忘れじの言の葉
未来古代楽団 feat. 安次嶺希和子
🩵 忘れられることなき物語 🏛 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第1部〖創世:ロマルニア帝国の聖典より〗 Ⅱ.メギドによる福音書 影のように黒々とした山の稜線から、眩い白が差し込んでいる。開け放たれたカーテンの内側で、その光を顔いっぱいに浴びたエクレシアは、ぎゅっと目を瞑って雨に濡れた子犬のように首を振った。 「おはようございます、エクレシアさん! 今日も素晴らしい朝ですね」 「んん……まだ7時じゃないか。私はいつも9時までぐっすり寝るんだよ」 「修道院の朝は早いんですよ! これでもあたし、起きてから2時間待ちました」 「ええ、じゃあ君は5時に起きてたの? 聖職者も大変だなぁ」 眉を寄せて、エクレシアは不満そうに毛布に顔を埋めた。しかし、すかさず手を伸ばしたニネヴェによってそれはいとも容易く剥ぎ取られてしまう。 「さあ、朝のお祈りをしたら朝ごはんにしましょう。腹が減ってはなんとやらですよ」 「私は朝は食べない派なんだよぅ……」 ぼそぼそと文句を言うが、ニネヴェは何処吹く風だ。エクレシアは、そのままずるずると食堂まで引きずられていってしまった。 ‧✧̣̥̇‧ ニネヴェの作った朝食を一口頬張って、エクレシアは目を見張った。さくさくに焼かれたトーストの上には、幼い頃異国のアニメーションで見たような金色の半熟卵と端がじゅわりと香ばしいベーコンが乗せられている。ぱりっと瑞々しい葉物のサラダも、砂糖とミルクがたっぷり入った珈琲もエクレシア好みだ。特に珈琲は別格。やはり豆を挽いているのだろうか。普段飲んでいるインスタントとは比べ物にならないほど馨しい。 「朝からこんなに食べられるものかと思っていたけれど、朝食も存外良いものなんだな。美味しかったよ、ありがとう」 「ふふっ、どういたしまして。毎朝早起きすれば、毎日食べられますよ!」 「それは随分と心惹かれる誘いだね。まあ考えておくよ。……さて、糖が回ったお陰で頭もすっきりしたことだし、早速『聖典』の解読を始めようか」 「はい!」 片付けを終えた二人は、連れ立って地下へと続く階段を降りていく。地下室の机の上には、昨夜準備を進めておいたエクレシアの研究用機材が乗っていた。エクレシアが『聖典』のページを1枚開き、トースターを横倒しにしたような形の機材の中に滑り込ませると、機材の上部から空中にホログラムの映像が映し出される。そこに映っていたのは、切れ長の瞳が麗しい青年の姿だった。 「この方は、どなたでしょうか」 「『聖典』を記したメギドという神父だよ。機材に搭載されたAIが、『聖典』の情報から彼の容姿を再現したものだ」 「へぇ、最近の技術はすごいんですねえ」 「使い方を誤ると戦争にまで発展する、おっかない代物でもあるけどね」 腕を組み感嘆の声を上げるニネヴェとは異なり、エクレシアは淡々と告げる。そのままホログラムの真ん中に指で触れると、何とメギドの像が口を開いた。 『名も知らぬ未来の同胞よ。この書を君たちに捧げる。私の名はメギド。ロマルニア帝国の中央都市にて、神に仕える者だ』 メギドの像は、低く穏やかな声音で語り始める。まるで神話を聞いているかのような厳かな口調に、エクレシアもニネヴェも固唾を飲んで静止していた。 『私はこの地に赴任した頃より、七人いるとされる天使様の逸話を収集していた。当時は信ぴょう性の高い話から単なる噂話であろうものまで様々だったが、ある出来事をきっかけに、私はこの話が全て真実であると確信した』 メギドは言葉を切ると、ふうっと息を吐ききった。どことなく緊張したように見えるその面持ちは、まるで目の前に生きた人間がいるかのような錯覚を与えた。エクレシアはそこでハッと我に返ると、椅子を引いて腰掛け、ポケットから小型の電子機器を取り出した。ニネヴェにはそれが何の機械なのか分からなかったが、おそらくこれから語られる言葉を記録するためのものなのだろう。 エクレシアは、再びメギドを見つめ始めた。メギドは意を決したように息を吸い込むと、はっきりとした声で確かにこう言った。 ‧✧̣̥̇‧ 『私は、天使様と言葉を交わしたことがある』 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🪽言の葉を紡いで まどろんだ泡沫 ⛪️旅人迷いこむ おとぎの深い霧 🌬差し伸べた手のひら そっと触れる予感 🪽受けとめてこぼれた ⛪️光の一滴 🌬面影うつろって 微笑んだ幻 想いの果てる場所 まだ遙か遠くて ⛪️🪽🌬求め探して彷徨って やがて歌われて 幾千幾万幾億の 旋律となる 🌬いつか失い奪われて 消える運命でも ⛪️🪽それは忘れられることなき物語 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ⛪️エクレシア cv.唄見つきの https://nana-music.com/users/1235847 🪽ニネヴェ cv.灯 https://nana-music.com/users/10533672 🌬メギド cv.ラムネ https://nana-music.com/users/7020177 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 前節 Ⅰ.キュレーネ女子修道院 (楽曲:🏛️エデンの揺り籃) https://nana-music.com/sounds/06cb165f 次節 Ⅲ.天啓 (楽曲: 🌬️暁の鎮魂歌/Linked Horizon) https://nana-music.com/sounds/06cb68a3 #忘れじの言の葉 #未来古代楽団 #グリムノーツ #スクエニ #バナナOC #ロマルニア帝国の聖典より
