忘れないで
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頭の奥の方がぎゅっと、ちぢこまるような感じのする時がある。眠いのか痛いのかよくわからない心地がする。いつも忘れた頃にやってくるから、たまにしかならないんだと思ってあまり気にしてなかった。
けれど今日はいつもよりひどい気がした。目の前に広がる海のぼんやりとした光の揺らぎが、視界のぼやけが、だんだんと大きくなっていく。眠いのだったらもう帰ろうかな、と思った時。いつもは誰もいないはずなのに、ふと真横に誰かの気配を感じた。振り向くと、私と同じくらいの歳の女の子が、私と同じように隣に座って海の方を眺めていた。暗かったから姿はよく見えなかったけれど、なんだか初めて会ったような感じがしなくて、不思議に思っていた。するとその子は突然、私の方を振り向いた。綺麗な桃色をした丸い瞳が私の視線を捉えると、優しく微笑んだ。笑顔を向けてくれて嬉しいと思うはずなのに、なぜか不安になった。何も話さないでいたらいつのまにかどこかに行ってしまいそうで、とりあえず何か話さなきゃと思った。
「私とあなたって、どこかで会ったこと、あったっけ」
少し間が空いて、その子は私が投げかけた言葉には応えずに、一言だけ呟いた。
「覚えてる?」
しばらくその問いかけの意味がわからなかった。覚えてるって、何を?覚えてるって聞くってことは、やっぱり会ったことがあるの?
でも私は、昔のことは何も覚えてなかった。あるとしてと、そんな気がするというどこまでも不確かな感触だけ。今までずっと、忘れっぽいことを気にする必要なんてないよ、と言ってもらえていたから気にしてこなかった。けれど、自分が自分で思っている以上に何も覚えていないことが怖くなって、目を逸らしてしまった。表情は見えなかったけれど、その子は言葉を続けた。
「大丈夫だよ。私、思い出すまでずっと待ってるから」
不安がる私の心が望んだみたいな優しい言葉が聞こえて、顔を上げた。その子は変わらず微笑んでいた。
ずっと、不思議な時間が流れていた。その子といると心のどこかでは落ち着かないような気がするのに、ここに居てくれて、話してくれることがなぜだかとても嬉しかった。
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lyrics
🌙いつしか、隣に
似た風の人がいたんです。
とても幼く、体も小さく、
一人きりの少女
僕らは毎日、話をしたんだ。
声も名前も、思い出せないけど
雲が流れたとか、花が咲いたとか
それだけで良かったんだ。」
⭐️それは恋よ、グレゴリオ
暗い夜の淵でも、
一人手探りのまま、ゆけるようにと
誰かがそう、残した
淡く燃える光よ、
忘れないで
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Cast
🌙詩月 -Shitsuki- cv.ほしぞら まや
⭐綺星 -Leila- cv.おとの。
Instrument
→ https://nana-music.com/sounds/01e051c4
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