キリエの1年生
れるりり
キリエの1年生
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「よし!この指令を全うしなければ…!」
初めて軍に所属された日の様な心のざわつき、心地よい緊張を感じてみりんの目は輝いた。
「住宅地区はニフが配って私は商店街全般だな」
みりんは歩みを進めた。
1番近いイトのランプ屋に着いた。もう昼なのに店は閉まっている。
「すいませーん!!理事会からの連絡です!いますかー?!」
どんどん!反応がない…休みなのか?何度か声を掛け、ノックし続けると、小さく扉が開き、にゅっと腕が伸びたかと思うと、看板を取り付けて早々に腕を引っ込め扉が閉じた。
「当店は19時から外回りの後、21時より開始しております。それまで、店主は睡眠をとっておりますので、御用の際はポストに投函お願いします」
「夜間営業の店だったのか!失敬!」
さとらの呪詛屋も閉まっていた。しかし、扉は開いていて、中にはアカツキも居た。2人で難しい顔をしながら何か作っている。
「失礼しま…ふおぉ!!」
「おお!来客か、有難い!是非試作の茶を飲んで感想を聞かせて欲しい」
あまりの匂いに鼻を塞ぐ。妙な色の液体をもって、嬉しそうにアカツキが迎える。奥では死んだ顔のさとらが座っている。
「り、り、理事会からの連絡をお送りに上がりました!!失礼致します!!」
次にウルの居る占いの館へ辿り着いた。内装の依頼なのか、不思議な模様の布をいっぱい抱えたスイもそこにいた。
「今日は賑やかな日って感じてたんだ。軍人さんがここに来るのは初めてじゃないかなー」
ウルが相変わらず穏やかな笑顔で迎えた。
「ちょっと!ウルさん!腕を下ろさないでくださいよ!布がズレちゃう!!」
飾りの布がバサッとのしかかってしまい、オバケのようになったスイが叫ぶ。ごめんごめんと2人で布を取り付けた。
「あ!引っ越してきた方ですか?初めまして!俺はスイです!…背が高くて素敵…どんな服が似合うかな!??」
みりんのスタイルをまじまじとみて、目を輝かせた。オシャレをする時は是非俺に任せて!と無邪気にスイは微笑みかけた。
「…おや?軍人さん…頭に変なモヤがあるねぇ…大丈夫、数時間後にはつまらないものだって切り捨てられるから」
かなりの店を訪れ外は真っ赤に染まっていた。酒場が開く時間だと、アキネの元へ向かった。
「あぁ!あなたが噂の新人さんでしょ!ようこそキリエへ!…ついに私にも後輩が出来たよ皆!」
客と一緒に笑いながらアキネが出迎えた。
「…わぁあ!ドラコン族の方ですか!鱗が良い!角もかっこいい!!いいなぁァァ!!」
宅配の仕事なのか、重そうな酒樽を抱えたナギが目を爛々とさせて声をかけてきた。
「ナギありがとう!お疲れ様。2人とも飲んできなよ!今日は奢るから!」
確かにこの2人で頼まれた枚数が終わる。せっかくだから、お言葉に甘えよう。
「外で待っているのはギルドのワイバーンか?よく躾られているな」
「え!分かります!?えへへへーあの子は顔は怖いけど一番素直で賢いんですよぉ」
褒められたのが嬉しいのかデレデレしながらナギが語った。
「専属のワイバーンも争いに怯えず働いてくれた」
「…専属…!??」
まずい!うっかり軍師時代の話をしてしまった。個人に飛竜が当てられるなど、相当な地位がない限りありえない話なのだ。
「どどど、どんな子ですか!?軍のワイバーンってやっぱり躾方違うのかな!?パレードに出てる子なんてみんな美人さんばっかりですよね!羽のフォルムとか…クリクリの黒い目とかァ…」
唖然とした。今まで皆自分の地位ばかり目を向けていたが、この子は飛竜しか眼中にない。
気が緩み、うっかり飲みすぎたらしい。戦の話し中に盛り上がって魔法を使い、店の端に氷柱を立ててしまいアキネに大目玉をくらった。
「ほんっっっと!勘弁してよね!外でやって、外で!!!」
そう言いながら、アキネは氷を砕いてグラスに沢山詰めていた。
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連絡の配布、お疲れ様でした。
「理事会の冬の連絡」
「食事券」
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