「NHKはじめてのクレーム対応講座(上級編)」(さり)
秘密結社 路地裏珈琲
「NHKはじめてのクレーム対応講座(上級編)」(さり)
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「なん......だと」
「だから再三申し上げてるんですけど、あんまり粗相してるとうちの“怖い人“出てきて、まあ指つめろとは言われない...と思うけど、それなりの落とし前つけてもらうことになるから、お静かにお願いします」
金髪褐色肌のやたら体を鋭く絞った女性、さりが呆れた風に盛大なため息をこぼした。
さっきから押し問答だ。お抹茶がぬるいとかなんとか文句をつけて絡んできた輩どもに、どうやったらゲンコツ以外で話が通じるか思案するものの、らちが開かない。
うるせえと殴って外に放り出すのが早いのは早いが、紅葉に“静かにお願いね”と頼まれた手前、そこは厳守したい。そもそも、体が本能的に入りどころの悪い箇所を狙ってしまうのか、加減して殴ったつもりでも骨が折れることが多々ある。なので、あまり軽率にグーに訴えたくはない。
なんて面倒なんだ、これが噂に聞くクレーム対応。
「そんなもん信じられるか!!大体お前さっきから、ふざけ散らかした大嘘ついてんじゃねえよ!!なんなんだよ舐めやがって!!」
「ふざけ......いや、だってほんとだもん、店の奥に24金のちっちゃい茶の間あるし!今日そこで今うちの総店長が外務省の偉い人相手にお茶立ててるんだってば!」
「じゃあ副店長出せよ、そっちは居るんだろうがよ!」
「だあからァ、副店長は今音楽関係の偉い人と大事な話しててぇ...」
「メジャーデビューしますって、どっから出るっつーんだ、おォ!?」
「アイドルに強い、某Aから始まってXで終わるでっかいレーベル」
「嘘つけぇえ!!」
男が三度目の大声を張り上げた瞬間、さりが唐突にひょいとその場にしゃがみ込み、何かがものすごい速さで風を切る。カウンターの奥から的確に投擲された皿が、だだっ広いデコを捉えて“ごっ”と鈍い音を立てた。
男は何が起こったかも分からないまま、パッカリ口を開け、白目を向いて床へと沈む。
「だから言ったじゃん、もー.....お嬢激おこだよ」
難なく皿と男を片手ずつに受け止めて、さりはもう一度、残った輩にこう伝えた。
「......あんまり騒ぐと、お茶飲みに来たのが人生最後の思い出になる可能性があるので、お静かにお願いします」
大の男が背を丸め、今度はちゃんと“はい”が聞こえた。
ーーーーー.......
🐶「また、か弱い輩を傷つけてしまった......」
🍎「ちょいと、おせみ。お犬様なんで凹んでんの?」
🍒「真摯かつ丁寧に、ありのままを伝えてクレーム対応したはずなのに、話を聞いてもらえなかった......ですと」
🌾「お可哀想に...つっぱりという輩は、頑固ですからね...」
🌸「えっ、何、スモウレスラーきてたの!?」
🌙「そのー......不良のことだよ、ケネちゃん」
🐝「もう、今後そのようなことがないようにと!」
🦋「私たちがお外でしっかりお灸を据えておいたので!」
🍇「そう......あ、正座させたまま忘れて帰ってきちゃった」
店内ではお静かによろしくお願いいたします🍁
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