ギラギラ/アコギロック
Ado
ギラギラ/アコギロック
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「…つかれた」
最近の私はそれしかつぶやかない。
今日もまた、仕事から帰ってくるなり気絶するように眠った。
床の上、いつもなら1時間もすれば寒さで目覚めてぼちぼち栄養摂取やら風呂にはいるはずなのだが、今日は違った。
疲れすぎて家に帰ったと思ったら違う場所でした……とか、マヌケな事をしでかしたとでも言うのだろうか。
目を覚ましたそこは建物の中ですらなかった。
ふと見上げれば何にも遮られることなくそこにある月。
頬を撫でる柔らかい風。
そうか、
これは夢なんだ。
私が作り出した静かで都合の良い夢……
「だったらよかったのにな……」
結局私はどこへ行っても流され擦り減り搾取されるだけの人間なのだと半ば自暴自棄な気持ちになりながら、響いた声に従うしかないのだ。
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あーもう本当になんて素晴らしき世界
んで今日もまた己の醜悪さに惑う
だのに人を好きって思う気持ちだけは
一丁前にあるから悶えてるんでしょう
使い道のないくちづけ憐れみを恣に
スパンコールの瘡蓋で身を守る
愛されないくらいなんだ
ギラギラ 輝いて私は夜を呑み
Rap Tap Tap Tap
今に見てろこのluv
目に染みるは1mgの花火
Drag on Drag on
なんてファニーこの世はビザール
ギラ ギラギラ ギラ
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対戦相手の子は輝く若き少女だった。
ちょっと緊張している様子だが自信に満ちた姿がとても眩しく見えた。
同じ曲を歌っているのに、世界を蔑んだように歌う私とその身の強さを精一杯出して立ち向かおうと歌う彼女。
私の負けだった。
あーあ。
彼女が同じ職場にいてくれたら……あのクソ課長にも立ち向かってくれたんだろうか。
やたらと口を出してくるあいつを負かせられたんだろうか。
ぼんやりと月を見上げながら未だ醒めない夢の中、目を閉じた。
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