§幻想舞踏会§ 第二十四話~眠井の観察日記~
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第二十四話~眠井の観察日記~
皆さん、こんにちは。
私は先日新しく青風八咫烏隊の隊士として、この島にやってきました!
今日も先輩の替わりにレポートをとって行きたいと思います。
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○月×日。
さき先輩とハンペン君と拠点へ帰ってきた所、
今日もボブ先輩が入り口で黒コゲになっていました。
また何かやらかしたようです。
そうま先輩も
ボブ先輩は天然をこじらせた人種らしくいい加減学習してほしい
と言ってました。
その後、夢羽ちゃんになにやら氷漬けされてました。
またきっとボブ先輩が悪いんだと思います。
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○月△日。
衝撃の事実が判明しました。
夢羽ちゃんの尊敬する方が、黒ノ国のレイカさんではなく
白ノ国の光姫様でした。
どうやら皆して誤解していたみたいです。
ボブ先輩が夢羽ちゃんに対して
「でもお前から聞いてたイメージは、この島に該当するのはレイカさんだけだぞ?」
と言い、夢羽ちゃんがまた涙目になってボブ先輩に体当たりしました。
夢羽ちゃんはどうやら感情に左右されて魔法が発動するようで、またボブ先輩が氷漬けになりかけました。
ボブ先輩がまた悪いと思います。
~~~
○月□日。
広場で様々な方を観察しました。
新顔という事もあり、国に関係なく皆さんがご挨拶してくれました。
どうやら広場では戦いや国同士のしがらみなんて関係ないようです。
しかし、かなり変わった方もいるようです。
真昼間から広場の中央で他の隊士を押し倒しにかかる女性を発見しました。
観察した結果、どうやら肉体強化の中でも防御に特化している魔法の持ち主のようで、
皆からは「ヘンタイ」と呼称されているようです。
その後、白光天照隊のまりーさんが地面に埋めてました。
どうやら沈静化の手段のひとつの様です。
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○月☆日。
今日もボブ先輩が襲われています。
白光天照隊の隊長である光姫様は隊士達を溺愛していることで有名ですが、
どうやらまたボブ先輩が隊士の方に手を出したようです。
きっとボブ先輩が悪いんだと思います。
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○月○日。
ボブ先輩と赤炎鳳凰隊のジェイドさんが喧嘩してました。
「非リア充」について口論になったようです。
ボブ先輩からジェイドさんに突っかかって行ったようです。
しかし、ジェイドさんは様々な隊士の方からよく頭を撫でられており、
ボブ先輩もまた様々な女性隊士と仲良くしているのを見ております。
2人とも十分…
これ以上書くと日記を燃やされそうなので、
とりあえずボブ先輩が悪いんだと思います。
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○月…
「おい眠井。」
「!?」
日記を書く手が止まる。
見上げるとそうまとボブが覗き込んでいた。
「眠井ちゃん、ほらもう時間だよ。
拠点の情報もって広場に行こう。」
今日は先日隊長様方の話し合いであがった調べものの内の一つ、
拠点の情報を共有する為にみんなで広場に集まる約束をしていた。
「お前の書記能力は正確かつ速いからな
お前が必要だ。
頼りにしてる。」
ボブが笑顔で眠井の頭を撫でる。
「…先輩。そういうとこだと思います。」
眠井は悟ったような目で冷静に見上げた。
「…?何がだ?」
「あはは、眠井ちゃんはさすが観察してるだけあるね。」
ボブは首をかしげ、そうまは笑いながらボブを小突く。
「ほら行こう。」
「そうだな。おいハンペン!夢羽!さき!行くぞ。」
ボブが3人の名前を呼ぶ。
「え~…先輩、自分は今ゲームで大事な所なんですよ。」
「光姫様がいらっしゃるなら行きます!そうでないのなら拠点の掃除して待ってます!」
「ボブから命令されると反抗したくなるよね。てことで行かなーい!」
そうまが口元を抑えて笑いをこらえる中、ボブはわなわなとしている。
「…人数多い方がいいだろう!」
「情報共有だけなら眠井ちゃんだけで問題ないかと思いますよ先輩。」
「光姫様はいらっしゃるんですか!?」
「というかなんでボブは団体行動したがるの。あたしはお菓子が無きゃ動かないよ。」
「それはきっと…」
眠井が口を開く。
「きっと、危機回避率をあげたいからですね。
ボブ先輩は無自覚にトラブルを生み出す。
いわばトラブルメーカーの資質を持ってますので、
すこしでも単体で行動して集中砲火を受けないよう
事前の予防策として…」
「もういい、もういい!!」
ボブが慌てて眠井の口をふさぐ。
そうまはもう隠すことなく笑っていた。
「…~~~っ!!…もういい!
いくぞ!俺とそうまと眠井だけで十分だ!」
こうして、3人で広場に繰り出すことになった。
数時間後、ボブだけがボロボロになって帰ってきた事は言うまでもない。
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○月▽日。
今日は拠点の情報を全ての部隊と共有してきました。
どうやらこの島について調べる事と、それぞれの国の歴史を調べる事が
そうま先輩の言っていた、
七色ノ宝石の真実へとたどり着く鍵となるらしいです。
忘れないよう記録を残しておきます。
・白ノ拠点。
外壁が光り、屋根は水色の城が拠点となり、最上階は光姫様のお部屋となっている。
中心部分には大きなエントランスがあり、円形の装飾があしらわれている。
異国の建築技術が合わさっている。
・黒ノ拠点。
縦長の洋館がある。夜を連想させる黒いモヤが終始施設を覆っている。
1階の広いスペースは作業場として使用している。
拠点の周囲にはその洋館を囲うように装飾が施された柵が規則正しく並べられている。
自国だけでなく異国の感じもするとのこと。
・赤ノ拠点。
お寺の様な拠点になっていて炎の装飾があしらわれている。
真ん中の部屋が広く、訓練場として使用している。
拠点の周囲にはたいまつが螺旋状に並んでいる。
建築技術には異国の技術も交じっている。
・青ノ拠点。
これは私の拠点。
レンガ造りと、群青色が特徴の建物だ。
1階は皆のスペースとして使用していて、
2階以降はそれぞれの部屋として学年ごと階層を分けている。
拠点の周りには風避けの為か拠点を囲うよう規則正しく木が等間隔に植えてあり、毎日ボブ先輩が鼻歌交じりに水をあげている。
青ノ国の建築法だろうけど、やはりどこか違う国の雰囲気も感じる建物だ。
・黄ノ国。
四角いサイコロのような石造りの建物が拠点らしい。
どうやら一つの大きな空間だった室内を、「ヘンタイ防止策」そして壁とカギ付きの扉を作成。
それぞれの部屋にわけたらしい。
拠点の周囲には石畳が渦のような模様に敷き詰められている。
どうやら黄ノ国の職人さんですら知らない技術が取り入れられているらしい。
情報は以上です。
また何かあれば書き足していきたいと思います。
…それにしても、ここは本当に楽しい。
戦いなのだから、いつか終わりは必ず来る。
だけど楽しいこの時間がずっと続けばいいと思う私は、
どこかおかしいのでしょうか。
いいえ、きっとおかしくなんかない。
今は終わりのことは考えず、今この瞬間を記録していこう。
それが私の楽しみでもあり、使命なのだから。
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走るペンをピタリと止め、窓の外へと眠井は視線を移す。
空の上には、丸く輝く月が島々へと、優しい月明かりを注いでいた。
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