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🎡 うるさいファンファーレで街を襲え 🎠 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第17幕『叫』 　パレードのためのフロート車作りは順調だった。双子やISの少年たちが声を合わせて木材を運ぶのを横目に、ミューは倉庫の端で黙々と部品の数を数えていた。 　生前から、何処へ行ってもあぶれてしまう子で、人との距離を上手く測ることが出来なかった彼女だが、地獄に来てもその根本は変わらないらしい。こうして大人数の場に放り込まれると、自然と孤独になってしまう自分がいる。 「……これが罰なのかもね」 　誰にともなくそう呟く。先生によく似たスーのことを知りたくて近づいてはみたは良いものの、結局彼も自分のことなど見てはくれなかった。彼が見ていたのは、もっと大きな『組織』だ。ミューを操る糸の先、言うならばAMそのもの。ミュー自身は、ただの駒に過ぎなかった。 　諦めに似たため息をついて、ミューはポケットからもう一つキャンディを取りだした。すると、不意に細く綺麗な指が現れ、瞬く間にその包みをかっ攫ってしまった。ミューが目を丸くして顔を上げると、そこには先程あしらったはずのヤーナとかいう少年が立っていた。彼はにんまりと笑って包みを開けると、ミューの目の前でこれみよがしにキャンディを口に放り込んだ。 「うーん、なんか痺れて美味しくなーい。ビミョー」 「人のもの勝手に食べておいて、随分な言い草なのね」 　ミューは頬を膨らませてヤーナを睨みつける。そのままくるりと背を向けて部品の計測に戻った。どうせヤーナのような軽薄な人物は、すぐにこちらの興味を無くして去るだろう。それまで無視をしてやり過ごせば良い。 　そう思ったのに、ヤーナの気配は全くもって消えることは無かった。痺れを切らしたミューが振り返ると、彼はミューが手をつける予定だった残りの部品の計測を進めていた。まさか手伝ってくれていたとは夢にも思わず、ミューは暫くの間手を止めてぱちぱちと瞬きをした。すると、視線に気がついたのかヤーナも手を止めてゆっくりこちらを見た。怪しげな光を放つマゼンタの瞳が、からかうようにキュッと細められた。 「何？ 僕が可愛くて見とれちゃった？」 「そんなわけないのね。……でも、手伝ってくれてありがとう」 「へー、意外と素直じゃん」 　ヤーナは鼻にかける笑い声とともにそう零すと、ミューの近くに座り直して計測を続ける。何となく、彼だけはずっとこの場所に居てくれるような気がして、ミューは出処不明な謎の安堵感を覚えた。誰かから歩み寄ってもらったのは、実に久しぶりのことだ。今はそれが素直に嬉しかった。 　倉庫でフロート車を作り始めてから一ヶ月。罪人の前には、異様な存在感を放つ立派な完成品がそびえ立っていた。 「試し乗りをして壊れなければ完成ですね」 「やった！ アタシ一番最初に乗りたい！」 　ぴょんぴょんと飛び跳ねるゾーイの隣で、リヴィアとミラも真似をして小さく跳ねている。どうやら、制作期間を経て彼らの間には友情が芽生えたらしい。幼稚なところが似た者同士の彼ら。類は友を呼ぶと言ったところか。はしゃぐ三人の背後では、ネヴァだけが面白くなさそうに膨れている。恐らく妹を取られて悔しいのだろう。彼は、リヴィアを押し出すようにして間に割り込むと、ゾーイと共にフロート車に乗り込んでしまった。 「あっ、僕らも乗せろよ！ 馬鹿！」 　長い金のお下げ髪を振り回してギャーギャーと騒ぐリヴィア。しかし、ネヴァは彼には目もくれず、真っ直ぐにミューを見つめていた。 「嫌だね。どうせ一緒に乗るなら……ミュー、こっちおいでよ」 　長い袖で手招きをされ、ミューはきょとんと首を傾げる。 「ミューは別に、目立ったことは何もしていないのね」 「でも、最初にこの作戦を持ちかけてきたのはあなたですよね？」 　とん、と背を押され次いでスーの明るい声が降ってくる。 「実質リーダーみたいなものでしょう。乗ってきたらどうですか」 　彼のにこやかな笑顔の裏には、いつも打算と野心が渦巻いている。けれど、今発したこの言葉には、彼へのメリットはゼロだ。きっと本心からの発言なのだろう。 「それじゃあお言葉に甘えるのね」 　ミューは薄桃の唇だけを僅かに引き上げて、そのまま階段を昇っていく。フロート車の上で待っていた双子と手を取り振り返ると、遥か下で仲間たちの顔がよく見えた。その表情はどれも皆、罪人とは思えぬほどに清々しかった。 　それから数日後。ジェルトヴァ通りはカラフルな喧騒に包まれていた。サーカスの演目とテーマパークのショーステージを混じえた華やかなパレードが街を練り歩く。悪魔も罪人も皆顔を上げ、何だ何だと光に群がり始めた。 　狂喜の叫びが轟く街の中。その中央で笑顔を振りまく三人の少年少女たちは、彼らの目にどう映ったのだろうか。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🎬大体曖昧な感情労働を想像して 結局銘々が命令だ なりふり構わん徴兵制 ✂️ほら狂った呪いだ 次は誰だダレダレダって こんなザマで勝てるわけないやんね 🪡🧵バウバウ 🧵僕が僕の心臓を　君にあげるから もう一度溶かしてよ　この胸のざわめきを 🪡いつか解いてよ　この解けない呪いを 🍭もう一度その胸で　ぎゅっと抱いて 🎡さあさ 悪名よ馳せて回れ 身を焦がして粉にして街に響け 🪡止まぬ雨のような🍭明けぬ夜のような 🧵うるさいファンファーレで街を襲え 🕸ああ夢見心地のときが終わり 全部見つけ出して壊したとしても 🪗知らない誰かが口火を切って 旗を奪って焦がすんだろう 🎡さあさ 悪名よ馳せて回れ 身を焦がして粉にして街に響け 🎢止まぬ雨のような明けぬ夜のような 🪡うるさいファンファーレで街を襲え 🎡うるさいファンファーレで街を襲え 🍭それを孤独と知ったのは 🧵君のせいだ ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 🎢ファニイ(cv:中条瑠乃) https://nana-music.com/users/1791392 🎬ウォルター(cv:yuma*) https://nana-music.com/users/2381215 🪗ユナ(cv:nagi) https://nana-music.com/users/2014957 🪡ゾーイ(cv:海咲) https://nana-music.com/users/579307 🧵ネヴァ(cv:ラムネ) https://nana-music.com/users/7020177 🍭ミュー(cv:唄見つきの) https://nana-music.com/users/1235847 ✂️シェスタ(cv:桐生りな) https://nana-music.com/users/6037062 🕸イリス(cv:RAKKO) https://nana-music.com/users/5226056 〖ILLUSTRATOR〗 中条瑠乃 白水 https://nana-music.com/users/10113554 えりざ https://nana-music.com/users/2137656 秋ひつじ https://x.com/akhtj0801 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第16幕『カプセルの墓石』 https://nana-music.com/sounds/06b1f7e1 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第18幕『試練という名の妨害』 https://nana-music.com/sounds/06b35b0f #AMUSEMENT_AM #PEOPLE1 #DOGLAND #チェンソーマン #むく伴奏