§幻想舞踏会§ 第二十五話~それぞれの国の過去~
§幻想舞踏会§
§幻想舞踏会§ 第二十五話~それぞれの国の過去~
- 93
- 9
- 0
§幻想舞踏会§
第二十五話~それぞれの国の過去~
レイカは自室で黒の紐にて束ねられた書簡を紐解く。
「…皇妃様は相変わらず仕事がお早い…。」
そして漆黒のインクで綺麗に並べられた文字を、淡々と目で追っていく。
そして最後の文章に差しかかる時、レイカの手がピクリと動き、そしてその指には次第に力が込められていった。
手紙を読むその表情は驚愕へと変わり、頬を冷や汗がつたう。
「これは…まさか…!」
~~~
いつもと変わらず様々な隊士で賑わう中央広場。
他愛のない雑談をする隊士、謎の口論から取っ組み合いになる男性隊士同士とそれを見物する隊士、
後ろから襲いかかろうとして失敗し、叩きのめされる隊士…
それはこの島の日常であり、平和であるという光景でもあった。
「埋まれええええ!!」
破壊音とともに怒号が響き渡る。
その音のする場所では、黄晶麒麟隊の雪季が
白光天照隊のまりーに頭を掴まれ、そのまま首から下を地面に埋め込まれていた。
「ひどい!何するの!!」
雪季がふくれ顔で反論する。
「ひどいじゃない!まったく…今何しようとしたの。」
殺気を纏いながら問いかけるまりーの後ろには、赤炎鳳凰隊のていなんが怯えていた。
「え?まりーちゃんの後ろにいる人が暇だって言うから押し倒して…」
「それがおかしいでしょうが!」
「ああん…いい罵声…♡」
「僕可愛い子猫ちゃんは好きだけど、変態はムリ…。」
「ていなんちゃん!大丈夫よ!クセになるから!!一度経験しちゃえば…」
「黙りなさい」
まりーは雪季の頭を掴み、さらに深く埋め込んだ。
「…何してるのです?」
後ろから問いかける声がする。
振り返ると、そこには光姫が埋まった頭を不思議そうに眺めながら立っていた。
「姫様、てぃー様を襲った変態の埋葬をしてました☆」
まりーが笑顔で答える。
「まあいいか…。
お父様から白ノ国の歴史書の調査結果が来たので、一応情報共有しとこうと思ってきましたの。
ていなんさんはここにいるとして、他の隊長は広場にいます?」
雪季の埋葬音合わせてなんだなんだと集まる隊士達。
そんな人混みに気づいたのか別方向から朱とそうまが駆け寄ってきた。
「姫様~♪僕の青ノ国も調査が終わってて、報告しようとおもってました!」
「あ、私もです!王様に調べて頂きました。」
「あら、どこも調査が早いですね。
そうしたら……
あ、眠井さんと夜蝶さん。各部隊へ情報を配れるよう記録と複製をお願いできます?」
光姫はノートを片手に持つ眠井とカメラを片手にボブを追いかける夜蝶に声をかける。
「はい、姫様の頼みとあれば。」
「姫様!了解です!」
そうまがあたりを見回す。
「レイカさんは?」
「ん、そういえば見かけませんね…」
「とりあえず黒ノ国は後にして、先に僕達の情報だけでも共有しよう。」
「そうですね。ではまず私の白ノ国から…」
こうして広場で報告会が始まった。
~~~
○月×日。
広場で白ノ国、赤ノ国、青ノ国、黄ノ国
計四国の情報が共有されました。
ここに記録を残します。
まず始めに、四国すべての国に共通して
七色ノ宝石と天空の島々に関するような文献は全く無かったとのことです。
そして、それとは別に
同じ伝承が伝えられていました。
『 天より授かりし加護
その手中に収めし者
国の象徴とならん。 』
どうやら加護は昔、目に見える何かしらの形で存在していたような記録があるようです。
次からは各国ごとの調査情報を記載します。
【白ノ国】
隷属魔法は初代光姫が禁術にしたという記述しかなかったそうです。
ただ数少ない文献には、隷属魔法には「代償」があるらしく、その代償があまりに重い為に禁術へしてされ、その魔法は消え去ったのだそう。
余談だが、文献や王族家系図及び資料を見るに、二代目光姫以降代々光姫の冠名を継ぐ女性は容姿が幼いらしいです。
つまりは初代は普通だったのでしょうか?
