特殊部隊:零
作者:不明
特殊部隊:零
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ーー第三話ーー
今日の朝は目覚めが悪かった。
思い出したくない過去を思い出してしまったから。
【久遠】には親友と呼べる人間がいた。家も近所で何をするにもずっと一緒の友達。
辛い時には励まし合い、笑いたい時は互いにお腹が痛くなるまで笑う。久遠にとってかけがえのない人間だった。
そんな日々が突然終わるとも知らずに。
15歳になって1ヶ月経ったある日のことだった。突然家のインターホンが鳴った。
久遠の家は夕方になると両親は仲良く買い物に出かける。だからこの日は久遠一人で留守番をしていた。
久遠は勉強をしていたがペンを机に置き誰が来たのか分からないまま玄関を開けた。
立っていたのは血塗れの親友だった。
考えが追いつかなかった。怪我でもしたのかと思ったその時には久遠は床に叩きつけられていた。鈍い音と共に久遠の口から鮮血が流れ出た。
親友は久遠を見て不気味にニヤリと笑った。
『殺される』
一瞬で理解出来た。
久遠の目から涙が溢れる。
ーーどうして、こうなってしまったんだ。
ーーもうお前が戻れないのなら、
ーーー俺はお前を、、 !
その時のことはあまり覚えていなかった。脳が思い出したくないと拒否しているのかもしれない。
気づいた時には親友が血を流し床に倒れていた。呆然と立ち尽くす久遠に最初に声をかけたのは買い物から帰ってきた両親だった。両親はすぐに警察、地球政府に通報。
結果的に親友の家族は親友が惨殺。そして欲望を理性で抑えつけられなかった親友は久遠をも殺害しようと家へ襲撃。
久遠のしたことは正当防衛であったと認められた。
地球政府は久遠のしたことを責めるどころかパラドクスになりかけた人間を止めたということで表彰されることとなった。
表彰された久遠には事前に事件を解決出来なかった警察、地球政府から某大学の次期理事長の座を渡された。これは警察と地球政府からの謝罪だった。
久遠がぎゅっと目を瞑る。カーテンの隙間から溢れた朝日が目に沁みた。
しばらくして目をゆっくりと開けた久遠は白いメガネを静かにつけ、右側の前髪をピンで留め、青いTシャツに白の薄いパーカーを着て玄関の前に立った。
事件後、久遠の瞳は右がグレー、左が赤のオッドアイになってしまった。何故こうなったかは誰もわからなかった。
久遠自身でさえも。
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