🩵Angee Recital🏛

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🩵 瞳に『未来』を── 🏛 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 第13部〖神話〗 Ⅱ. 君は未来に何を見る？ 　エクレシアがキュレーネ女子修道院を去る日がやってきた。その日は早朝から突き刺すような北風が吹いていて、空からは綿のような雪が舞い降りていた。すっかり恒例となったニネヴェとの朝食の時間を過ごしながら、エクレシアは感傷に浸った顔つきで、湯気の立つカフェオレに口をつけた。 「私がここへ来た頃は、電車の車窓から金色の麦畑が見えていた。秋の暮れの頃だった。私たちは、実に三ヶ月以上もの日々を共に暮らしていたんだね。君と研究を続けていた時間があまりに楽しかったものだから、全く実感が湧かなかったよ」 「ふふっ、今日のエクレシアさんは沢山お喋りをしてくれますね。でも、あたしもエクレシアさんと同じ気持ちです。こうして一緒にご飯を食べる時間も、これからは……」 「ニネヴェ？」 　溌剌とした声が急に止んだ。エクレシアが声のトーンを下げて話しかけると、同時にニネヴェの目からぽたぽたと雫が零れ落ちた。 「あたし、あたしすごく、わがままなこと言います。エクレシアさんに、帰ってほしくないです。もっともっとたくさん、歴史のお話や神話を聞きたいし、お勉強も教えてもらいたい。ずっとここにいてください……！」 「……そこまで私を好いていてくれたのか。ありがとう」 　エクレシアはカップをそっとソーサーに戻し、腕を伸ばしてニネヴェの長く綺麗な手を握った。 「私も、君との日々を失うことは筆舌に尽くし難い悲しみだ。叶うことなら此処に留まりたいと思う。けれど、私たちにはそれぞれ為すべきことがある。君は修道女として、私は研究者として、別の方角へ向かって歩み続けなければならない」 　しゃくりあげる感覚に比例して、ニネヴェの指が小刻みに揺れている。その振動を確かに感じながら、エクレシアは「けれど」と言葉を続けた。 「君が望むのならば、私は君に会いに行く。すぐには難しいだろうが、その間は画面を通して、或いは仮想空間の中で語り合おうじゃないか。また何度だって話をしよう。遥か昔に、先人たちの紡いだ物語。天使たちが繋いできた物語。君が知りたいこと全て」 　その時にはもう、ニネヴェの涙の雨は止んでいて、濡れた宝石のようにつるりとした瞳が、驚いたようにまん丸になってエクレシアを捉えていた。 「本当ですか？ あたし、エクレシアさんとたくさんお話したい。ビデオ通話も仮想空間へのアクセスも、何処でだって嬉しいです」 「ふふ、同じ気持ちだね。次に話す時には、私の講義と引き換えに、新しいお菓子のレシピでも教えてくれないか」 　まだ昏い夜明けすぐ。けれど二人の周りだけは、蝋燭に照らされた暖かな空間のように、じわりと光り輝いていた。 　修道院の入口に立ったエクレシアは、ニネヴェに小さな紙切れを渡した。機械に頼りきりのこんな世の中でも、エクレシアはけしてノートとペンを手放さない。大切な人への大切な言葉は、やはり口か指先で伝えるべきだというのが持論だった。 「はい。私の仮想空間ID。夜間は大体ここで研究をしているから、いつでも遊びに来なさい」 「ありがとうございます。お菓子の差し入れをしたいところですけど、仮想空間には精神とデータ以外持っていけませんものねぇ。せめてレシピのデータをまとめてお持ちします！」 「あぁ。嬉しいよ」 「もっともっと科学が進歩して、いつかお菓子や本も持ち運べるようになったらいいですね」 「うん。人が想像出来ることは、いつか必ず実現出来るよ。君の望む未来が本当になる日も、案外近いかもしれないね」 　先のことは誰にも予想出来ないけれど、ニネヴェの輝かしい視線の先には、溢れんばかりの希望を抱えた未来が待っていますようにと願う。エクレシアは、再び目頭が潤み始めたニネヴェの顔を、白く小さな手でそっと包み込んだ。 「必ずまた、この場所に帰ってくるよ。君は私の大切な友であり、立派な生徒なのだから」 「……！ はい、あたしも、またこうして顔を合わせられる時までに、沢山勉強します。