フクロウ 〜フクロウが知らせる客が来たと〜
KOKIA
🩵 何かが始まる予感 🏛 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第2部〖神様と1番目の天使〗 Ⅱ.暁光 長い長い時を旅した神様とミカは、やがて世界をぐるりと周り、はじまりの地へと帰ってきた。雲がふわりと流れ、風が頬を撫で、花々が目に鮮やかで、馨しい香りが鼻をくすぐる。最初に目を開けた時から随分と見違えた場所には、幾つかの影が立っていた。影は全部で六つあるようで、近づいてみるとそれは、ミカと同じ翼と輪郭を持つきょうだいたちの成長した姿だった。 「アナタたち、もうこんなに大きくなったのですね」 「うん、そうだよ~!」 空と同じ色の髪をくるりと輪っかのようにして結び、顔いっぱいに大きな口が広がった個体が、ミカの問いかけに声を上げた。すると、他の個体たちもこくこくと頷いてミカに駆け寄ってきた。どうやら、目覚めた六つの個体のうち喋ることが出来るのはまだ一体だけらしい。 と、そこでミカは首を傾げた。神様が最初に作った光の玉は、全部で七つあったはずだ。もうひとつはどこに行ってしまったのだろうか。喋ることの出来る個体にそう尋ねると、彼は翼の中に手をやって、両手のひらで持てるほどの大きさの光の玉を見せてくれた。 「こいつだけ、まだなんだ~。今皆で見守ってるとこなの」 「そうだったのですか。では、その子が一番年下のきょうだいですね」 「うん! ボクたち、ちゃんと順番を決めたんだ。ボクが2番目で……ほらほら、キミたちもちゃんと順番に並んでよ」 2番目が大きな口を尖らせてそう言うと、残りの五体は慌てたようにわらわらと列を成す。その姿が可愛らしくて、ミカはくすりと微笑んだ。 「改めて名乗るね。ボクはリエル。2番目だよ。鱗みたいなのがついてる子が、3番目のファエル。耳にヒレみたいなのがある子が、4番目のウリ。頭の後ろに口がついてる子が、5番目のマエル。手のひらに口がついてる子が、6番目のオリ。角が生えてる子が、7番目のカーリ。で、この光の玉が8番目。名前はまだ無いんだ。……どう? 覚えた?」 「ええ。皆一人一人、ちゃんと違うのですね。ワタシは1番目のミカと申します。皆のお兄さん、お姉さんです」 胸に手を当てて誇らしげに自己紹介。するときょうだいたちは顔を見合わせて、ぱちぱちと手を鳴らした。そして発話できる2番目だけが、「よろしく~」と間延びした返事をしたのだった。 一気に幾つもの命に囲まれたミカは、拍手喝采の中僅かに頬を染める。と、その時。じっとミカを見ていた3番目が、ミカの服の袖をくいっと引っ張った。次いで、彼はモゴモゴと口元を動かすと、拙い言葉運びで音を紡いだ。 「た、た、びのおはなし、きかせ、て」 「まあ、3番目もお話ができるように?」 「きっと、ミカの帰還が嬉しかったんだろうね。ボクも聞きたいな~、神様とキミが旅してきた場所のお話。この世界のお話」 二体からせがまれ、ミカは大きな瞳をくるりと一回転させる。そしてすぐに頷くと、その場にゆっくりと腰かけた。 「アナタたちも座って。リラックスしながら聞いてくださいな。長いお話になるから」 ミカがそう零した瞬間、白くぼんやりと光っていた地平線の輪郭が、よりはっきりと光を映し出した。紺のヴェールを纏ったような空が、少しずつ紫色を帯びていく。どうやら、天界に朝がやってきたようだ。眩い光に目を細め、ミカはきょうだいたちへ優しく語りかけるのだった。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ようこそ 深い森の奥 珍しいお客さんね 悪いけど ここから先では 森でのマナーがあるの ほーほー フクロウが知らせる ほーほー 客が来たと ほーほー フクロウが知らせる 何かが始まる予感 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🪬1番目の天使「ミカ」cv.Neumann https://nana-music.com/users/10462832 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 前節 Ⅰ.創造 (楽曲: ⛓Sis puella magica!/梶浦由記) https://nana-music.com/sounds/06cbde8f 次節 Ⅲ.はじまり (楽曲: ⛓️🪬カガリビト/millstones) https://nana-music.com/sounds/06cc1cdd #萩伴奏 #KOKIA #ロマルニア帝国の聖典より
