星屑
❄ネージュ&🦢イヴ
星屑
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第1節 音楽は魔法
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ネージュがイヴの元へやってきて幾度目かの夏が訪れた。ネージュは幼子から少女と呼べる年になり、人並みの生活や魔法にもかなり慣れてきた。
「イヴ様、ありがとうこざいます」
「いえいえ、私達もいつも農作物を頂いている身ですもの。お役に立てて良かった」
目の前には一面の穀物畑が広がっている。
その畑のかたわらでイヴは人間たちに感謝を伝えられていた。今年の夏はなかなか気温が上がらず穀物が病気にかかってしまったのを、イヴが固有魔法で治したからだ。ネージュも髪と瞳の色を魔法で変えて手伝いについて来た。
「ほら、ネージュ!この前りんごを頂いたでしょう?ネージュからもお礼を」
「……あぁ」
ネージュは首を傾げて記憶を掘り返すと、数日前に食べた赤い木の実を思い出す。
「ありがとう」
「は、はい、も、勿体ないお言葉です……」
言われた通り感謝を伝えるが、真顔のままのネージュに村人たちは緊張した様子で答える。村人の様子にネージュはまた首を傾げた。
「ネージュはまだ少し表情が固いわね」
村からの帰り道、イヴから告げられた言葉にネージュは目を瞬かせた。
ネージュは魔力の流れから相手の大体の感情が分かる。けれど普通の人はネージュのように魔力を感じることが出来ないから、表情や身振り手振りで感情を表現しなければならないらしい。
「言ってることは分かる。けど……」
「ずっと1人で過ごしていたんですもの、仕方ないわよ。人間たちとのコミュニケーションにも少しずつ慣れていけばいいわ」
頭を撫でて答えてくれたイヴは、そこで何かを思い付いたかのようにぱっと目を輝かせた。
「人間たちの生活を勉強するためにも王都に一度行ってみましょうか!西の国の王が玉座について50年になるお祝いの最中なのよ!」
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あくる日、イヴとネージュは王都を訪れた。
人間たちを驚かさないよう、王都の外れまで箒で飛んでいきそこからは徒歩で王都に入る。
「…………!これ、全部人間?」
見渡す限りの人、人、人。
昨日、村もいつもより賑わっていて不思議に思っていたが、王都のお祭りは人の多さもお店の数も比べ物にならなかった。
「そうよ!さぁ早速お店を回りましょう!」
全てが初めてのものばかりだった。きらびやかな洋服を着たたくさんの人々、見渡す限りに並ぶお店、見たことも無い品物、イヴが買ってくれた頬がとろけそうなくらい甘いお菓子。
その全てに目が回りそうになったころ、2人は小さな古びたお店へと辿り着いた。
「あぁ良かった!この店まだ残ってたのね」
「ここは?」
「楽器店よ。小さなお店だけど良いものが揃っている穴場なの」
そう言ってイヴはお店の扉を押す。小さな店内にはたくさんの楽器が並んでいて、ネージュは珍しそうに店の中を見渡した。店の隅には気難しそうな老人が煙草をふかしてきた。
「さ!好きなものを選んで」
「え?」
「箒に1人で乗れるようになった記念!ネージュは音楽が好きみたいだから、前からここでプレゼントを買ってあげたかったの」
その言葉にネージュは首を傾げた。イヴの言葉に胸の奥がソワソワしてムズムズしたが、ネージュにはその意味がよくわからなかった。
「好きなもの……」
「パッと見て1番気になったものでいいわ」
「じゃあこれ」
「素敵じゃない!貴女の髪の色と同じね」
ネージュが選んだのは銀色の笛だ。
初めて歌を教えて貰った時の景色を思い出したから選んだのだが、確かにネージュの髪の色と同じかもしれない。店主の許可をとって吹いてみると澄んだ美しい音色だった。
「……大切にする」
買ってもらった笛を胸に抱きしめながら店から出ると、店の前の大通りに人だかりが出来ていた。興奮した様子で何かを待っているようだ。
「王様がパレードで通るみたいね」
「人間の王様?」
「そう、この国で1番偉い方なの」
そう言ってイヴは嬉しそうに笑う。
しばらくすると豪華な馬車がやっていた。そこから手を振っているのは柔和な表情を浮かべた老人だった。イヴは王様になってから50年と言っていたから、歳をとる人間なら70歳くらいの老人になってるのだなとネージュは思った。
