ベーカリー のん
きっかレン
ベーカリー のん
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まだまだ寒さが厳しい朝。そんな時間に負けずに起き、活動する者たちを優しく包む幸せの香り。温かく、嗅ぐものの空腹をくすぐる。
「…あはぁ…急いで起きたから…この香りは堪らないですぅ…」
「あはは、ダメだよーニフ?朝はちゃんと食べないとねー。体もたないよ?」
穏やかな声に優しいお叱り。しかし、彼女の体は目まぐるしく動き回っている。朝は一日で一番忙しい時間だ。
「う…すいません。のんさんの方がもっと早く起き出してお仕事してるんですものね!キリエの朝はのんさんの支えがあってこそですよ」
「大袈裟だよ。へへ、でも嬉しいなぁ」
照れながらも、何百度という高温の窯から今日の活力の源を取り出す。
のん。人間のパン職人。以前は飲食店でアルバイトをしていたのだが、好きが高じていつしか自分で技を習得し店を構えるまでになった。まだまだ小さい店である為、パンの製造から接客まで彼女一人でこなしている。しかし、店のパンは種類が豊富。惣菜パンから菓子パン、ドーナッツにサンドイッチ…小さな店に入り込むと目移りしてなかなか出ていく事が出来ないと評判のお店である。
「はい、これ。まだ試作品なんだけどー…よかったらどーぞ。味の感想を聞かせてね」
焼き立てのパンを差し出された。ニフはたまらず熱さに耐えながらパンをちぎった。生地はほんのりと緑色で、ルルイヤという豆のペーストとその花の塩漬けが入った餡が詰まっている。
「!!甘いルルイヤは初めてです!お花の塩漬けがアクセントになって、餡の甘みがより一層感じられます。でも、パンの香りのおかげで甘過ぎにも感じなくて…これなんですか?」
「お茶パンだよー。キリエは世界樹のお茶名物でしょ。春の新作で出そうと思ってるんだぁ」
もう既に違うパンの為の生地を練りながら、のんは嬉しそうに説明した。
「こんなに色々アイディアが出るなんて…のんさんは本当にパンが好きなんですね!」
「うーん…間違ってないけど…ちょっと違うかも」
え?とニフは意外な反応に首を傾げた。
「色々なお店で働いて、色々美味しい物を食べてたら…どれが一番好きか決められなくてー。甘いお菓子も大好きだし、ご飯も好き。お肉に魚でしょーお野菜も…作るのも食べるのも食べてもらうのも…あー決められない!って悩んだんだけどぉ…パン屋さんなら決めなくてもぜーんぶ出来るって気付いたんだよねー」
動物型のキャラパンのトッピングをしながら満面の笑みで答えるのん。…成程、これだけのメニュー数はその為か。
「ご馳走様です。忙しい中恐縮ですが、住民帳にご記入お願いします」
のんは手を洗うと、差し出された羊皮紙と羽根ペンを受け取り、ササッと書きあげた。
「のんさん。人間、女性…職業はパン屋さん…えーっと…はい、はい、うん!記入漏れはありません。ありがとうございます!のんさんの憑神はケレス。強化と地の魔法が使えます」
「理事会も大変だねー無理しないでよ??」
相変わらずゆったりした口調と目にも止まらぬ高速のパン捌き。好きなものを全て選ばずに愛していく彼女の心意気がなせる技なのかな…ニフは心の中で拍手を送った。
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のん 人間 女性
パン職人
ケレスのカミツキ
データを保管致しました。ようこそ!キリエの商店街へ…
コメント
2件
- カミツキ街キリエの商店街
- おとの。わぁ…!!素敵な物語の始まりをありがとうございます!!\( * ´ ` * )/♡ パン職人さん…!素敵✨✨パン凄く好きなのでなおさら嬉しいです…🍞🍞