【仇桜】第1話 双子の姉弟
仇桜
【仇桜】第1話 双子の姉弟
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第1話 双子の姉弟
強い吹雪の吹き荒れる常夏の日。この年は四季が狂ったかのような激しい寒波に見舞われた。
田畑には深々と雪が積もり、自給自足の暮らしをしていた農村は時期に来る飢えに怯えながら生活を苦にしていた。
山に囲まれた秘境の地にある和泉村もまた、一面を銀世界に覆われていた。
「しゃ、沙闌っ。手を離しちゃだめだよ…!!」
「沙樂…っ、でも寒くて手の感覚がなくて…力が入らないんだ…よ…」
「だめだよ…!! 私たち、この吹雪のお陰でやっと村から逃げられたから…!頑張ろうよ…ほら! もう一度私の手を強く握って!」
「ラクの手…暖かい。やっとラクとふたりになれたんだ。もう、弱なんて吐かない、から」
「大袈裟なんだから…大丈夫。私たち姉弟で出来ない事なんてきっとない」
「そうだよ。僕たちふたりで、もう誰も巻き込まずに生きていくんだよ」
「これから…私たち、どこへ行くんだろう」
「わからない。でも、きっとーーー」
「ラン?! 手を離しちゃ…いない…ウソ、でしょ…」
「うそ、だよ、ね?…ねぇ、ラン?どこにいるの…。私をひとりにしないで…!!」
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公開日 h.8.12.F
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