まだまだの私達
ギガP
まだまだの私達
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メアリの家。中には二つ団子に蝶の髪飾り、嘉嘉スタイルの頭。横にはカードが挟まった小さなシルクハット、亜麻色の髪からぴょこっと飛び出た鹿の耳が生えた頭。
「手紙を送っておいたのになんですの?ケーキのひとつも無いなんてぇ!?」
「メアリ特製、杏仁桃饅の何が不満カ?相変わらずワガママさんヨー!!」
ふふん!と見下す鹿の獣人。しかし、彼女の手にある饅頭は既に2個目だ。小さな口を大きく開けてパクリとかぶりついた。
「メアリったら相変わらずなのです。翔華はちゃんとお洒落なケーキを用意しましたわ」
パカッと開くと小さなカップケーキ。メアリは目を輝かせて取り出すと、突如火をつけた。
「な!なにをするんですの!!?」
「謝!ケーキの形の魔除蝋燭!最近キリエでも流行ってきたやつヨー。カワイイ!」
「え!?あ!…ふふ!そうなのですわ!田舎者のメアリが欲しいと思ったんですの!!」
掌にチラチラと燃えるケーキ蝋燭を乗せながら、白い目で獣人を見つめるメアリ…。
翔華、鹿の獣人だ。歳も背丈も性別も、何もかもメアリと一緒。しかし、彼女は嘉嘉では特別な存在であった。メアリの師匠の直系の孫である。誰もが嘉嘉の伝統芸能の頭取を継ぐと期待していたが、嘉嘉を訪れたマジシャンの妙技に一目惚れし、そのままついて行ってしまったのだ。ちょうどメアリが来て1年後の話である。
「ホント大変だたんだカラ!師匠一人で周りを説得してたネ!感謝するヨ!」
「ふ、ふん!メアリも同じなんですわ!キリエを出ていった時は皆止めたに違いありませんの!」
翔華が出て行くまでの間、2人はよくぶつかっていた。今まで居なかった他所の国の門下生…翔華は事ある毎にちょっかいをかけていた。顔を合わせれば喧嘩ばかりの2人を、兄弟子や師匠は微笑ましく眺めていた。
「いつもメアリの失敗を笑ってくるネ!ホント意地悪!!メアリまだあの時勉強し始め、仕方ないヨ。翔華は姉弟子ネ!上手いの当たり前」
「ほーんとに大玉から転げ落ちたメアリの姿、まだ笑えますわ!…でも、翔華が笑う度にメアリは上達していきましたわ…翔華は分からなかったんですの。でも、今は分かりますわ…好きだから」
そう言うと、ケーキの蝋燭をシルクハットに入れ、1、2、3と唱えて中身を取り出しメアリに投げつけた。メアリは舞用の剣を振り回すと、兎型に切られた林檎がボトボトと落ちた。
「大道芸が大好きだから…だから全てが楽しくて…生き方も、言葉も染まってしまうほど」
「…分かるネ。師匠、よく言ってたヨ。2人はよく似てるて。メアリ、実は翔華って名前羨ましかたよ。嘉嘉の名前、綺麗な名前ネ」
「し、翔華だって!!…羨ましかったんですの…メアリって名前…凄く可愛くて…」
…嬉しくて、幸せで…凄く気まずい。まずい、今まで相手を褒めるなんてした事ない。喧嘩ばかりだったのに…2人とも笑ってしまう程顔が真っ赤で、まともに目が合わせられない。
「ふ、ふん!!とはいえまだまだヘタですわね!笑ってしまいますわ!ご覧なさい!」
真っ赤な顔を扇子で扇ぎつつ、メアリが切り落とした林檎を拾い上げる。全て兎に切られているのに、これだけは皮すら取れていなかった。
「哎呀!!自信ある剣の技だたのに!師匠に怒られるヨーー!秘密ネ、翔華姉弟子♡」
「全く、翔華と違ってまだまだですの!翔華は一流マジシャンでしてよ!見てなさい!1、2、3」
ポイと投げ捨てた林檎はなんと本物の兎に…なるはずであった。跳ぶところまでは同じなのだが…
「哎呀ー!!蛙!蛙ヨ!早く追い出すネ!!」
「ぎゃー!来ないでぇえ!翔華触れませんの!」
2人で抱きつきながら叫びまくる。箒や扇子を振り回してなんとか退散させた。
「翔華も全然まだまだヨー!」
「うるさい!メアリだって!」
…っぷ!ふふふ!!笑い声が盛れる。2人は腹を抱えて笑いあった。
「今度は翔華がショーをする街にも来なさいよね」
「どーしてもって言うなら…行ってらやない事もないネ」
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久しぶりに大好きなあの子と喧嘩をしました。
コメント
2件
- カミツキ街キリエの商店街
- 翔華初めまして!翔華です〜!急なコメントすみません💦 あのお話作っていただいてありがとうございます!! めちゃめちゃ嬉しかったです! ワガママでツンデレな鹿の獣人…最高でした!いや、かわいい!可愛かったです!こんなにもかわいく翔華のこと書いてくれて嬉しいのです✨✨✨ それにお話もとっても面白くて2人とも可愛らしくて楽しかったです!(語彙力ない) ありがとうございました(*´꒳`*)゚*.・♡