幻想月華正月企画サウンド番外編
狐×狐×鹿ver
幻想月華正月企画サウンド番外編
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#和風 #声劇 #幻想月華 #イヤホンヘッドホン推奨
正月企画サウンド番外編投稿です!
今回は本編では敵役である、狐面の人物が主役です。
ちょっと可愛らしい細雪達とのやりとりに注目ですฅ^•ﻌ•^ฅ
この後に投稿するキャラクターソング企画もお楽しみに(♥ω♥*)
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白花京の東の外れにある森の奥。
明けたばかりの空が、朝の冷気とともに新鮮に輝いている。
その場にいるだけで心が洗われるような雪景色。
そんな中、1人の弱々しい声が聞こえてくる。
(狐面)「はあ……新年早々、お腹が減って死にそうだ……」
フラフラと道なき道を歩く狐面を被った人物が歩いていた。
大晦日だからと調子にのって持っていた食べ物を全て食べ尽くしてしまった昨日の自分を恨む。
が、そうしてもただ腹の虫がおさまる気配はなく、歩く度に腹の辺りからギュルルルル…という音だけがむなしく響くだけだ。
(狐面)「どこかに食べ物は……ん? 何やら良い匂いが……」
風にのってふわりと香る出汁の匂い。
こんな森の中でどこから……とあたりを見渡すと、右手側から人の気配がする。
少しくらいおこぼれをもらえまいかと近づくが、そこにいるのが誰なのかわかると狐面の人物は即座に草むらの影に隠れた。
(那由他)「さっさめー! お雑煮ないの!? おっぞうにーっ!!」
(細雪)「もちろんありますよ、どうぞ」
(那由他)「あっ、油揚げはいってる! さっすが細雪! わかってるぅ!」
少し離れた開けた場所に二つの人影がある。
小さな狐耳と尻尾の子供と、鹿のお面を付けた男だった。
(狐面)「細雪!? それに、那由他、だったか……?」
そこにいたのは、那由他と細雪。
狐面は、那由他と細雪の2人と敵対している。
それもそのはずで、細雪と那由他は真白と仲がいいが、狐面は真白を狙っているからだ。
今までも何度か2人と殺りあったことがある。
そのため、思わず隠れてしまったのだ。
ここまで近づいてしまうと離れるに離れられない。
隠れているのがバレていないのが不思議なくらいだ。
(狐面)「……何をしているんだ? こっそりと……」
離れられないのなら仕方ない。
2人が何をしてるのか探ることにする。
決してお雑煮のおこぼれが欲しいわけではない。
……決して!
(狐面)「こそ……こそこそっ……こそっ……チラッ……チラチラッ……」
(那由他)「あ〜♡ やっぱり細雪のご飯最高ー!」
満面の笑みでお雑煮を食べる那由他。油揚げが入っていたのがかなり嬉しかったのか、いつもは隠せているもふもふしたしっぽが隠しきれておらず、草の隙間から銀色の毛が見える。
那由他は一体何者なのか。
性別もどっちだかわからないし、しっぽどころか耳も生えている。
……それにしてもお雑煮美味しそ……いやいや、そんなことより2人について探らねば。
(細雪)「お口に合ってよかったです」
こっちも相変わらず謎だな……料理上手いし……。
1年の半分以上を家の外で過ごす狐面は自炊歴ももう数年だ。
近頃料理が趣味になってきている狐面は細雪にこっそり敵対心を燃やす。
あそこまでうまそうに作れるのは何か秘訣があると見た。
……ふっふっふ……お雑煮の美味さの秘訣を盗んでやる……!
ついでに2人の正体もなァ!!
(那由他)「そういえば、いつも食材ってどうやって手にいれてるの?」
おっ、いきなり確信に触れたな……ナイスだ、那由他。
このままお前の(料理の美味さの)正体を暴いてやるッ!と一人狐面がガッツポーズ。
……空腹からなのか、2人の正体を探るのは二の次になっている。
(細雪)「ああ、野菜類は針仕事の報酬として町のおば様方から、肉は狐を狩りました」
(狐面)「コォォオオオオン!!?? ฅ^•ﻌ•^ฅ」
いきなりの衝撃の事実につい叫んでしまう。
針仕事の報酬!?っていうか狐肉!?私も狩られてしまうのかガクブル……。
狐面にとって狐は、自分の仮面にするくらいには好きな動物だ。
それを……それを狩るだなんて……しかも食べるだなんて…………めちゃくちゃ美味そ……いやいや、そうじゃない違う違う、まったくもってけしからん!!(じゅるり)
などと1人盛り上がる狐面の気持ちは那由他が全て代弁してくれた。
(那由他)「えっ共食い!? これ狐肉……ぼく共食いしてたの!? っていうかその格好のまま町に降りたの!?」
(細雪)「いや、幻術はかけてましたし……裁縫は結構得意ですし……?」
料理どころか裁縫まで得意とかハイスペック過ぎかお前!!と小声でツッコミを入れる狐面。
ちなみに狐面も人並み程度には裁縫ができたりする。
おのれ鹿め……お前とはいつかすべてのジャンルで競う必要がありそうだな!!細雪!!
なんて心の中で言いながら敵意の視線を送る狐面だったが……
(那由他)「……っていうか変な鳴き声きこえなかった?」
くそ、さっきの叫び声でバレたか!? と身構える。
(那由他)「まさか……狐の亡霊!?」
(狐面)「亡霊じゃなぁあああい!!!」
私はまだ死んでないし細雪程度に負けるほど弱くないわ!!とばかりに草むらから思わず立ち上がってしまった。
(細雪・那由)「あ」
(狐面)「あっ……」
──……思いっきり見つかった。
(細雪)「っ、狐面!? 正月から喧嘩売りに来たのか!? 真白ならいないぞ!!」
細雪がすごい剣幕で針を構え、臨戦態勢をとる。
確かに真白を狙う立場としては仕方ない扱いなのだが、今は空腹で正直もうそれすらもどうでもいい。
(狐面)「待て待て待て違う違う!!! いや違くはないが今は違う!!」
(細雪)「違わないのか」
(狐面)「……てへっ☆」
(細雪)「………」
(狐面)「コォォオオオオオン!!!!」
……必死の弁解も虚しく、正月から狐面は鹿の針20連発の餌食となったのであった。
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(細雪)「……で、食べ物がなくてさまよっていた、と」
結局その後、細雪の針や術のかかった糸を避けながら理由を話したところ、しぶしぶ雑煮を分けて貰えた狐面。
敵ながらありがたい……とひたすらにもぐもぐと野生の恵みを味わう。
(狐面)「もぐもぐ……わかってもらえたようでなによりだ」
……狐肉を食べてることにはあえてつっこむまいとしている細雪には気づかずに。
3人中2人の顔が半分見えていないというシュールな絵面に那由他が精一杯のフォローを入れる。
(那由他)「まあ、たまにはみんなでご飯もいいよね!」
お面2人組も顔を見合わせ、ふぅ……と小さく息を吐き、また雑煮を食べ始める。
(細雪)「たまには……な……」
(狐面)「だなぁ……」
次に敵味方関係なく共にこうやって食事ができるのは、一体いつになるのだろうか……。
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