「……違う」
そこにぽつりとイヴの呟きが聞こえた。
「……?イヴ?」
「……っ!いえ、何でもないの」
けれどイヴのその表情は何でもないようには見えなくて。ネージュは胸騒ぎを覚えたのだった。
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その日からイヴの様子が少しおかしくなった。
ネージュの前ではいつも通り明るく振る舞っているのだが、ふとしたときに思い詰めたような表情をしたり、何かを考え込むようにボーッとしている時間が増えた。
そのまま時が過ぎ、冬の気配がする頃を迎えてもイヴの様子はおかしなままだった。
だからネージュはイヴに元気になってもらうために森で好物のベリーを集めることにした。
今頃だとまだ雪の積もってない辺りに少しだけ実が残っているはずだ。珍しいからイヴも喜んでくれるはず。そう考えたネージュはりきってたくさんのベリーを見つけて、カゴに入れて家に持ち帰る。ベリー採りに夢中になって帰る頃には冬の短い太陽はとっくに暮れていた。
「ただいま。ねぇイヴ、今日はこんなに……」
いつもなら夕食を用意して待っていてくれるイヴからの答えがない。ふと見るといつも2人で夕食を食べる食卓に手紙が置いてある。
ネージュは震える手でその手紙を開いた。
『私のことは忘れて』
カゴが床に落ち、ベリーが床にちらばった。
「イヴ!!!!」
そんなものにも目もくれず、ネージュは外へと飛び出した。外にはイヴの姿どころか人影ひとつ見当たらない。見渡せばきぃんと音がしそうなくらい澄み切った空気の中、あの日と同じ一面の雪景色が広がっている。
「イヴ!どこ!?ねぇ、イヴッ!」
いくら叫んでも叫んでも返事はなかった。
こうして、ネージュの前からある日突然イヴは姿を消したのだった。
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❄恋しくて切なくて 眠れない夜の
(🦢夜の)
🦢星屑の集め方 僕等は知ってる
(🦢知ってる)
🦢long night......
(❄星屑の集め方 僕等は知ってる)
❄🦢あの夏の朝 五月の夜を
輝く日々を この胸に飾って
誰に語ろう もう帰らない
優しい君のうた
❄会いたい…
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🦢イヴ・リーンカイン(cv.IRYU)
青みがかった黒髪に、穏やかな緑色の瞳。いつも慈愛に満ちた表情を浮かべている。
西の国の魔女。ネージュの名付け親であり、育ての親であり、初めての魔法の師匠であり、初めての音楽の師匠。人間と魔女が共存できる世界を夢見ており、人間と仲良くなれるように人間を手助けしながら生活している。
困った人を放っておけない心優しい性格。またネージュに勉強を教えられる程の教養も持つ。
【好き】平和、音楽
【嫌い】争いごと
【特技】歌を歌うこと
【ステッキ】白鳥の細工のオルゴール
【固有魔法】
「想いを歌え(スワン·ソング)」
相手の抱く望みを実現する魔法
❄ネージュ(cv.瑠莉)
北の国と西の国の国境にある「白い牙」と呼ばれる山脈で一人ぼっちで育った魔女。
白い髪と赤い瞳と、魔力の加護を受けた特殊体質のため、人間たちから「忌み子」と恐れられ捨てられた。他人と触れ合わずに育ったため情緒が育っておらず、感情の起伏が少ない。
イヴに拾われ、感情やこの世界のことを少しずつ知っていくことになる。
【好き】イヴ、音楽
【嫌い】孤独
【特技】歌を歌うこと
【ステッキ】???
【固有魔法】???
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◇第2章 プレイリスト◇
https://nana-music.com/playlists/3840346
◇素敵な伴奏ありがとうございました◇
*様
https://nana-music.com/sounds/04fd0a69
◇ 𝕋𝕒𝕘 ◇
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#魔女ネージュ #魔女イヴ
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