プロローグ
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
プロローグ
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__ 𝔸 𝕤𝕞𝕒𝕝𝕝 𝕤𝕥𝕒𝕣 𝕥𝕙𝕒𝕥 𝕘𝕝𝕠𝕨𝕤 𝕗𝕒𝕚𝕟𝕥𝕝𝕪 𝕣𝕖𝕞𝕒𝕚𝕟𝕤.✩₊*˚
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
今日も、吐き出せないまま濁っていく悲しみを、少しずつ抱え込んでいる。
あの日から。目を瞑るだけで、幼い少女の死に様が、鮮明に浮かんでくるようになった。
恐ろしいほどに青白い肌。力なく垂れ下がった右腕。二度と開くことのない瞼。
その光景に、初雪が重なった。
決して醒めることのない、大好きな母を喪った日の記憶が。
思い出したくないと願っても、その二つの光景は消えることなく瞼の奥にこびりついて離れてくれない。
思い出したくないと思うことすら、悪いことのように思われる。
息を吸って、息を吐く。
たったそれだけで、胸の奥が詰まって苦しくなってしまう。
それでも泣くことの出来ない雪涙には、感情の逃げ場なんてない。
少しずつ溜まっていくばかりの悲しみは、水底の方から濁って腐っていく。
きっと、それは呪いだった。
一度は死のうとした雪涙が、もう一度生きたいと願ってしまったから。
壊れた世界の中に、生きる理由を見つけてしまったから。
一人閉ざされた暗い世界に灯る、光を見つけてしまったから。
一片の嘘も偽りもなく、願ってしまうのだ。
死にたくない。
ぎゅっと瞼を閉じれば、自分の拍動が微かに聞こえる。
雪涙は、確かに生きようとしている。
生きることは、雪涙にとって罪なのか、それとも罰なのか。
きっとそのどちらもが答えだろう。
母の分まで生きたい、なんてことは言わない。
母が死んだのは、きっと雪涙のせいだから。
その日の悲しみも、後悔も、生涯忘れない。
母が死んだ日でさえ泣けなかった自分を、生涯忘れることはない。
だけど、雪涙は。
自分のために、呪いを背負ったまま、それでも生きていたいと願っている。
星の綺麗な夜だった。
星天界から見上げた空には、星屑までもが映っている。
「人は、死んだらお星さまになるんだよ」なんて。
優しかった頃の母から聞いた物語を、ふと思い出した。
お母さんも、咲羽も、今の雪涙を見守ってくれているのだろうか。
どんな想いを抱えながら、雪涙の歌を聴いているのだろうか。
星空に向けられていた視線を下げると、久しぶりに見た淡い紫が視界に飛び込んできた。
星天界の隅で、灯莉が星空を見上げていた。
再会出来た安堵で心が見たされて、気付くと雪涙は灯莉の方へ駆け寄っていた。
自分がこんなに感情的な人間だったなんて、知らなかった。
「雪涙ちゃん」
優しい声で雪涙を呼びながら、灯莉は振り返って微笑んだ。
初めて出会った日と変わらない、優しい笑顔。
なのに、どうしてか微かな胸騒ぎがした。
この笑顔を、嫌な感覚を、雪涙はどこかで見たことがある。そんな既視感。
表情を曇らせた雪涙を見て、灯莉は不思議そうな顔をしたけれど。
何も言わずに、ただ星空を見上げていた。
そうだ。おかしいのだ。
知らない少女に星天界が壊されようとした後なのに。咲羽が死んでしまった後なのに。
初めて会った日と同じ笑顔を浮かべているのは。
同じように笑っているなら、それはきっとそう装っているだけだ。
雪涙と同じように、溜まって積もっていく悲しみを抑え込んで、笑っているだけだ。
母の話をした時以来、灯莉の涙を見ることはなかった。
雪涙と同じように、灯莉もきっと、自分の感情を一人で抱え込んでいるのかもしれない。
これは、雪涙の勝手な推測にすぎないのだけれど。
星天界で過ごしてきた季節は巡る。
初めてここに来た日は、息さえ白く染まるような寒い冬の日だったのに。
あれから時間が過ぎ、空には夏の大三角が輝き始めた。
「来年の夏も、こうやって星空を眺められるのかな」
灯莉が小さく呟いた。
僅かに震えたその声が、耳に届いて。
遠く離れた二つの点が、繋がった。星座が結ばれるように。
灯莉の笑顔は、最後に見た母の笑顔に、よく似ていた。
寒くなり始めた季節の夜に、ごめんね、という言葉と一緒に向けられた笑顔と、灯莉の笑顔が重なった。
何かを見ているようで、何も見ていない、空っぽの瞳。
母がこの瞳を雪涙に向けた時には、死ぬことを決めていたのだろうか。
雪涙をこの世界に残したのは、雪涙を連れて行かなかったのは、憎んでいたからだろうか。愛していたからだろうか。
同じ瞳を持つ灯莉は、あの日の母と同じことを想っているのだろうか。
――灯莉には、生きる理由があるの?
到底聞けるはずのないその問いは、窓から見えた初雪のように。
飲み込まれた言葉が、胸の奥で反射して溶けた。
𝕋𝕠 𝕓𝕖 ℂ𝕠𝕟𝕥𝕚𝕟𝕦𝕖𝕕...
₊*̥┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈☪︎₊*˚
✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
❄頼りない太陽を
滲(にじ)ませながら
🎈微笑んだ その横顔
見つめていた
❄いつの間にか その全て
視界に入ってくるの
🎈心が波打つ 痛みに
どうして 気づいてしまったの
🎈❄あなたを 探してる
隠した 瞳の奥で
誰にも 見えぬように
🎈行き場もなくて 彷徨いながら
🎈❄あなたと 見る世界は
いつでも 綺麗だった
❄空には 一つだけ
🎈❄淡く光る 小さな星が
残ってる
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♑︎Capricorn #星巫女_灯莉
🎈灯莉(cv.瑠莉)
https://nana-music.com/users/6276530
♒︎Aquarius #星巫女_雪涙
❄️雪涙(cv.海咲)
https://nana-music.com/users/579307
₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴MUGi様
https://nana-music.com/sounds/046dc9f3
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
#プロローグ #中学聖日記 #Uru #MUGi
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