかのように頷いた。 「もちろんだ。毎日この木の下に集まることにしよう」 　軽く交した口約束だったけれど、その日から二体は一日も欠かすことなく旋律を奏で続けた。最初は不安定だった二体の歌声は、いつしか天界の動物たちの間で噂になるほど広く知れ渡るものになっていた。 　ある日、以前カーリが目撃したユニコーンの夫婦が、二体の曲を聞きにやって来た。カーリが自分たちの音楽は二匹からインスピレーションを受けたものなのだと語ると、夫婦は驚いて顔を見合わせ、そして文字通り浮かび上がって喜んだ。その様子を見たサフィは、自分の力で初めて誰かを笑顔にすることが出来たと、頬を染めて微笑んでいた。それは正しく、天使の理想像そのものと言っていいほどに神聖な姿だった。 　それから程なくして、カーリに人間世界へ行く権利が与えられた。しかしカーリは、サフィと暫く会えなくなってしまうことを危惧して、その誘いを丁重に断った。きっと、次に話を持ちかけられるサフィも、同じように断ってくれるだろうと信じていた。しかし── 「聞いてよカーリ！ 神様がね、おれに、人間の世界へ行く役目をくれるんだって！ 楽しみだなあ、どんなところなんだろう」 　真っ白でしなやかな足をパタパタと無邪気に動かしながら、サフィは実に上機嫌に話出した。彼の目には、まだ見ぬ人間世界への憧れしか映っておらず、隣でカーリがどんな表情をしていたのか、気づくことはなかった。 　サフィが降りてしまった日、カーリは大木の下に一人で腰かけて、何時間も蹲ったまま動かなかった。二人で曲を作る時間は、カーリにとって何よりもかけがえのないものだった。サフィの存在は、ともすれば神様よりも大切に想っていた。 　全部勝手に期待をしていた自分がいけないのだと、頭では理解しているつもりだ。けれど、秘密を共有しあっていたサフィが、あまりにも軽やかにこの手をすり抜けて行ってしまった事実に、心が追いつかなかった。 「唯一無二の存在だと思っていたのは、ぼくだけだったのか……？」 　呟いた声は、届く先を見つけられずに萎んでしまう。隣で答えてくれていた存在は、もう居ない。 ‧✧̣̥̇‧ 　数年後、カーリはサフィと、感動とはかけ離れた再会を果たすこととなった。久しぶりに会った彼は酷くやつれていて、元のあどけなさは何処にも残っていない。カーリの愛していたサフィは、既に死んでいた。代わりに『サフィ』を名乗った天使は、手の内に一つの人間の魂を抱えていて、それをとても愛おしそうに見つめていた。周りから非難されているにも関わらず、魂に向ける笑顔は慈しみに溢れていて、カーリは体内を一気にかき混ぜられたような不快感を覚えた。 「何だよ、その顔。ぼくには一度だって、見せなかったくせに……」 　絞り出すように零し、カーリはサフィの腕を強く引いた。 「サフィ、ぼくと帰ろう。今ならまだ戻れると、神様も仰っていただろう？ おまえはきっと、人間に絆されて変わってしまったんだよな。大丈夫。また一緒に歌を歌っていれば、すぐに天界の居心地の良さを思い出すさ。だから……」 　そこまで言ったところで、カーリの言葉は途切れた。サフィが彼の腕を思い切り振り切ったのだ。サフィの目は灰色に濁っていて、哀と覚悟が綯い交ぜになった視線がカーリを貫いた。 「おれはもう、ここには戻らない。おれに歌を教えてくれてありがとう。……さよなら、兄さん」 　最後に聞こえた声は、カーリの名を呼んではくれなかった。抱えた魂に比べれば、カーリの存在など、他の天使たちと同義なのだと思い知らされた。遠ざかる背を呆然と見つめるうち、カーリの中に獰猛な感情が湧き上がってきた。 　愛していた想いの分だけ、その全てが、黒く塗り替えられていく。 「どうして、どうしてぼくから離れていく？ あんなに長い間共にいたのに、たった一瞬触れ合った人間を選ぶのか？ どうして、どうして……！」 　気がつくと、カーリの手には黄金に光る弓矢が握られていた。 　愛が届かないのならば、もういっそ。執着で捕らえ、苦しみを突き刺し、奈落の底へ落ちたとて忘れられないように縛りつけるのみ。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ⛪️Wait! (待って！) ⛓️‍💥Shit (しまった) ⛪️What are you saying? Let me get this straight You go down there and kill those poor souls? (何と言った？ はっきり答えなさい。君は哀れな魂を殺していたというのか？) 🧊You didn't know? (知らなかったのか？) ⛓️‍💥Whoops (最悪だ) 🔔Guess the cat's out of the bag (秘密がバレちゃったね) ⛓️‍💥What's the big deal? (そこまで騒ぐことでもないだろう) ⛪️Sera, tell me that you didn't know (どうか知らなかったと言って) 🪬I thought, since I'm older It's my load to shoulder (時が経つにつれて決意は固まってゆきました。ワタシが全てを背負うと) ⛪️No! (なんだって！) 🪬You have to listen, it was such a hard decision I wanted to save you, the anguish it takes to Do what was required (話を聞いて。とても難しい決断だったのです。ワタシはただ、アナタを守りたかった。そのために必要な犠牲だったのです。) ⛪️To think that I admired you, well I don't need your condescension (貴方を信じていたのに。そんな態度はいらない) I'm not a child to protect (私は守られるべき子どもじゃない) Was talk of virtue just pretension? Was I too naïve to expect you (美徳は単なる見栄でしか無かった？ 期待した私が甘かったんだね) To heed the morals you're purveying? (貴方の考える規律を守れと言った？) 🧊That's what the fuck I've been saying! (確かにそう言ったんだ！) ⛪️🧊If Hell is forever, then Heaven must be a lie (地獄が永遠ならば天国は嘘に違いないだろう) If angels can do whatever, and remain in the sky (天使が全て許されるのなら、そして空に留まり続けるのなら) The rules are shades of gray when you don't do as you say (言いなりにならなければ規律は灰色の影となる) When you make the wretched suffer just to kill them again (哀れな罪人を苦しめ、再び殺すために) ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ⛪️エクレシア cv.唄見つきの https://nana-music.com/users/1235847 🪬1番目の天使「ミカ」cv.Neumann https://nana-music.com/users/10462832 🔔6番目の天使「オリ」cv.柊木アカネ* https://nana-music.com/users/7275860 ⛓️‍💥7番目の天使「カーリ」cv.北斗七星 https://nana-music.com/users/5151832 🧊8番目の天使「サフィ」cv.オムライス https://nana-music.com/users/1618481 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 前節 Ⅰ. 忘れたのか？『地獄は永遠』 (楽曲: ⛪️🪬🔔⛓️‍💥🧊You didn't know〖1〗/Hazbin Hotel) https://nana-music.com/sounds/06d0918b 次節 Ⅲ. 選択 (楽曲:⛓️‍💥🧊ミザン/バルーン ぬゆり) https://nana-music.com/sounds/06d15b00 #ロマルニア帝国の聖典より #HazbinHotel #ハズビンホテル #ハズビンホテルへようこそ