だから、絶対にまた会いましょう」 　ニネヴェは大きく手を振って、エクレシアを見送った。お元気で、と真っ直ぐな声が空気を震わせる。あのいたいけな天使のように、さようならとは言わなかった。二人の間には、別れなど存在しないから。エクレシアとニネヴェは、遠くで瞬く光が目の前に届く頃、また隣に並ぶのだ。二人の眼差しは、そんな未来を見ている。 　駅までの道すがら、エクレシアは白い息を吐いて空を仰いだ。灰色の分厚い雲に覆われた頭上から、ひらりひらりと無数の雪が落ちてくる。それは、いつか見た天使の翼によく似た純白の光彩を放っていた。 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 🪽いずれ… 少年は白き翼を得るでしょう… そしてその翼が折れても… 🌬️☸️🪻🪺またあの空へと詠うのでしょう… 🐍🖤🤍🌕愚かなる《人々》(かみ)の願いを… 🏛️嗚呼…少年は黒き剣を取るでしょう… そしてその剣が折れても… またその仔らへと託すのでしょう… 遥かなる《年月》(とき)の祈りを…… 🪬🪩🥂🪼🐋🔔⛓️‍💥🧊 少年は手に『剣』… 背に『翼』… 瞳に『未来』を── ⛓(ベルアイル) ⛪️嗚呼…物語は頁(ページ)を捲るように紡がれ続ける　→ ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── ⛪️エクレシア cv.唄見つきの https://nana-music.com/users/1235847 🪽ニネヴェ cv.灯 https://nana-music.com/users/10533672 ⛓神様 cv.海咲 https://nana-music.com/users/579307 🪬1番目の天使「ミカ」cv.Neumann https://nana-music.com/users/10462832 🪩2番目の天使「リエル」cv.白水 https://nana-music.com/users/10113554 🥂3番目の天使「ファエル」cv.日向ひなの https://nana-music.com/users/2284271 🪼4番目の天使「ウリ」cv.はいねこ https://nana-music.com/users/7300293 🐋5番目の天使「マエル」cv.茶屋道るな https://nana-music.com/users/7521125 🔔6番目の天使「オリ」cv.柊木アカネ* https://nana-music.com/users/7275860 ⛓️‍💥7番目の天使「カーリ」cv.北斗七星 https://nana-music.com/users/5151832 🧊8番目の天使「サフィ」cv.オムライス https://nana-music.com/users/1618481 🌬メギド cv.ラムネ https://nana-music.com/users/7020177 ☸️ホロン cv.中条 瑠乃 https://nana-music.com/users/1791392 🐍ルシファー cv. RAKKO https://nana-music.com/users/5226056 🖤カイン cv.サラダ https://nana-music.com/users/1012660 🤍アベル cv.くらげ∞ https://nana-music.com/users/1819852 🪻リダ cv.なる https://nana-music.com/users/10288599 🪺ナザレ cv.海咲 (URL省略) 🌕エルテヤ cv.オムライス (URL省略) Inst：めがねぐま 様 ─────˙˚ 𓆩 ✞ 𓆪 ˚˙────── 前節 Ⅰ. 決断 (楽曲:⛪️はじまりのまえ、おしまいのあと/ 未来古代楽団) https://nana-music.com/sounds/06d34d1c 次節 epilogue （楽曲:🪬🪩🥂🪼🐋🔔⛓️‍💥🧊醒めない夢の微睡みの/未来古代楽団） https://nana-music.com/sounds/06dad737 #ロマルニア帝国の聖典より #SoundHorizon