🩵Angee Recital🏛

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🩵 Though forgotten all promises we keep 🏛 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第4部〖失楽園:ロマルニア帝国の聖典より〗 Ⅱ.伝導 　ホロンは中央都市の地主の娘として生まれた。敬虔な信徒であった父の影響を受け、幼い頃から誠実に生きてきた彼女は、十五になった年に神父メギドと出会った。父のお使いで訪れた聖堂に、彼は居たのだ。 　彼と初めて会った日のことを、ホロンは数年経った今でも昨日のことのように思い出せる。優しい口調でホロンを中へ招き入れ、その深い海のように穏やかな声色で聞かせてくれた、天界の美しいお話の数々。目を輝かせて聞き入るホロンに、彼は微笑んで手を差し伸べた。 「君が望むのなら、ここで神に仕えることも出来る。清き信仰心を持つものならば、神は誰にでも微笑んでくださるよ」 　全てを包み込むような彼の眼差しに、ホロンの胸が高鳴った。これは神のお傍に行ける歓びから来るものなのか、それとも──。 　その時のホロンには、まだ胸を焦がす想いの正体は分からなかったのだけれど、きっと素敵な感情に違いないと思ったのだ。 ‧✧̣̥̇‧ 　しんしんと雪が降り積もる夜半、メギドの容態は悪化の一途を辿っていた。彼の寝床の周りには、神父や修道女たちの他に、近隣の村の人々も大勢集まっていた。彼が人生でどれ程の人々に慕われてきたのかは一目瞭然だ。 「ホロン、気をしっかり持つんだよ。ほら、メギド様の手を握っておやり」 　村の長老がホロンの肩をそっと叩くと、メギドへ声をかけていた周りの人々も次第に黙り、皆がホロンを見つめ慰めるように頷いた。 「皆様、メギド様のためにお集まり頂き、本当にありがとうございます。……メギド様。ご安心ください。わたくしはあなたのお役目を立派に繋ぐと誓います。必ずや、『天使の記録』を完成させてみせます」 　彼の指は力なく、けれど確かにホロンの手を握り返した。虚ろな目に一瞬だけ、かつての柔い光が蘇る。 「ありがとう、ホロン。後は頼んだ。私の、最愛の友よ」 　それが彼の最期の言葉となった。彼は目を閉じると、数時間浅い眠りについた後、陽の光が顔を照らすと同時に天へと還っていった。白く落窪んだ顔は、よく見ると僅かに微笑みを象っていた。 ‧✧̣̥̇‧ 「神様、天使様。彼は今、あなた方のお傍に居るのでしょうか？」 　メギドの埋葬が終わった日の夜、ホロンは聖堂の隣にそびえる丘の上で、満天の星空を見上げていた。星は代わり映えなくちらちらと優しい光を落とし、ほんのりと冷たい一陣の風が、ホロンの頬をそっと撫でた。メギドの話では、1番目の天使様はこの丘から聖堂へ向かって歩いてきたらしい。彼らは、終ぞホロンの元に姿を現すことは無かった。 「わたくしだって、天使様とお話がしたかったのですよ。今だって、メギド様ばかりお先に行かれて。いつまで経っても背中しか見せてくださらないんですから」 　わざと冗談じみた高い声を出しながら、ホロンは必死で上を向いた。星々が連なって滲んで見えるのは、きっと書き物をしすぎて目が疲れたせいだろう。頬を伝う雫のせいではないはずだ。 「一人でも、わたくしは懸命に生きていきます。あなたが残してくださったものを伝えていくのが、わたくしの生きる理由だから」 　唇を噛み締め震えを堪える。星空に向かって高らかに声を上げる。けれど、ひとりぼっちの夜空の下では、強がりも長くは続かなかった。 「メギド様……もう一度、あなたに会いたい」 　彼への想いが溢れ出して止まらなかった。膨れ上がる感謝と、密かに胸にしまっていた恋慕の気持ちを吐き出すように、ホロンは白い息を吐いた。その時になってようやく、彼女は涙を流すことが出来たのだった。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── The island bathes in the sun's bright rays Distant hills wear a shroud of grey (その島はきらめく陽光を浴び、 遠くの丘は灰色のとばりをまとっています) A lonely breeze whispers in the trees Sole witness to history (孤独な風が木々の中で囁きます 〖天使の記録〗を目にした、唯一の証人よ) Fleeting memories rise From the shadows of my mind (儚き思い出が蘇ります わたくしの、心の影から) Sing "nonomori" - endless corridors Say "nonomori" - hopeless warriors (「ノノモリ」と歌う　果ての無い回廊 「ノノモリ」と歌う　絶望した戦士たち) You were there You were there (あなたはそこに居た あなたはそこに居たのです) Am I forever dreaming How to define the way I'm feeling (わたくしは永遠に夢を見ているのでしょうか？ わたくしの想いをどう伝えたら良い？) You were there (あなたはそこに居た) Countless visions they haunt me in my sleep (眠りの中で、幾つもの幻影が現れました) You were there (あなたは、そこに居た) Though forgotten all promises we keep (全ての約束が忘れ去られてしまったとしても、わたくしたちは、守り続けましょう) ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ☸️ホロン cv.中条 瑠乃 https://nana-music.com/users/1791392 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 次節 Ⅰ. メギドによる福音書 〜彼の死後、修道女ホロンが書き記したもの〜 (楽曲: ⛪️☸️探し人の紡ぎ歌/未来古代楽団) https://nana-music.com/sounds/06cd28db 次章 第5部〖カインとアベルと3番目の天使〗 次節 Ⅰ. 人間の世界 (楽曲: 🥂朱隠し/志方あきこ) https://nana-music.com/sounds/06cd9a21 #ロマルニア帝国の聖典より