悪魔の踊り方
こんにちは谷田さん/キタニタツヤ
🎪完璧で、間違った🎭 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第25幕『終わり無き地獄街』 落陽と共に目を覚ます。身支度を整え、舞台裏へ集合。時間より早く着いたつもりだったのに、そこには既に六人の同僚が集っていた。 「皆さんお早いんですね」 「あっ、本当に戻ってきてる!」 「心配した」 スーの声にまずいち早く反応したのは、リヴィアとミラだった。二人はまるで親鳥に餌を求める雛のように、人懐っこい態度でスーを取り囲んだ。 「一週間も行方不明なんだもん。消されちゃったのかと思ったよ」 「それだったらかなしいって話してた」 「……僕一週間も消えてたんですか?」 サフィと不思議な空間で過ごしたのは、体感数時間が良いところだった。まさかそんなに経っていたとは。思わず目を見張ったスーの横で、ダンは昨日と変わらぬ朗らかな笑顔で口を開く。 「良いじゃない。永遠に帰って来られないよりはマシでしょ、泣き虫さん?」 「うるさい」 時間が経ち冷静になってみると、何故この人の前で泣いてしまったのか全くもって理解出来ない。だが、彼女に再会した時妙な安堵感を覚えたのもまた事実だった。ダンはまだ何か言いたげににやりと笑ってこちらを見ているが、どうせこちらを揶揄する言葉しか持ち合わせてないだろう。スーは彼女を鬱陶しそうに振り切ると、今度は奥の方に視線を向ける。そこには、穏やかな笑みをたたえるグレイと、今日も今日とて彼女に付き従うセイルの姿があった。 「お久しぶりです」 「ああ。よく戻ったな。偉いよ」 落ち着いた声と、伸びてきた長い腕。されるがままに頭を撫でられ、嫌な気はしなかった。だが、隣にいる彼女には面白くなかったのだろう。物凄い形相でこちらを睨みつけてきたかと思えば、勢いよく袖を引き寄せられた。 「逃げたのかと思った。約束、忘れてないだろうな」 「勿論。グレイさんを改心させてあげるんですよね」 「なんだ、ちゃんと覚えてるじゃないか」 仮にも記憶を見せてもらった身だ。あのドロドロとした醜い生涯を直視した後では、忘れるという方が難しいだろう。 「二人とも楽しそうだね。何の話をしているんだ?」 流れるような声色でグレイに尋ねられ、セイルは面白い程の動揺を見せる。 「いや、別に、なんでも……」 「ただの世間話ですよ」 声を殺して笑いながら軽く助け舟を出してやる。分かりやすく安堵の表情に変化した彼女を見届け、スーは更に奥へと進んでいく。漆黒の緞帳に寄りかかるようにして、その人はじっと佇んでいた。 「サフィさん」 真っ直ぐに目を合わせてその名を呼ぶと、俯いていた彼はゆっくりと顔を上げる。その顔面は、今日も平然と気味の悪い笑みを貼り付けていた。 「やあやあ、よく眠れた?」 「おかげさまで」 皮肉を込めた口調で呟いた後、スーは僅かに言い淀む。しかし、沈黙も長くは続かなかった。数秒の後再び唇を動かす。 「忘れてません。全部」 「……だろうね」 君は例外だからと零して、長い息を吐く。 「それで、おまえはどうする? 勝手に連れて来ちゃったおれを告発する? 地獄街の秘密をバラして引っ掻きまわす?」 その口ぶりにはどこか投げやりな印象が含まれていた。恐らく、スーが何かしらのアクションを起こせば、彼には相応の罰が下るようになっているのではないか。彼はきっと、スーの行動に賭けている。賭けの相手は言わずもがな、あの恐ろしき神だろう。 この期に及んで己が危険人物扱いされていることに不満を覚えながらも、スーは毅然とした態度で首を振った。 「何もしませんよ。貴方を陥れる理由もメリットも、僕には無い」 「……驚いた。てっきり無差別殺人が趣味なのかと思ってた」 誤解していたと言わんばかりのあっけらかんとした返答に、スーは思わず吹き出してしまう。地獄の支配者に恐れられていたという事実は、存外悪いものでは無かった。 「生憎そんな嗜好は持ち合わせていませんので。長い長い余生、これからもここで楽しませて頂きますよ、座長」 「本当、良い性格してるなぁ」 ふはっと息を漏らして、彼は可笑しそうに口元を抑える。その仕草がどうにもあどけなかった。 「さあ新入り。皆の衣装の準備をしておいで」 「はあい」 間延びした返事を返し、スーは楽屋の方へと歩みを進める。薄暗い廊下に何歩か足跡を残したところで、彼は目の前の白いシルエットに気がついた。 「閻魔様?」 地獄の王ともあろう人が、こんな裏道で何をしているのだろう。そう思い声をかけようとしたところで、ふっと小さな囁きがスーの耳を掠めた。