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🎡 見つめ、会えたら 🎠 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第15幕『安心材料』  ミューたちが、ジェルトヴァ通りの外れにある倉庫に足を運ぶと、そこには既に十数人の罪人が待っていた。ファニイやユナを始めとしたAMの従業員の他に、ミューの見知らぬ者たちも何人かいるようだ。 「あの子たちは誰なのね?」 「うちの団員たちです。言ったでしょう、人手をお貸しすると」 「君がミュー? 僕はリヴィア。よろしくね〜!」 「僕ミラ。キャンディちょうだい」  スーが彼らに向かって手招きをすると、人懐っこそうな金髪の少年リヴィアと、ぼんやりとした雰囲気の白髪の少年ミラがパタパタと足音を立ててやってきた。ミューは、ミラにせがまれ苦い顔をしながらも、服のポケットに入っていたキャンディを差し出す。 「よろしくなのね。これをあげたからにはしっかり働いてもらうのね」 「やったー!キャンディだ!」 「むぐぐ」  ミラは早速口いっぱいにキャンディを詰め込んでいる。意地汚いなと思いながら、ミューは反対方向に視線を向けた。団員──サーカスのメンバーの他にも、スーは人手を用意してくれたようだった。倉庫の隅で一人不機嫌そうに腕を組む、エメラルドグリーンの髪の少年を見つけた。他とは違う雰囲気を感じ、ミューは彼に駆け寄ってみることにした。 「あなたは誰なのね?」 「……まず先に名乗るのが礼儀でしょ?」 「テーマパークAMのミュー。よろしくなのね」 「ふん。無能集団の一員か。僕はカジノハウスWITHのヤーナ。わざわざ手伝いにきてやったんだ。ヤーナ様って呼んでいいよ?」 「お断りなのね」  どうやら酷く傲慢な罪人を引き当ててしまったらしい。話しかけなければ良かったと僅かに後悔しながら、ミューは彼に差し出そうとしていたキャンディを自らの口の中にいれた。 「あっ、なんで食うんだよ! 僕にくれるんじゃなかったわけ?」 「あなたみたいな高慢ちきな子、嫌いなのね」 「はぁ〜!? 何その態度! むかつく!」  背後からヤーナが地団駄を踏む音が聞こえてくるが、ミューは気にも留めなかった。舌先に甘ったるくてヒリヒリとした感触が広がっていくのを楽しみながら、彼女は早速木材のひとつに手を伸ばす。  喧騒の中、一人黙々と作業をしているこの感覚は、はるか昔の苦い思い出と一致する。あまり気持ちの良いものではない。 「……そういえば、先生に出会ったのも、こうして一人でいる時だったのね」  呟いた声は、わいわいと騒がしい罪人たちの声にかき消された。 ───────────────  ミュリエラ・ミシリエは、とある北国の首都に生まれた。裕福ではないが貧しくもない、ごく普通の中流家庭の娘として育った彼女は、どこにでも居るありふれた少女になった。  彼女が人と違うところを一つ挙げるとするならば、友達が一人もいなかったことくらいだろう。ミュリエラはとても内気で、その上感情を顔に出すことが苦手だった。それ故に、クラスメイトたちは彼女を『不思議な子』として位置づけ、距離を置くようになったのだ。  けれどミュリエラは平気だった。元々一人で静かに過ごすのが好きだったし、クラスメイトたちも話しかければきちんと言葉を返してくれた。けっして排除されているわけではない。ミュリエラは孤独を好んでいた。  しかし、やはり寂しくなる時もあった。例えば学期毎に行われるピクニック。夏休みのボーイスカウト。年に一度のホームカミングパーティ。他の生徒たちとっては楽しみで夜も眠れなくなるようなイベントの数々も、ミュリエラには苦痛でしかなかった。日常生活では上手くやれても、仲の良いグループで固まって過ごすような行事をやり過ごすのは辛かった。  その夏のボーイスカウトでも、ミュリエラは一人で薪を割っていた。周りの女の子たちが談笑しながらお菓子を食べているのを、木陰から遠目に見てため息をついた。  彼がミュリエラに声をかけてくれたのは、そんな時だった。 「君、一人? 他の子達と一緒に居なくていいの?」  整った顔立ちの青年が、蹲るミュリエラを覗き込んだ。皆と同じ、何の変哲もない紫色の髪と青い瞳をしているはずなのに、彼の姿は何故だかとても神々しく見えた。 「……私、友達いないの」  やっとのことでそれだけ言うと、ミュリエラは顔を伏せた。けれど、彼はその場を退くことはせず、そっとミュリエラの隣に腰かけた。 