nana

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🎡 この街の異様なモラリティーなんだ 🎠 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第19幕『博打』  ヤーナがカジノハウスWITHに戻ると、聞きなれた鋭い笑い声が耳を貫いた。 「ギャハハッ、また俺の勝ちだなァ!」 「約束通り、今日はダンの奢りだな」 「もう、ツイてないわね。分かったわよ。ついてきなさい」  目を転じた先には、数刻前話題に上がったばかりのシェスタ、そして彼の悪友たちが屯していた。ヤーナが眉間に皺を寄せて彼らを見ていると、悪友の一人でありWITHの同僚でもある青年ラウルが、ヤーナに気づいて右手を上げた。 「お帰り、ヤーナ。俺は今から少し出てくる。こいつらと、飲みに」 「フン、どうせ朝まで帰んないんでしょ」 「分かってるわねえヤーナちゃん。てことでラウル借りてくわねぇ」  そう言って微笑んだのは、サーカス団ISに所属する赤髪の女性、ダン。ヤーナより随分前から地獄にいるはずなのに、全く腐らず、むしろ自由奔放に過ごしている彼女のことが、ヤーナはあまり好きではなかった。ダンから目を逸らし、今度はシェスタを睨みつける。 「別に、勝手にすれば。君たちのことはどうでもいい。それよりシェスタ、君だよ君」 「は? 俺? なんだよ嬢ちゃんよォ」  賭けに勝ったのが嬉しいのか、シェスタはいつもに増して上機嫌に、ヤーナの肩に骨ばった手を回した。顔面の左側に大きく広がる火傷跡が、ヤーナの視界からも生々しく見える。 「夜遊びばっかりしてたら、そのうちカミリアに消されるよ」 「はっ、何を言い出すかと思えばンなことかよ。俺にはウォルターっていうダチがいんだ。問題ねェよ。いざとなりゃあアイツが何とかしてくれだろ」  シェスタはヤーナを馬鹿にするかのようにケラケラと声を上げると、ヒラヒラと手を振って悪友たちと出ていってしまった。きっと、酒場蔓延るレインダル通りで飲み倒すつもりだろう。 「馬鹿だなぁ、ほんと。ウォルターには権限なんて殆ど残ってないのにさ」  舌打ちをしながら毒づくと、ヤーナはフロアの最奥にある古びたエレベーターに向かって歩き出した。 ─────────────  どれだけ酒を煽ったか、最早覚えてなどいない。やっとのことで悪友を送り届け自宅に戻ると、シェスタはそのまま倒れ伏し眠りこけてしまった。  次に意識が戻った時、シェスタは酷い頭痛を覚えた。完全に二日酔いだ。壁伝いに何とか起き上がると、ふらふらとリビングへ向かう。扉を開けると、そこには呆れ顔でこちらを見ながら食事を摂っている妻──イリスの姿があった。 「おはよう。とは言っても、もう昼過ぎだけど」 「何も玄関口で放っておくこたァねェだろうがよ」 「貴方重いしお酒臭いもの。そりゃ放っておくわよ。はい、これ飲んで」  イリスは卓上に置いてあったカラフェからカップに水を注ぐと、シェスタの席の前にドンッと音を立てて置いた。冷たい水を飲み干して、シェスタはイリスの目の前に座る。 「俺の飯は?」 「自己管理も出来ない泥酔男に出す食事はありません。自分で何とかしてちょうだい」  ピシャリと言い切って、イリスは食べ終わった食器を片付けるために席を立った。シェスタが何度声をかけても、イリスはツンとそっぽを向いたまま、口を聞いてくれることはなかった。怒りを露わにするように、あからさまに大きな音を立てて閉められた扉を見つめ、シェスタは情けなく机に突っ伏した。 「あーあ、釣れねェ女だなァ……ん?」  そこでシェスタはある物に気がついた。恐らくイリスが郵便受けから纏めて取ってきたであろう手紙の山の中に、一つだけ真っ赤な封筒が紛れていたのだ。宛名に自身の名前が刻まれていることを確認したシェスタは、流れるような手つきで封を切った。  それはウォルターからの手紙……いや、警告だった。彼らしい淡々とした文面に目を通したシェスタは、途端に手紙をぐしゃりと握り潰した。わなわなと震える口元、怒りを孕んだ眼光が端正な文字を捉えた。 「成果を出さなきゃ解雇するだと……? あの野郎、ふざけんじゃねェ」  居場所を失った魂の末路は、今まで嫌という程見てきた。悪魔への奉仕が不十分だと判断されたものから、反論の余地なく灰にされていくのだ。実際、友人だった者が目の前で消されるさまを見たこともある。  けれど、自分だけは大丈夫だと思っていた。どれだけ堕落しようと、悪行の限りを尽くそうと、AMに寄生してさえいれば、シェスタの日常は守られる。あの気の良い支配人に、シェスタを追い出すことなど出来ないだろうという慢心から来る自信だった。  しかし今、ウォルターはシェスタを見限ろうとしている。AMの利益にシェスタの存在は邪魔だとでも言いたいのか。 「他に行く場所なんかねェってのによ……」  ぽつりと呟いた言葉を拾ってくれる人はいない。いくら好き勝手騒いで暴れ回ったところで、最後に残るのは結局孤独な自分自身だけだ。 「俺ァいつの間に腑抜けちまったんだろうなァ」  昔は……生きていた頃は、こうでは無かった。最低な人間ではあったけれども、けして抜け殻のようではなかった。シェスタは手紙を破り捨てると、イリスが閉めていった扉に手をかけ、外へ向かって歩みを進める。何をすれば良いかはまだ分からない。けれど、このままでは確実に全てを失う事になる。あの時のように。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 👗あれこれ吐いてばら撒かないと寝られやしない 🎰やり切れない血反吐をたんとぶちまけないと釈然としない 👗一生そうして 心臓を投げ合って 🎰せせら笑うのが 👗🎰この街の異様なモラリティーなんだ 👗セルフィーこそがすーべてなのと言う少女に 気まぐれな同情だとかサブカルチャーが着弾する 🎰生憎の予報ですが本日、東京一体の空には 警報級の悪巧みが降る様です 🎰白昼堂々 駅のホームでは沢山もの 現実感が彼の背中を線路内へ蹴落としてる 👗人一人の命がエンタメのように さも折り込みチラシみたいに 消しカスとなって浪費コンテンツの犠牲となる 👗🎰さあ、喧嘩しようぜ 喧嘩しようぜ インプレッション次第でミサイルをぶっ放して さあ、喧嘩しようぜ 喧嘩しようぜ 🎰正当性なんて後でテープでくっつけろ ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 👗ヤーナ(cv:まぁる。) https://nana-music.com/users/2692190 🎰カミリア(cv:ヒイロライカ) https://nana-music.com/users/9203821 〖ILLUSTRATOR〗 日向ひなの https://nana-music.com/users/2284271 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第18幕『試練という名の妨害』 https://nana-music.com/sounds/06b35b0f 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第20幕『閉塞感』 https://nana-music.com/sounds/06b494d9 #AMUSEMENT_AM #Neru #SNOBBISM

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