§幻想舞踏会§ 第二十三話~七色ノ宝石の変化~
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§幻想舞踏会§ 第二十三話~七色ノ宝石の変化~
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【第三章】
第二十三話~動き出す物語~
[魔石の意志]が消滅し、以前の平穏が戻ってきた空の島々。
中央の大きな島は中央広場と呼称され、全ての隊士の憩いの場となっている。
その島の北端には特に背の高い木々がひとつの小屋を覆い隠すようにそびえ立っていた。
五つの部隊の隊長だけが入室を許されている、五隊長会合室である。
太陽が高く上り、まっすぐと光を落とす時間、昼食を済ませた5人の隊長はそこに集まっていた。
「それにしてもアレだけボロボロだった島もすっかり元通りですね。」
「私の島の吹き飛んだ屋根もすっかり直り、やっと天井を見ながら寝れます~」
「えw姫様は直るまで屋根無いまま寝てたの?w」
「同じ姫という立場として考えられないね。ま、僕は子猫ちゃんがいればどこでも寝るけど♡」
「貴女も大概よ、赤ノ国のお姫様。」
他愛のない会話が飛び交うなか、朱がふと思い出したように話す。
「…と、そういえばなんでここに集まったんです?」
「え、呼ばれたから来たんだけど…」
「僕もボブで遊んでたら呼び出しがかかったね。」
「私も呼ばれたから納品を済ませてから来たわよ?」
「………あ、呼んだの私だわ。」
「「「「おい光姫(姫様)。」」」」
光姫はケラケラと笑いながら、手に持ったティーカップを傾ける。
そして、波紋を眺めながら他愛のない雑談をするように、話し出した。
「次の試合、告知されましたねぇ。」
「そうね。今回は白と黒、赤と黄だったかしら。」
「そして個人戦のトーナメントも開始されました。
…話戻しますけど、
今回の島々の修復、ずいぶんと時間がかかりまたね?
私の拠点の屋根なんて2日かかりましたよ~」
「そういえば最低限の部分以外は直るのに日を跨いだねー。」
「……光姫は何が言いたいの?」
ていなんが訝しげに光姫を見る。
光姫は微笑みながらティーカップの淵を指でなぞりなぞる。
「…いえ、私はただ
七色ノ宝石さんが、何を考えているのか知りたいなーって」
「あら、どういう事かしら。」
レイカが何か察したように、聞いてくる。
そうまと朱は顔を見合わせ首を傾げ、
ていなんは机に頬杖をついて、成り行きを見ていた。
「私、魔力を感知することに関しては、人より少し優れてますの。」
「少しじゃないだろ…。」
「なので、魔力の痕跡を調べたり、魔力特定することができるんですけどね?」
「少し優れてるで出来るレベルじゃないよ。」
「まあそれで、初めての試合をした後から気が付いていたのですが…」
「ちょっと、あからさまに僕の事無視してるでしょ!」
光姫は袂からまりーの写真(盗撮)を撮り出し、ていなんに渡す。
ていなんは写真を見ると、ニコニコ顔で静かになった。
「まあそれで、気づいたんですけど。
…七色ノ宝石さん、私達の魔力で稼働してるんですよね。」
「え?」
朱が声を上げる、そうまも目を見開き、レイカは眉間にしわを寄せた。
そうまが、真面目な口調で問いかける。
「姫様、もう少し詳しく教えて頂けます?」
「…第一試合以降に七色ノ宝石が映し出した告知や試合中継の投影魔法、
そしてネタキャラ討伐時の汚損破損を元の状態へ戻す状態回帰魔法。
全て私達の魔力がそのまま転用されていました。
どうやら七色ノ宝石は、稼働運用のエネルギーとして私達の放った魔法を吸収しているようです。」
「それは…禁術だわ!」
レイカが声を荒げる。
「そうなんですか?」
朱がレイカに訪ねる。
光姫は静かにティーカップを傾けていた。
「大昔に古文書ごと消え去った隷属魔法よ…。白ノ国のね。」
「白ノ国の…?」
レイカは難しい顔で光姫へと視線を向ける。
それに続くように、そうまと朱も光姫を見る。
「…さすがレイカさん、そんな大昔の、しかも他国の知識まで持ってらっしゃるなんて。」
「知識は蓄えておくに越したことはないわ。
…姫様、七色ノ宝石は白ノ国の産物なの?」
「わかりません。ただ人工物なのは確かです。
そして何か目的を有している。
ただ白ノ国の歴史にこんな大がかりな施設を作ったという記述はどこにもなかったです。
それに、白ノ国の技術だけで作れるものかもわかりません。」
「まあそうだよね。
もし白ノ国の産物だったのなら、
白ノ国も隊士として参加する必要ないんだもん。」
そうまも口を開く。
「姫様は目的って何だかわかってる感じですか?」
「いいえ。わかりません。
ただ、活発に動きだした七色ノ宝石は
<何か目的>を持って積極的に魔力を吸収する機会を増やし始めた。
と、考えるのが妥当でしょう…。」
「ちょっとまってよ。」
ていなんが遮る。
「それって試合しない方がいいんじゃないの?」
「なぜです?」
「だって僕達の魔法を大量に吸収しようとしてるんでしょ?!
何かよからぬ事を企んでるのかもしれないのに!」
「七色ノ宝石の目的が<私達にとって悪である>とはまだ断定できません。
断定もできないうちに魔力供給を止めて、もしこの島の稼働エネルギーが枯渇…
そのまま大陸へ落ちたらどうしますか?」
「うっ…。僕達だけじゃなく、下の国にいる人達も危ない…。」
「それに破壊なんていつでもできます。」
「…光姫こえー…。」
朱がそんなやりとりを見て、ふと疑問が頭をよぎり問いかける。
「…でも、私達が来る前は?
だって姫様が私達の魔力だと感知したのは第一試合以降なのでしょう?
その前はどうやって動いていたんだろうか…。」
「私の感じたところだと…、既に誰かの魔力が蓄積されてましたね。
…6人程感じました。」
「6人?誰?」
「うーん…初めて感じる力だったので、私が出会った事のある人ではないことは確かです。」
光姫は空になったティーカップを机に置く。
「とりあえず用心しておくに越したことはないでしょう。
…そう遠くないうちに、私達は選択を迫られるはずです。
それまでは情報収集に徹しましょう。
まずは各国のどんな資料でもいい、過去に七色ノ宝石に関する情報がないか調べましょう。」
「…青の図書館に何かないか愛次と連絡を取るよ。」
「黄ノ国の文献も調べて頂くよう連絡します。魔法に関してならとあるクラブの会長もいますので。」
「僕の方は…うーん、ジェイド君に頼んでおくかな。」
「私も皇妃様に書簡をしたためるわ。ご協力して頂けると思う。」
「白ノ国ももう一度まりーさんと共に調べます。
あと、皆さんの拠点の情報も今一度調べ直しましょう。」
「…拠点?この島の?」
「ええ。島に元からあったとなれば、何かしらの手掛かりがあるかもしれません。」
「…とりあえずは光姫様に従った方が賢明みたいだね。」
こうして、5人は数日後もう一度集まる約束をして、各島へと戻って行った。
七色ノ宝石は、広場の上でいつもと変わらず太陽の光を浴びていた。
…つづく。
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