チェシャーゲーム
Royal Scandal / 奏音69
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#星詠みの詩
【ペルセフォネの秘密】
今の星詠みは知る由もない、13人目の星詠み・オフィウクス。彼女はとってもいい子だった。
仲間思いで、優しい子。だからこそ、スコーピオンの墓標代わりにこのペンダントを残したのかもしれないわね。
人に罵られて、その中でひどく乞われて。仲間であるサジタリアスとスコーピオンを失った心の傷がまだ癒えぬうちに人々にたかられた少女は、歪な願いを叶えるために湖に身を投げてしまった。なんて残酷な最期なのかしら。
蒼天の街のシンボルとなっているブーゲンビリア。花言葉は確か「あなたしか見えない」。
それがアタシたち星の子と星詠みを象徴しているだなんて、とんでもない皮肉。オフィウクスが死んだ街とは遠く離れた地で「恋に溺れた星の精霊と人間の関係」を的確に言い表しているなんて。
始まりの事件だってそうだった。サジタリアスは同じ星詠みであるスコーピオンを愛していた。本来、アタシたち星の子と契りを交わしている以上、他の星詠みに気持ちが傾く、なんてことは起こらないはずなんだけれど。そこはやっぱり、人間の愚かなところね。
仲間をこんなにも愛しているのに、振り向いてくれない彼に、だんだんと憎しみの感情がわいてしまったのね。
オフィウクスだって、大好きなアスクレピオスを守るために、自分が犠牲になる道を選んでしまったんですもの。
星の子も、星詠みも、盲目になりやすい。そんな愚かな生き物だわ。
ふふ……アタシをよく見てくれている可愛いあの子。あなたもまた、アタシに溺れているのかしら。
否、溺れているのはアタシの方かしらね。
あぁ、愛しいヴァルゴ。代償のこともそう、星の子の契りのことも、この世界の均衡のこともそう。
あなたはこんな暗闇を見なくったっていいの。
大丈夫。どんな手を使ってでも、アタシが守ってあげるわ。
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【星詠みの代償】
*レオ
【徐々に理性を失い、人をも食らう獣と化す】
先代レオは完全なる獅子と化して、あろうことが先代ヴァルゴを噛み殺してしまった。先代ヴァルゴも、星詠みとしての加護が薄れていたから、呆気なく亡くなってしまった……今の二人は大丈夫そうだけれど、レオがよくお腹を空かせているわ。気をつけなくちゃ。
*ヴァルゴ
【己の姿を徐々に認識して貰えなくなる。姿が見えなくなる、というよりは見えているのにあたかもそこからいなくなったかのように、存在感が薄れる】
最近、ヴァルゴは「透明になったみたい」と呟くようになった。……きっともう、代償が出ているのね。アタシにはどうしてあげることもできないけれど、アタシは、アタシだけはあんたを見失わない。安心なさい、あんたを一人にすることはないわ。
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