#星詠みの詩
【ヴァルゴ】
図書館で見た本に書かれている、13という数字が私の中でずっと引っかかっている。
黄道12星座。前にスコーピオンから、実はこの並びには13個の星座があるんだと教えてもらったことがある。いろんな事情があって12星座が有名になってしまっているみたいだけれど。13番目の星の名前は、何だったかな。
そういえば、日照りの荒野でペルセフォネが持って行ったあのペンダント。あれにも13個のラインストーンがついていて、裏面に何か名前のようなものが彫ってあったような気がする。ところどころ掠れていたけれど。そうだ、あの文字列は確か「オフィウクス」。……それにしても、誰が何のためにあの場所にペンダントを残したんだろう。
もし、この本に書かれたことが本当で、星詠みがかつて13人いたのだとしたら。
13人目の星詠みは、今いったい何をしているのかしら。星詠みが13人いたってことは、監督官ももう一人くらいいたのかな。だとしたら、どうして今は存在していないんだろう……?
「むずかしい……」
頭の中の情報を整理しながら本を元の場所に戻し、私はひとまずレオとペルセフォネと合流することにした。
図書館を出てしばらくしたところでレオの姿を見かけたので、レオにわかるように手を振った。
そのはずなのに、レオが全然こっちを見てくれない。ううん、見てるはずなのに、全然目が合わない。
「レオ?ねぇ、レオってば」
声をかけてみても、レオは反応するそぶりもなく、あっさりとすれ違ってしまった。
まるで、この世界から私だけが消えてしまったみたいだ。
「透明に、なったみたい」
小さく呟く。その時、ペルセフォネの大きな手が、私の頭を撫でた。
「ずいぶんと探したわよ。ヴァルゴ」
私の頭に触れるぬくもりで、私の耳に寄り添うその優しい言葉で、澄んでいたはずの視界が滲みはじめた。
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