#星詠みの詩
【ケイローンの秘密】
昔。そう、300年位前の、うんと昔の出来事。
その時ボクは先代サジタリアスと先代カプリコーン、そして蛇使い座の星詠みであるオフィウクスの担当監督官だった。
オフィウクスにはアスクレピオスっていう監督官が別にいた。けど、あいつは名医で忙しいからほとんどボクが面倒見てたんだよね。ま、ボクがあいつの師匠でもあるしちょうどいいっていうか。
オフィウクスはすごくまじめで心優しい少女だった。だからこそ、サジタリアスがスコーピオンを殺してしまったあの日。
――あの事件が起こってから、おかしくなってしまったんだ。
仲間だったサジタリアスは星詠みを追放されて、ボクはカプリコーンの、アスクレピオスはオフィウクスの監督官になった。
それからはアスクレピオスに任せていたからあんまりオフィウクスと話す機会もなかったんだけど、だんだん目がうつろになって、悲しい色を宿すようになったのを鮮明に覚えている。きっと、それくらい耐えがたいことだったんじゃないかな。
毎日、事件があった日照りの荒野に足を運んで亡くなったスコーピオンを弔っているという話も耳にしたことがある。
あの子は、自分の命が尽きるまでスコーピオンを忘れまいと必死だったんだろう。
そして、人間界の各地に異常が起こりはじめる。
ある街は干ばつが続き、ある街は豪雨が降り続くようになった。
星詠みたちは日々任務にあたったけれど、効果はほとんど発揮されぬまま世界はどんどん壊れていった。
それでも、あの子はいつもこう言ってた。
「大丈夫。私が、サジタリアスとスコーピオンの分まで頑張るから」
今思えば、無理にでも止めておくべきだったのかもしれないね。
それから一か月がたった頃。星詠みたちの力はどんどん衰え、世界は崩壊へと着実に歩みを進めていた。
それでも止まることはできないから、ボクはカプリコーンと一緒に任務にあたっていた。
その時だった。
悲劇の泉で、オフィウクスが事件に巻き込まれたという話を耳にしたのは。
詳細を聞くと、どうやら任務中星詠みに対する怒りをあらわにした人間たちに囲まれ、大雨を止めるための贄になるよう迫られたらしい。身も心も限界だったオフィウクスは、人間たちの意見を呑んで湖に身を投げたんだと。
その場にはアスクレピオスもいたそうだが、彼は人間たちに拘束されてしまっており、やっとの思いでたどり着いた時には、もう……。
そんな二つの悲しい悲しい昔話、きっと今のサジタリアスもカプリコーンも知らない。
ううん、知らなくていいんだ。
でも『星詠みは一人として欠けてはならない』。
その掟を破った先人たちの罰を、この子たちが背負ってしまっているのはちょっと黙っておけないかも。
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【星詠みの代償】
*サジタリアス
【自分の言葉が他者を傷つける刃に変わる。よくも悪くも、相手の心にダメージを負わせてしまうため、徐々に自身の心がすり減る】
サジタリアスの言葉が強いのはもともとだけど、日に日にエスカレートしている気がする。正論なんだけど、言われると心がズキズキ痛むような感じ。本人も悩んでるみたいだけどね。
*カプリコーン
【徐々に醜い姿に変化していく】
もともと自分のことが大嫌いなのに、それを助長するような「呪い」。元来、ゼウスはとある神の姿がツボにはまって面白かったからその姿を山羊座として残したみたい。だけど、山羊の体に魚の尾だよ?それをこの子も背負うなんて、本当にかわいそうだよねぇ。
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