「実は僕もなんだ。教育実習でボーイスカウトの指導にも参加するように言われたんだけど、他の実習生たちと馬が合わなくてさ。……僕はヴィクトル。ヴィクトル・クォーレ。君の名前は?」 「……ミュリエラ・ミシリエ」 「ミュリエラ! いい名前だ」  ヴィクトルと名乗った青年は、そう言って涼やかに笑うと、ポケットから紫色の包み紙のキャンディを取り出した。 「ねえ、チョコレート味のキャンディは好き? 僕の大好物なんだ。お近づきの印に君にもあげる」 「あ、ありが、と……」  拙い言葉とともに、光沢の美しい包み紙を受け取った。初めて食べるその味は、何処か異国のお菓子のような、強く粘り気のある甘さが特徴的だった。蕩けるように口の中を満たす、幸せの味だ。 「おいしい……」 「でしょ? ふふ、もっとあるよ」  ヴィクトルは心底嬉しそうにポケットを探って、色とりどりのキャンディを手のひらに広げてみせた。自分より何歳も歳上のはずなのに、彼の挙動は幼い少年のようにあどけなく、ミュリエラの顔からも思わず笑みが溢れてしまう。 「あ、笑った! 君は、花が咲いたように笑うんだね」  ヴィクトルの口からサラリと放たれた殺し文句に、ミュリエラはパッと頬を染める。チョコレートキャンディよりももっと甘い、初めて知る感情の花開く音がした。  それから、ミュリエラの毎日は劇的に変化した。ヴィクトルと二人で過ごす時間は、彼女から孤独の劣等感を消し去ってくれた。ミュリエラはヴィクトルを先生と呼び慕い、ヴィクトルはミュリエラを教え導いた。  ボーイスカウトが終わったあとも、二人は頻繁にやり取りを続け、週末には遊びに出かけることもあった。 「なぁにミューちゃん。彼氏でも出来たの?」 「そ、んなんじゃ、ない」  意味ありげに微笑む姉の目を掻い潜り、ミュリエラは毎晩ヴィクトルに電話をかける。大抵は、学校の授業で分からなった問題を教えてもらう程度だが、他愛のない会話がしたくて通話を繋ぐこともあった。  そんな風に彼と過ごすうちに、あっという間に一年が経った。ミュリエラはハイスクールの最高学年に進学し、ヴィクトルは晴れて一人前の教師になった。 「就職おめでとう、先生」 「ありがとうミュリエラ。君も進路で忙しい時期だろうに、祝ってくれるんだね」 「もちろん。他でもない先生の大切な日だもの」  向かい合わせに座って、いつものように語らいながら食事をする。もしかしたら、カップルに見られているかもなんて淡い期待を抱きながら、ミュリエラはヴィクトルの行く先を心から願った。  レストランの中央につけられたモニター越し、戦火の足音が近づいていると警告する声は、幸福のさ中にいる彼女に届くことはなかった。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 本当は分かっていた いけないことだったって、分かっていたのに この手をすり抜ける全部が愛に見えたの 確かめていた言葉が形になって、揺れるだけ 弾いて、描いて きっと、それだけ つまらないな、正解の読み合わせ あとちょっとで分かりかけていたのに 飲んで、吐いて 全部忘れちゃえ 水をまとった本心と鏡合わせ  見つめ、会えたら Overdose 君とふたり やるせない日々 解像度の悪い夢を見たい Overdose 君とふたり 甘いハッタリ Don't stop it music,darling ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 🍭ミュー(cv:唄見つきの) https://nana-music.com/users/1235847 〖ILLUSTRATOR〗 白水 https://nana-music.com/users/10113554 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第14幕『賢い兄と無邪気な妹、二人はいつでも……』 https://nana-music.com/sounds/06b0804a 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第16幕『カプセルの墓石』 https://nana-music.com/sounds/06b1f7e1 #AMUSEMENT_AM #コラバン #なとり #Overdose

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