エミリーと15の約束
🔮シオン(cv.???)/majiko
エミリーと15の約束
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10番目の私〜人格統合経過報告〜『10.エミリーと15の約束』
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🔮9番目-シオン
「うう、う……」
精神世界に戻って最初に見たのは、顔を覆って泣いているアオイの姿だった。彼女の隣には、たった数時間前までキキョウが寝ていたはずだが、今ではその空間はもぬけの殻になっていた。
「あの子も行ってしまったのね」
私は呟くと、そっと膝をついてアオイを抱きしめた。涙は出てこなかったけれど、心にぽっかり穴が空いたようだった。アオイの背の向こうでは、いつの間にか8つに増えた✕印がギラギラとその存在を主張していた。
私たちには、もう幾許の時間も残されてはいなかった。私は抱きしめていた手を解き、アオイの肩に手を置くと、どうか届きますようにと願いながら口を開く。
「アオイ。私の話をよく聞いて」
「……?」
「この身体……白石の主人格はあなたよ。あなたの名前は、白石 蒼依。よく思い出して。あなたは元々1人だった。私たちは──」
「嫌っ!」
言葉を続けようとした瞬間、私の手は勢いよく振りはらわれた。アオイは、涙を流しながらも歯を食いしばって首を振る。
「嫌だ、思い出したくない! 私は、私たちは10人でひとつでしょ? 皆それぞれ得意なことを持ってて、違った優しさを持ってて、協力しながら生きてきたでしょ? ……消えちゃわないで。ずっと傍にいてよ……」
アオイは必死に語気を保っていたが、その声は段々と涙混じりのノイズに変わり、最後は弱々しく掠れたものになっていた。出来ることなら、もう一度この手で彼女を安心させたかった。意地悪を言ってごめんなさいと。もうどこにも行かないからと。
けれど、彼女のためにも、私はここを去らなければならない。私は全てを思い出してしまった。
「……アオイ。今、この身体は抜け殻よ。誰かが表の世界に行かなければ、いずれ死んでしまう」
「いや……」
「行きなさいアオイ。向こうには先生がいる。頼れる大人も、友達になれる子も、沢山いる。……だからお願い」
小さく息を吸い込む音が聞こえた。アオイはもう私を否定しなかった。ああ、この子は本当に心優しい、素敵な子だ。あとは私が、背中を押してあげるだけ。
「振り返ってはだめよ。ここから先の人生は、あなただけのもの。胸を張ってお行きなさい」
「……うん……うん、ありがとう」
小さな後ろ姿が、涙を拭って光の中へと歩き出す。その勇姿を見届けることが出来たのが、素直に嬉しかった。
私の身体が少しずつ消えていく。まだ思考が出来るうちに、私は【彼女】に向かって思いを託した。
「アオイを守って、導いてあげてね。……ジュン」
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🔮シオン(cv.???)
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13. 大人になったら私を忘れて、
あなたの価値観があなたを支えなくちゃいけない。
理屈じゃ守れないものが沢山あるの。
でもあなたが信じるものが、
あなたが愛するものが、
何よりも大事な真実になるのよ。
14. いつ何時も笑顔でいなさい。
笑顔はあなたを強くする。
でも悲しい時、苦しい時、
大切な人の前で泣きなさい。
15. 恐れる必要などないわ。
寂しく思うことはないわ。
あなただけの人生を手に入れなさい。
間違いだらけでもいい。信じれるのは自分だけ。
でもその全てに後悔が出来る人間になりなさい。
エミリー。
エミリー。会いたい。会いたいよ。
愛してる。愛してる。
愛してる。
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サムネイル:ぴざめーかー 様
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