nana

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🎪どんな罪も赦しましょう🎭 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第24幕『つみびとは夢を見る』  名前を呼ぶ声が聞こえる。意識が少しずつ浮上する。薄らと目を開くと、視線の先には心配そうな表情でこちらを見つめるダンの姿があった。 「気がついたのね」 「ここは……」  落ち続けていた時の、内臓が浮くような気持ち悪い感覚のまま、スーはゆっくりと身体を起こす。無意識に目の前の彼女に身を預けようと手を伸ばしたところで、頬に火花が爆ぜるような痛みが走った。ダンが頬を打ったのだ。 「……! 何を……」  何をするんですか、と反射的に飛び出かけた怒りの言葉は、彼女の顔を真正面から見た瞬間、一気に消え失せてしまった。  彼女は唇を震わせながら、青白い顔をして、静かに涙を流していた。いつもの豪快な姿とは似ても似つかぬその様子に、スーは戸惑いながら息を漏らす。 「ダン……?」 「だから、この先には行っちゃ駄目って言ったじゃない」  絞り出すような声を聞いて、スーはハッと辺りを見回す。そこで初めて、自身があの気味の悪い暗闇と繋がる地下通路に倒れていたことを知った。 「……大丈夫。この先には、焼却炉なんてありませんでしたよ」  宥めるように彼女の肩に手を置いた。だが、ダンは諦めたようにやつれた表情のまま、小さく首を振る。 「貴方にとってはね。でも、何か別の物を見たんでしょう? 恐怖と不安をかきたてられるような、おぞましい物を」 「……」  すぐには答えられなかった。サフィから語られたことを、彼女に伝えても良いものかどうか、暫し迷う。だが、沈黙は長くは続かなかった。スーは偽物の器官でゆっくりと排気を吸うと、いつものように、完璧な笑みで応答する。 「実を言うと、何も覚えてないんです」  そう言って唇を閉じた後、安堵したように和らいだ彼女の双眸を見て、スーは悟った。自分の判断は、やはり間違っていなかったのだと。  地下から舞台に戻る間中、ダンはスーの手を握ったまま離さなかった。普段なら否が応でも振りほどいていた筈だが、その日のスーは何故だか、彼女に不満のひとつも漏らすこと無く歩き続けた。先程平手打ちを食らった右の頬が、確かな熱をもって今も尚疼いている。 「初舞台で崩れ落ちた後、そのまま帰って来なくなる子は、少なくないの」  不意にダンが呟いた。先程までの涙の滲む声では無く、何か固い決意を秘めたような、芯のある声だった。 「罪を償う間もなく、不要と判断されれば消えていく。千年以上この場所に縛られて、もう数え切れないほど見送ったわ」  歩みを進める度、苦々しいため息が後を追う。握った手に力を込めて、ダンは吐き出すように続けた。 「閻魔様は、善行を積めば天国街へ行けると仰ったけれど、それはきっと、甘い嘘だったのよ。最初から、救いの門なんて開かれていなかったのかもね」  全てを吐き出し終わり、ダンは足を止めた。彼女の先には、すっかり後片付けが終わり、簡素な空間となったステージが広がっている。そう言えば、一番初めに彼女と訪れたのもこの場所だった。  ダンの手が、少しだけ緩む。スーの指のかたちを撫でるように、優しく包み込むような仕草で手を繋ぎ直した後、彼女は意を決したようにこちらを振り返った。 「でも、まだ少しだけ、信じてみても良いかしら?」 「……よりにもよって、新参の僕に一存を委ねるんですか?」 「ふふ、だって」  ダンは、初めて出会ったあの時のように、あっけらかんと口角を上げた。 「貴方は戻ってきてくれたじゃない。この世界に」  刹那、ステージの真上から、スポットライトが二人を照らした。目も眩むような刺激に、スーは何度も瞬きを繰り返す。瞼の端から涙が零れ落ちる。全く、光が強すぎるせいだ。光源はスポットライトなのか、はたまた目の前の彼女なのか。 「……あ」  どちらにせよ、スーの心に輝きは毒だ。毒を受けて、生理的に流れるのだから仕方ない。仕方のないことなのだ。ライトが消えた後も、涙が止まってくれなかったのは。 「ちょっと、嫌あね」  背をさする手は、死人とは思えないほど、優しい温もりを纏っていた。 「ようやく人間らしくなったじゃない」  呆れたような声音を感じながら、スーは産まれたばかりの赤子のように泣き続けていた。何が彼をそうさせたのか、分からないままに、ただひたすらに。  一つだけ分かったのは、彼女との再会に確かな幸福を覚えたこと、ただそれだけだった。 ───────────────  赤子のように蹲って泣き続ける彼は、ようやく罰を受けるに相応しい魂となった。人間を辞めた後で初めて人間の心を手に入れられたというのは、些か皮肉めいている気がする。そんな事をぼんやりと思いながら、サフィは静かにスポットライトを消した。  いつの間にか背後に佇んでいた影が、浮ついた口調でサフィに語りかける。 「何? あの子はなんで泣いてるの?」 「さあね。この街が怖くなったんじゃないか?」  平坦な口調で呟いて、サフィは愛した顔をじっと見つめる。赤い華の奥に鎮座する瞳は、何千年も変わらぬ色で、嬉しそうに微笑んだ。 「そう来なくっちゃ。なんてったってここは、罪人の行き着く地獄の街なんだから」 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖LYRIC〗 囚われた哀しいmarionette 白銀の夜空仰いで 凍えた指折り数えて 貴方なら何を祈りますか? 例エコノ身ガ朽チ果テタ時ニ 永久ノ忘却ノ果テデ 貴方ハ何ヲ想フ? ソシテ災ガ貴方ニ降リカカル時 私は 化身となれますか? “ Shout it Out, Shout it Out, ” 壊して遊んで どんな罪も赦しましょう “ Shout it Out ,Shout it Out, ” 悪い子でもいい 私が受け止めてあげる “ Shall we dance, Shall we dance, ” 蜜ついばむ様に 羽もがれた天使のSnowDome “ Shall we dance, Shall we dance, ” 贈り物のように 道化に溺れたRefrain ねえ、神様に「おやすみ」 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 ⛓神様(cv:海咲) https://nana-music.com/users/579307 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第23幕『創造』 https://nana-music.com/sounds/0695f839 〖NEXT STAGE〗 ‣‣第25幕『終わり無き地獄街』 https://nana-music.com/sounds/0697e67d #CIRCUS_IS #ブラッディメアリー

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