そこは不明とのことです。
【赤ノ国】
赤ノ国では古来より攻撃魔法が歴史と並行して発展していたそうです。
そのうち、赤ノ国特有の環境(火山地帯や地下に眠るマグマ)の影響で魔法は炎熱系特化になっていったとの記述があったそうです。
ていなん様曰く、どうやら古い書物に気になる記載が所々あったとのこと。
『神官の守護騎士』という単語が古い書物にあったそうです。詳細は不明とのことです。
【青ノ国】
青ノ国は黄ノ国の次に発展したのが遅かったようです。
四国共通の伝承の言葉の記載がある年号以降に魔法は発展していったようです。
様々な学術の歴史書や学問書は古来からあっても、魔法に関しては少なかったそうです。
ひとつ気になったのが、そうま先輩がどうやら理事長にボブ先輩の植物記録とハンペン君の地質記録を渡していたらしく、そこからあることがわかりました。
我々がいる島の内、少なくとも中央の広場は『昔の青ノ国』の環境と非常に酷似しているようです。
ボブ先輩が目を輝かせていました。ああいうところが視野が狭いと言われるのだと思います。
【黄ノ国】
黄ノ国の歴史を調べると、国の特徴である鉱脈が見つかったのは国の歴史が始まってしばらくたってからだったようです。
それまでは迅速かつ正確に強固な建物を作るその技術を用い、他国に建築の部門で貢献することで生計を立てていたようです。
その後、鉱脈が見つかり、それを奪わんとする別国が攻め入るように。
それに抗うべく武器を作り自国をその腕で守ったことにより現在の黄ノ国の形となったようです。
黒ノ国の情報は後日になりそうです。
~~~
「四国に共通して同じ言葉が…」
まりーが口にだす。
他の隊士も頭を傾げながら、考える。
無理もない、< 誰も知らなかった >ことが不思議なのである。
国で生まれたからには教育機関で少なくとも自国の歴史は授業として習う。
しかしそんな伝承は誰も学んでいないのだ。
「これは歴史に何か紐解くヒントがありそうですね…」
「とりあえず、まだ調査は必要かな?」
「そうですね、また何か情報があればお互いに報告しましょう。」
必要な情報を聞き終えた隊士達はバラバラと去っていく。
そんな中、夜蝶は地面に埋まった頭をツンツンとつついていた。
「うーん…これはかんきゃんに引っこ抜いてもらうしかないかなぁ…。」
「夜蝶ちゃん、それに触っちゃダメよ。」
「ゆっきーさんまた何かしたのか…?
俺の植物で地中から押し上げるぞ?」
夜蝶にまりーとボブが話しかける。
「さっきまた人を襲ったから埋めたの。」
まりーが吐き捨てるように言う。
「あ。じゃあそのままで。」
「この薄情者!ゆっきーに襲われてしまえ!」
「お前人の話聞いてたか!?襲われるんだぞこの捏造記者め!」
「捏造じゃないよーだバーカ」
「おまえええええ~…。」
ボブと夜蝶がいつもの調子で言い争いを始める。
「まあまあ二人と…も…あれ?」
まりーが仲裁に入ろうとして言葉を止める。
その様子に気が付いたボブと夜蝶もまりーの視線を追った。
「あれ?レイカさんと…姫様?」
夜蝶が素早くカメラを片手にどこかへと消え去る。
レイカと光姫は簡単にやりとりを済ますと早々に別れた。
光姫がまりーとボブの視線に気が付いて、笑顔で手を振る。
まりーはいつもの調子で声をかける。
「姫様~!なんかお話してたみたいですけど黒ノ国の情報ですかー???」
「ああ、いえ違いますよ~♪
お気になさらず。あと、ボブさんちょっとまりーさんに近くってよ。」
光の球が高速でボブとまりーの間を走る。
ボブは真っ青な顔ですぐさままりーからピッタリ1m離れた。
光姫は満足したのかその場を去って行く。
「…なんか姫様様子おかしくない?」
「俺にはいつもどおりでしたけど…服の袖が危うく消し飛ぶとことでした…。」
「なんかレイカさんと約束してたよ。」
「「!?」」
2人の背後に夜蝶がいつの間にかいた。
「夜蝶ちゃんいつのまに…ていうかどこに行ってたの!?」
「姫様との会話、黒ノ国の情報かと思って飛んでったんだけど、違かったの。
なんか黒ノ調査結果を伝えるために
『1人で今夜日付が変わる頃に広場に来てくれ』
ってレイカさんが言ってた。」
「さすが捏造でも一応は記者。一応それらしいことはするんdグホァ」
夜蝶のパンチがボブの下腹部に綺麗に入った。
まりーは難しい顔をする。
「おかしくない…?
なんで二人っきりで話す必要があるんだろう…。
それにさっき姫様、黒ノ国の情報か聞いたのに…否定したし…。」
「ふむ…。なら3人で今夜尾行しますか?」
ボブが夜蝶の頭を押さえつけながら提案する。
「でも姫様相手だとバレちゃうよ?」
「いえ問題ないです。俺に秘策があります。」
ボブはポケットからいつもとは違う種袋を取り出し、ニヤリと笑って見せる。
保菌者2名と記者1名による尾行計画が、埋められた頭の上で繰り広げられた。
…つづく。
コメント
まだコメントがありません