#エスタシオン事務所
「大切な友達にさ、迷惑掛けてて。…でも優しいから、言わないようにしてるのも分かってるんだ。あはは、…そんな状態で、能天気に居られるわけないよ、馬鹿だなあ、壱成。」
■皇 夢眞:珠洲
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──昔から、良く寝る方だという自覚はあった。意識がふよふよと柔らかくなることが一日の大半だったけれど、それでも起きようと思えば起きられる時もあった。ただよく眠たくなるタイプなんだろうなあと、そんなことを良く考えていたし、壱成も実際そう言っていたから、そうなのだろうと思っていた。
けれど、いつだっただろうか。確かとあるライブのリハーサル中か。ふとパフォーマンス中に意識が途切れた。まるで電気を消すように、ふつりと「落ちた」。気付いたら病院のベッドの上で、壱成は起きた俺を心底安心した顔で見たんだ。何があったのかと聞けば、一時的な体調不良で倒れたのだと言われた。ちゃんと摂生に努めろと怒られて、色んなものを食べさせられて。…思えば、あの日からだろうか。壱成の様子がなんだかおかしくなって、俺の身体もおかしいなと感じるようになったのは。
日常生活を過ごしている間、ふと意識が途切れることが増えた。ぱたりと寝入って、起きた時には必ず傍らに壱成がいるようになった。それから、どこに行っても壱成が一緒にくっついてくるようになった。…あと、壱成が一人の仕事も多くなった。マネージャーに聞いても、俺の仕事が減ったんじゃなくて壱成の仕事が増えたんだって曖昧に笑っていた。──それで気付いたんだ。ああ多分、壱成とマネージャーは「俺になんか隠してる」って。
隠さなきゃいけないようなことがあるのは、きっと俺の体調も関係してるのかもしれない。もし、俺がいるせいで壱成は仕事を増やしたりしているんだとしたら。…俺は、壱成の傍にいるには不要な存在になっているんだとしたら。カプリコーンに俺がいるせいで、何か迷惑をかけているなら。
俺は、この場所から消えなきゃいけないのかもしれない。
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