それは閻魔様の歌声だった。あたたかな響きで奏でられた旋律には、聞き覚えがある。サフィの記憶の中で、彼がエマによく歌って聞かせていた、あのメロディだ。 「どうして……エマの記憶は消えているはずなのに」 困惑の独り言に、閻魔様はぴくりと肩を揺らして振り返った。 「新入りくん! どうかした? 妾に何か用?」 「あの、その歌……」 「ああ、これねぇ」 閻魔様は僅かに首を傾げると、恥じらいを持った顔で頬をかいた。 「なんか頭に残ってるんだ。どこで聞いたのかも、誰が歌っていたのかも忘れちゃったんだけどね~」 でも良い歌でしょ? そう微笑む彼女は、何千年と前から変わらぬ姿のままだった。スーは深く息を吸い込むと、予定調和の返事を紡ぐ。 「ええ、とても素敵な歌ですね」 この事は、サフィには秘密にしておこう。きっとスーが伝えなくても、彼は再び彼女に巡り会える。そんな予感がした。 かくして、スーの洗礼はひっそりと終焉を迎えた。彼が加わったとて、地獄街は素知らぬ顔で平然と時を刻む。舞台に降り立った魔性の少年を、嘘のように煌めくスポットライトが照らしている。 我ら罪人サーカス団IS。切り裂かれようが捻り潰されようがお構い無しに、歌って踊って狂い続けるだけの、愉快で簡単なお仕事。 今宵もここで、生者のふりをする。 ─────────────── ちらちらと美しい光の欠片が、浮かんでは消えていく天上。地の底を見下ろしていた天使の一人が、僅かに感嘆の声をあげた。 「見事手なずけましたね。あの魂はサフィの手には負えないと思っていたのに」 鈴の鳴るような声で口走ってから、天使はちらりと真横に目をやった。隣に身を置く御方の、白く長い手は宙に浮いたまま、長い睫毛がゆっくりと上下した。 「少しでも暴走の兆しが見えれば、地獄街を消滅させるつもりでしたが……」 神は、まるで下界を撫でるような仕草でそっと手を降ろした。 「あの子は良い仲間を持ちましたね」 何かを諦めるような、それでいて清々しい声だった。 「さあ、そろそろお茶にしましょうか」 神がそう述べると同時に、高らかな鐘の音が鳴り響く。天国街は今日も快晴だ。 Fin. ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖LYRIC〗 🪞感情なんてもんはどうしても無駄だって悪魔は言った 🧊「何もかも捨てちまえよ」 ⭐嗚呼、快不快も、喜怒哀楽さえも! ♟どうしようもない事実、ヒトは終焉から逃れられない 🎲「誰も抗えない欲望に従え」 👾思考を休めるな 脳ミソを回せ 🦩「誰もお前のことなど見ちゃいないさ」 🎈おかしくなってしまうことをどうして恥じる? 👾お前らに 🎭完璧で間違った踊り方を教えてやるから いっせーので 捨てちまえ、そんな命ならば 🧊🎈♟⭐何十何百何千何万回学習しなさいな 🪞🦩🎲どうしたってさ、空っぽの頭蓋骨だろ 👾わかっているのかい? ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖CAST〗 🧊サフィ(cv:オムライス) https://nana-music.com/users/1618481 🎈ダン(cv:二藍つばさ) https://nana-music.com/users/1665291 ♟グレイ(cv:桐生りな) https://nana-music.com/users/6037062 🪞ミラ(cv:瑠莉) https://nana-music.com/users/6276530 ⭐️リヴィア(cv:日向ひなの) https://nana-music.com/users/2284271 👾スー(cv:くらげ∞) https://nana-music.com/users/1819852 🦩セイル(cv:しぃな♀) https://nana-music.com/users/1278084 🎲閻魔様(cv:はいねこ) https://nana-music.com/users/7300293 〖ILLUSTRATOR〗 秋ひつじ https://twitter.com/akhtj0801 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 〖BACK STAGE〗 ‣‣第24幕『つみびとは夢を見る』 https://nana-music.com/sounds/0696f90d 𝑻𝒉𝒆 𝒅𝒂𝒚𝒔 𝒐𝒇 𝒂𝒕𝒐𝒏𝒊𝒏𝒈 𝒇𝒐𝒓 𝒔𝒊𝒏𝒔 𝒄𝒐𝒏𝒕𝒊𝒏𝒖𝒆… #CIRCUS_IS #悪魔の踊り方 #キタニタツヤ
