深海のリトルクライ 3番
sasakure.UK feat.土岐麻子
深海のリトルクライ 3番
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#星詠みの詩
☆アクエリアスの選択→ピスケスをどこか水のある場所で生活させようと試みる
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ガニメデが報告書を記入していると、ガチャリと扉が開く音がした。
音がしたのは、ピスケスが休んでいる部屋だ。確か今は、アクエリアスが一緒だったはずだが。
部屋から、重い足音が遠ざかっていくのがわかる。
労いの言葉をかけようと扉を開けたガニメデは、アクエリアスが両腕に何かを抱えていることに気付いた。
それは、ぐっすり眠ったままのピスケスだった。
その異様な雰囲気に、ガニメデは息をひそめて後を追った。
アクエリアスが向かった先は、村の中央にある大きな湖だった。
月の光だけが頼りであるため、アクエリアスの表情はよく見えない。
「何をするつもりだ……?」
目を凝らした次の瞬間、アクエリアスは抱きかかえていたピスケスを水面にそっと「置いた」。
何をやっているんだ大馬鹿……!たちどころに二人の元へ駆け寄るが、時は待っていてくれない。
とぷんと音を立てて、ピスケスの体が湖に沈んでゆく。
みるみるうちに小さな体は湖の底に飲み込まれて消えてしまった。
「アクエリアス、お前……!」
ガニメデが声を荒げたその時だった。どこからか、子供の笑い声が聞こえてくる。
「ししょー!ガニメデ!みてて!足が動くよ!」
ぱしゃんと派手に水しぶきを上げて水面から顔を出したのは、ピスケスだ。
ピスケスは尾ひれになった両足を器用にはためかせている。
「お前、体は大丈夫なのか?」
「うん!とってもきもちいいよー」
先ほどまでとは打って変わって元気に泳ぎ回る姿に、ガニメデは驚いたような、安堵したような表情を浮かべる。
「彼はきっと、このまま長い時を生きることができる。……この湖に残る伝説の人魚のようにね」
ともに語らい、自由に泳ぎ回り、無邪気に笑う。
その姿は、どの美術品よりも勝る美しさだった。
【ハッピールート「人魚の君とともに」】
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